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FC岐阜2021シーズン総括 後編

前編に続いて、2021シーズンの総括をする。ここでは、来季に向けた予想と期待を述べる。

来季のメンバー構成への予想と期待

2年連続6位に終わり、昇格の目標が叶わなかった岐阜。来季はJ2から4チーム(SC相模原、ギラヴァンツ北九州、愛媛FC、松本山雅FC)、JFLから1チーム(いわきFC)が参戦し、18チーム全34試合を戦う。今季よりも厳しさが増すシーズンとなるが、3年目を迎える来季でJ2復帰の目標を達成したい。

今季監督を務めた安間隆義監督は退任。シーズン途中からテクニカルディレクターを務めていた三浦俊也氏が新監督に就任する。三浦新監督は、守備への意識を植え付け、「失点しない監督」として知られている。予想だが、フォーメーションとしては、4-4-2を基本ベースとしている。今季の戦いを見ていても、やはり、岐阜は4バックが適していると感じる。ここではポジション別に来季のメンバーがどうなるか予想している。個人的な補強候補選手は主にJ3の選手を中心に候補を挙げている。

岐阜全体として感じる補強ポイントは、やはりモチベーターは獲得したいと感じる。今季のように、難しい時期が必ずある。そこで全体的なチームとしての熱量を落とさないような選手の存在は昇格を目指すチームには必ず欲しいピースである。

a. ゴールキーパー

今季は桐畑和繁と松本拓也がゴールを守った。すでに岡本享也と大野哲煥の2人が契約更新。柏レイソルから期限付き移籍で加入している桐畑の去就は不透明だが、松本は契約を更新したい。来季もGKは3〜4人体制だろう。

個人的な予想としては、今季横浜F・マリノスから鹿児島ユナイテッドに期限付き移籍して戦っていた白坂楓馬は後ろからつなぐ能力が高いと感じる。(2022年12月21日に鹿児島へのレンタル期間延長で合意の模様)

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b. ディフェンダー

三浦新監督が守備から入るサッカーと予想されることから、ここのメンバー構成はかなりこだわりを持ってくると思われる。今季基本的には、甲斐健太郎、藤谷匠、三ツ田啓希、舩津徹也、橋本和が起用された。終盤には、大卒ルーキー小山新もリーグデビューを飾った。

甲斐・藤谷は必ず契約更新して欲しいと感じている。甲斐のキャプテンシーは来季も必要である。さらにボール奪取ポイントはチームトップ、守備ポイント[注1]ではリーグトップを記録するなど、守備から入るスタイルにおいて彼の存在は不可欠だった。藤谷は本来がSBの選手だが、今季は3バックの右を務めた。普段SBだっただけに、オーバーラップのタイミングやパス精度はもちろんだが、今季新たな発見としては、左サイドでも計算できるかもしれないということだ。それが表れたのは、第28節のヴァンラーレ八戸戦。0-2の劣勢の展開で後半、システムを4バックに変更。藤谷は左SBに回った。不慣れなポジションだが、ここでも自分の持ち味を発揮し、ボランチを飛ばして、2列目に供給するパスも見られた。ディフェンスにおいて、高身長のCB/SBの選手はいて欲しい。

個人的に新たな戦力として魅力的なのは、YSCC横浜の船橋勇真とAC長野パルセイロの水谷拓磨、FC今治の原田亘、そして浦和レッズの宇賀神友弥だ。船橋、水谷、原田は守備の粘り強さとともに、攻撃への迫力が魅力的だ。船橋はドリブルからのクロスや攻撃への意識とともに、強烈なシュートを持っている。さらに彼は両サイドできるのもポイントだ。今季も右でも左でも出場している。水谷は登録としてはMFであるが、サイドバックでの攻撃性やクロスの精度に魅力を感じている。正確なキックが持ち味で、クロスからの攻撃もある岐阜にとっては彼の力を活かすことができる。原田も同じように攻撃でのオーバーラップのタイミング、シュート精度の高さは魅力的。さらに、逆サイドにボールがあるときに、中盤よりにポジションを取り、そこからのラストパスの精度も高い。

宇賀神はやはり浦和レッズというチームで活躍してきたその経験値と足元の精度がとても魅力的。勝利命題の浦和で長らく戦ってきたスピリットを岐阜に還元してくれることで、岐阜にいまだ残っていると感じる「負け癖」払拭に大きな要素になるだろう。

