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FC岐阜vsロアッソ熊本試合前考察

はじめに

12月5日の第30節でFC岐阜はアウェイでロアッソ熊本と対戦する。この試合が2021年シーズン最終戦となる。まず岐阜は、既に昇格の可能性はないが、最終節同期参入組の熊本に対して敗戦という結果だけは避けたいところ。来季につなげるためにも最終戦白星で飾り、2021年をいい形で締めくくりたい。ヴァンラーレ八戸戦、藤枝MYFC戦と前半の戦い方に課題を残しながら、選手交代を効果的に使い、後半は見違えるような内容だった。この試合は熊本が昇格・優勝がかかっているだけに激しくくることが予想される。前半からフルパワーで熊本の攻撃をうまくいなしながら、自分たちの攻撃につなげたい。

一方の熊本は後半戦再開から7連勝と絶好調のスタートを切り首位に躍り出たが、ここ6試合は1勝3分2敗と奮わず、前節テゲバジャーロ宮崎との天王山では終盤の失点で敗戦。他会場で3位だったいわてグルージャ盛岡が勝利、現状3位に転落した。この最終節岐阜戦はJ2昇格とJ3優勝がかかったまさに大一番。優勝と昇格の条件をまとめると以下の通り。

J3 優勝条件

熊本は勝利&岩手が引き分け以下で優勝が決まる。そして熊本は勝利すればその時点で昇格が確定する。つまり、この岐阜戦に全てが懸かっているため、相当なモチベーションで挑んでくると予想できる。

岐阜県の岐阜メモリアルセンター長良川競技場での1度目の対戦は、終盤のセットプレーの流れから得点をあげた熊本が1-0で競り勝った。ただこの試合は岐阜、熊本ともにスコア以上にゴールに迫っていた。ゴール期待値では岐阜が2.472と熊本の1.814を上回るなど特に後半は多くのチャンスを創出。熊本にポゼッションを許しながら厚みある攻撃を防ぎ、熊本のディフェンスラインが緩くなった後半に畳み掛けた。ボール支配率は38.7%ながらチャンス構築率では14.0%で熊本を上回るなどどちらが勝ってもおかしくない拮抗した試合と言える。後半戦は互いに異なるスタートを切ったが、ここ数試合の戦績はお互い今ひとつというところ。どちらがこの『同期対決』を制するか楽しみである。

両チームのスタッツ比較

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今季のスタッツを比較しても、全体的な内容で言えば、熊本は攻撃型、岐阜が守備型のチームであるということが分かる。ただここで面白いのが、リーグの得点数で言えば、岐阜が38得点、熊本が37得点と1点差ではあるが、岐阜の方が多い。さらに、失点数を見ると、岐阜が33失点、熊本は20失点でリーグ最少とデータとは逆の結果が出ている。

ここから推測できることは、熊本は攻撃での内容がかなり充実している分、ゴールまでつなげられない機会が多い、一方で岐阜は、攻撃チャンスは熊本ほど多くないものの、チャンスをモノにしている機会が多いということだ。守備面でも、岐阜は守備の時間が長い分、失点は熊本より多いが、被攻撃回数から換算すると、失点の数が少ない。一方で熊本は自分たちがボールを保持して相手に良い形で攻撃させないスタイルで臨んでいるため、被攻撃回数が少ないため、失点数はリーグ最少だが、岐阜よりも守備ポイントは低い。

それを裏付けるのが、私が利用させていただいている「Football LAB」が独自で算出しているKAGI(Keep Away Goal Index)の指標。これは守備の際に、どれだけ相手を前進させなかったか、相手を自陣のゴールに近づけなかったかという観点に注目した指標だ。相手の攻撃時間のうち、自陣ゴールから遠い位置でボールを保持する時間の割合が高かったり、自陣ペナルティーエリアまで到達する時間が長かったりすると、高い評価になるように指標化している。この数値が高いほど、相手に自陣付近で攻撃させる機会を与えなかったことになる。

熊本はこのKAGIで標準と言える55を超えた試合が9試合に対して、岐阜は5試合。60を超えた試合は4試合で、全て後半戦の試合だった。つまり、相手に自陣ゴール付近に近づけない守備、自分たちがボールを保持して相手陣内でプレーするスタイルが熊本の特徴である。最終戦もおそらくこの形で戦うことが予想される。そこで岐阜がどれだけ粘ることができ、そこから前線へつないでカウンターのチャンスを作ることができるかが勝敗を大きく分けるポイントだろう。

熊本戦に向けた岐阜の対策

相手に合わせてシステムを変えてくることが多い熊本。前節宮崎戦も4-4-2の宮崎に対して、3-4-3のシステムで臨み、守備時にサイドが強力な宮崎に対して、数的不利にならないように対策を打ってきた。今回、おそらく岐阜はいつもの3-4-2-1で臨むことが予想されるため、熊本は3-3-2-2、あるいは両ワイドがより高く3-1-4-2で来ると予想している。

