大学1年 夏⑧とあるダンサーの初野外フェス
カヌーの夏キャンプが終わった。
今度はダンスの方へ気持ちを切り替える。
ダンス漬けとなっていたある日、練習をしていたら先生から呼び出された。
話を聞くとフェスの後、なんと念願のクラブのヒップホップイベントで踊らせてもらえることになったとのだという。
おお!
なんてことだ!!
ちなみにフェスは大学でダンスをやってるメンバーで踊る。
そして、クラブイベントの方は他の場所で開催されてる上級クラスのメンバーとチームを組んで踊ることになった。
大学のダンスのメンバーでクラブイベントに参加できるのは僕と横T先輩の2人だけ。
それもあって、大学の練習とクラブイベント用の練習とでかなり多忙な日々を送ることになった。
同じ振り付けでもメンバーが変わると全然違うものになる。
特に上級クラスの女の子たちはマジでレベルが高かったから、圧倒的初心者の僕はついていくのに日々必死だった。
なんとか死にものぐるいで練習を重ねる生活を送る中、不登校気味になっているらしいダンスの3年のギャル先輩がわかりやすくアタックをしてくるようになった。
そりゃあさ、綺麗なお姉さんは好きですよ。でもダンス頑張ってる時に余計なものを持ってこられても気がのらない。
そもそもひとつのことにのめり込みやすい僕は、ダンスイベントの直前すぎて恋愛に目を向ける余裕はまるでなかった。
絶妙な息苦しさを感じながら日々の練習をこなしていった。
上級クラスの人たちとのチームを組んで、上手な人たちに囲まれて練習しまくっていたおかげで、ギャルの先輩に対して
"たいして上手くもないくせに練習も真面目にしないで恋愛にうつつ抜かしやがって。"
みたいな目で見てしまう自分がいて、そのことに気付いて自分にものすごい嫌悪感を抱くようになった。
ダンスは好きだ。でも、サークルとしてのダンスにはちょいと距離を置きたくなりだしていた。
そんな苦悩を抱えながらのフェスの日。
野外のでかいステージで踊る初めての経験。
緊張感が半端ない。
ダンスチームは何組も出演する。
僕ら大学生チームは後半の一発目。
この日のために、B系のショップで白のフルーツTシャツに、真っ白なデニム。白のヘアバンドに赤のドゥーラグでメンズのメンバーは揃えた。
初めての本格的なヒップホップファッションは、なんだかむずがゆかった。
ステージに立つ。
爆音で音が流れる。
会場が広すぎるせいで音が反響して、リズムが取りにくい。
でも、とにかく大きく身体を使って全身に血を巡らせる。
音が身体の中に流れ込むのがわかる。
もっと踊りたい!
そればかりが頭の中にリフレインして、あっという間に終わった。
観客の顔なんて観る余裕もなかった。
演劇のステージと全然違う。
野外フェスで踊るということは、音の拾い方との戦いなんだということを身をもって体感して終わった。
この後は初めてのクラブでのショーケース。
こちらは、絶対失敗出来ない。
緊張感がより増していった。
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