新加入選手として、ギラヴァンツ北九州から岡村和哉の加入が決定した。岡村は今季も28試合に出場するなど北九州在籍3シーズンで82試合に出場。対人の強さに加え、岐阜に求めるモチベーターとしても大きく期待が持てる。さらに2019年はJ3優勝に貢献するなど昇格経験もある。J3で昇格したという経験値は大きなものとなるだろう。

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c. ミッドフィールダー

今季の総括を作成する前、最終節を前に驚きの一報が入った。それが中島賢星の契約満了だ。今季25試合に出場し、前述までの通り、岐阜の中盤を支え続けた中島の退団は多くのファン・サポーターが衝撃を受けた。おそらく守備の部分での改善から中島の退団を決断したと感じている。柏木陽介は契約更新をし、前線へのパサーは確保。中盤4枚並べるならば、ボランチ1枚を柏木のようなパサーで起用すると、もう1枚は守備的な選手を起用したい。今季で言うと、本田拓也や大西遼太郎らだ。ここを2枚から3枚で計算したことから、同じようなタイプの三島頌平も契約満了となってしまった。

個人的な魅力を感じる選手は、テゲバジャーロ宮崎から前田椋介やギラヴァンツ北九州の高橋大悟、AC長野パルセイロの三田尚希、カマタマーレ讃岐の西本雅崇の4人をあげる。前田はボランチのポジションで守備へのプレス、攻撃時のポジショニングが上手い選手と感じる。積極的な縦パス供給の意識もあり、宮崎の躍動の司令塔として今季も活躍、自身2年目のJ3でJ初ゴールを挙げるなど、4ゴール7アシストと結果を残した。攻撃やパスのポイントでリーグ3位4位に位置するなどデータを見ても、その貢献度は見て取れる。三田も同じようにコンスタントに得点を奪うことができる選手だ。シュート精度の高さと右サイドから切り込むドリブルが持ち味。ドリブラーで得点能力が高い選手は劣勢の展開をひっくり返す力を持っている。北九州の高橋は、技巧派の22歳の左利きウィンガー。右サイドから巻くようなシュートもあれば、左足で切り返し、敵陣深く入るドリブルもある。また今季はセンターハーフでもプレーするなど中盤で複数のポジションをこなすことができる。来季J3で戦う北九州では1番厄介なプレーヤーだろう。西本は彼らとはタイプが違い、ボール奪取能力に長けた若いボランチである。今季もリーグ27試合に出場し、主にボランチ、終盤はCBでも出場した。今季見えた彼の良さは、ボールホルダーに寄せる強さと読みの鋭さだ。キーとなる縦パスに対して、受け手にいい形で持たせないように足元にプレスする能力がある。プレースタイルとしては、本田拓也に近い。岐阜U-18から昇格した石坂もユースではアンカーのポジションを務め、守備から攻撃を組み立てるタイプ。西本、石坂といった若いボランチタイプを確保しておくことで、長いスパンで安定感が生まれると感じる。

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d. フォワード

FWでは、町田ブライト、粟飯原尚平の2人がすでに契約満了。重厚感あるスピードのドリブラーである町田は中々今季のシステムでは活きるポジションがなかったように感じる。強烈な重いシュートを放てる左足と高いクロスの精度を持つ粟飯原も5ゴール8アシストを記録した昨季とは異なり、今季のリーグ先発はわずか1試合にとどまった。

是が非でも慰留すべきは、やはり川西翔太だ。ディフェンスの裏に抜けるセンスや決定力の高さ、ワンタッチで相手の目線を変えるボールタッチの柔らかさなどテクニックが非常に高い選手。昨季の活躍もあり、警戒が強まる中で、相手の意表を突きながら、ディフェンスの背後を取りながら、奪った13ゴールは見事だった。新たなFWを獲得することで、相手のプレッシャーを分散することができれば、より川西の得点は伸びていくと感じる。今までの川西を見ていても、この岐阜でのプレーが、1番彼らしさが発揮されているだろう。

また川西との相性やポテンシャルを考えても、富樫佑太と村田透馬も残留して欲しい。富樫は前述通り、川西と1番連携が取れている。彼らのそこにいるだろうと感じ合う存在は貴重である。ゴールに迫る迫力も持っていて、4-4-2であれば、サイドでもプレーできる。また村田も今季成長を遂げ、ゴールという結果も残した。彼のポテンシャルはまだまだこれからも伸びていくと感じている。4-4-2であれば、サイドでも中央でも彼のスピードによるドリブルが見られるだろう。加速し始めた彼の成長スピードを止めることなく伸ばすことができれば、新たな「古橋享梧」のようなストライカーが誕生する。

個人的に魅力を感じる選手は、テゲバジャーロ宮崎の藤岡浩介、YSCC横浜のンドカ・チャールス[注2]、福島ユナイテッドFCのトカチ、福島ユナイテッドFCの樋口寛規、ロアッソ熊本の浅川隼人の5人。藤岡は今季参戦の宮崎で川西に次ぐリーグ2位の10ゴールを挙げ、宮崎の躍進に貢献。クロスに対してディフェンスの隙をついて前後に侵入し、ゴールを奪う能力やポストプレーとしても能力が高い。そして先日、岐阜が獲得に成功した。来季に向けて、とても大きな戦力になるだろう。ンドカは大卒1年目の今季22試合に出場し、いきなり6ゴールを挙げる活躍を見せた。魅力的なのは、スピードとテクニック。相手のマークを剥がすフェイントや逆サイドへのシュートは川西のような能力になるポテンシャルがある。さらに、スルーパスに抜け出す一瞬のスピードもあり、自らシュートまで持ち込む力強さが今季の横浜躍進を牽引していた。トカチは福島の10番を背負い、2年連続で7ゴールを挙げる活躍を見せた。特徴は、重いシュートとディフェンスを剥がす切り返しに感じる。足の振りが速く、体全体の力をボールに伝える能力も高いので、ディフェンスが触れたとしても、ゴールに向かうような強さがある。また、ペナルティーエリア内で切り返す能力にも長けている。樋口は毎年コンスタントに得点をあげることができ、今季も9ゴールを挙げる活躍を見せた。さらに今季は自身キャリアハイの6アシストを記録し、福島の上位進出に貢献した。こういった中盤として活躍の計算ができる選手はとても魅力的だ。熊本の浅川は、得点能力の高さとセットプレーやクロスに対してディフェンスの背後を突く巧さがある。またセットプレーからの決定力も高く、プレースキッカーの多い岐阜にとってポイントゲッターの存在は多ければ多いほど良い。先日、熊本と契約が満了し、交渉はしやすいのではないかと感じる。

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さいごに

今季は15チーム全28試合と例年よりも少ない試合数で、J2からの降格もなかったため、昇格のチャンスが昨季よりもあるシーズンだったが、後半戦のスタート5試合で厳しさが増してしまった。やはり、上位2チームに入るには、敗戦は4〜5試合に留めたい。そのために、劣勢の試合も引き分けにできるような試合展開、戦術変更を持ち合わせて、来季は優勝という称号も獲得して、J2に復帰したい。それでも、今季序盤や10月11月のホームでの3連勝(○2-1今治、○3-2長野、○2-0富山)はチームの躍動が発揮されたとても熱い試合だった。来季は34試合と今季より6試合多いが、緑の魂をシーズン通して熱く灯し、J2へ。そして、数年後にJ1への道を切り拓く光を来季灯したい。多くのファン・サポーターがその背中を熱く押してくれるはずだ。


注釈

[注1] 相手のプレーの成功(味方へつなぐ、もしくはゴール)を阻止した場合に、成功していれば攻撃側に付与されていたポイントがそのまま守備側に与えられる。よって味方ゴールに近い方が高いポイントが付く。奪取と違いマイボールにならなかったとしてもポイントとなるので、クロスボールをクリアして相手にコーナーキックを与えたとしてもクロスを阻止したポイントが加算される。(Football Labから引用)
[注2] ンドカ・チャールスは、12月21日に公式で獲得を発表。


参考文献

Football Lab, [サッカー×データ]データによってサッカーは輝く, FC岐阜, 閲覧日 2021-12-20,
Football Lab, [サッカー×データ]データによってサッカーは輝く, 2021J3リーグ, 閲覧日 2021-12-22,
Football Lab, [サッカー×データ]データによってサッカーは輝く, チャンスビルディングポイントとは, 閲覧日 2021-12-22,



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