岐阜vs熊本 予想

岐阜はいつもの3-4-2-1、状況によって3-3-2-1-1にシフトできるような布陣でくるだろう。メンバーの変更としては、前節の藤枝MYFC戦からは大きく変更はしてこないと予想しているが、ここでは3バックの左を藤谷で予想してみた。前節リーグデビューを飾った小山はその働きから最終節もスタメンで十分戦える。藤谷は左でもプレーできることが八戸戦の後半で証明された。対峙すると予想する相手FW、特にここまで7得点を挙げている高橋利樹はクロスに対してワンタッチシュート、またはヘディングでのシュートを得意としている。高さはもちろんだが、より足元に来る低いクロスへの対応面で藤谷を推す。ただ、調子が良かった中で前節のベンチ外が負傷によるものであるならば、今節のベンチ入りは不透明。その場合でも三ツ田で戦える。岐阜の層の厚さが功を奏す。

ボランチは本田拓也と柏木陽介で予想したが、相手の2シャドーと2トップのスピードを考えると、本田同様ボール奪取能力に長けてよりスピードに対応できる三島頌平の起用も考えられる。また1トップも深堀隼平を予想したが、ここに村田透馬をスタメンでも可能性を感じる。

一方の熊本は前述のように3-3-2-2、あるいは両ワイド高めの3-1-4-2で予想。熊本はなんといってもアンカーの河原創がキープレーヤー。バランサーとして熊本の攻守を支えている。守備面では、ボール奪取能力の高さと危機察知能力で3バックが飛び出したスペースを埋める。攻撃では、強烈なミドルシュートも持っている。さらに右ワイドに上村周平を起用するあたりも面白い。本来ボランチや4バックのサイドでプレーするが、サイドでの守備やスピードが求められるWBに上村を起用するのは、ここから前線への起点を作りたいというポイントがあるだろう。さらにこの3-3-2-2のフォーメーションで杉山直宏や2トップの近い方がサポートに向かうことで、サイドで数的有利を作り出す。岐阜としては、上村と岩下による斜めからの縦パスを受ける側にどれだけ態勢良く受けさせないかがポイントだ。

岐阜vs熊本 ホットゾーン

上図は両チームのホットゾーンの比較。これを見ても、熊本が両ワイドを起点に攻撃を組み立てていることが窺える。ハーフウェイラインより少し高めの付近が両サイドともに同じような色合いをしている。片方のサイドに集まらず、両サイドで同じように攻撃の起点ができている。一方で岐阜は自陣深い位置と左サイドがこの中では濃い色で示されている。守備の時間が長いため、この位置でのボール保持は長くなるだろう。そして攻撃で言うと、起点を作る動きは主に左サイド。こちら側に相手をスライドさせ、中央を経由して、逆サイドで窪田らがドリブルで仕掛けるのがここ最近の攻撃パターン。ホットゾーンから両チームの攻撃の特徴がわかる。

岐阜が警戒すべきは、やはり2トップの動きと2シャドーのポジショニングだ。熊本はここまでクロスからの得点が13得点ある。両ワイドからのクロスボールも警戒だが、その前の2トップの動き出しにしっかりついていきたい。岐阜のここ最近サイドからのマイナスのクロスやトップの選手の落としからシャドーの選手がシュートを打って失点するケースが続いている。この試合も要注意だ。クロスをトップが収め、2列目からシュートを放つケースやマイナスのクロスに2列目が飛び込むケースが容易に予想できる。サイドに渡った時にボールウォッチャーにならず、5-3の並びのバランスを崩さないように守ることができるかが岐阜にとっては大きなポイントだ。

熊本戦に向けた個人的な見解による岐阜の戦い方

前で述べたとおり、熊本は両ワイドで起点を作り、そこからのクロスや中央にパスを出し、そこから裏に抜けるFWにパスを出しゴールを狙う。つまり、岐阜としてはどれだけこのサイドでいい形を作らせないか、そして5バックと中盤3枚が連動して守備ができるかが求められる。八戸戦、藤枝戦の後半のような守備が前半から発揮しないと厳しい展開になることも予想される。

熊本戦 個人予想②

ここでは4バックシステムの場合も予想してみた。サイドで作る起点に対して2人で挟み込む守備陣形とある程度のパスコースを限定する守備がやりやすいと感じる。また、両ワイドが上がった裏にスペースが生まれる。そこをここでは村田透馬を予想したが、窪田稜らがつき、ドリブルで切り込む。左に村田を起用したため、逆サイドには起点を作り出せる中島賢星を配置した。そして1トップに山内寛史を予想。守備時はある程度下がって対応するため、ディフェンスラインからの1本のロングパスを収めることができる存在がここに欲しい。藤枝戦の総括でも述べたが、ここまで1トップ起用の深堀隼平の特徴はここではないと感じている。そこでよりポストプレーに長けている山内、あるいは粟飯原尚平らを起用するとここでタメが作れ、フォローの速い川西翔太へつなげることができる。山内、川西で時間を作り、そこに柏木陽介が上がってくることで、パサーが攻撃参加できる。この時の守備のバランスはボランチの一角の三島が舵を取る。

前章で守備面を考慮して3バックを小山新、甲斐健太郎、藤谷匠で予想したが、4バックにすることで三ツ田啓希も予想した。三ツ田を起用する効果はやはりセットプレーに表れる。熊本は今季の失点のうち、1番多い形がセットプレーからだ。つまり、三ツ田を起用しても、岐阜のセットプレーでⅢ章の予想より高さは生まれる。また、熊本のセットプレーの守備を見ていると、高さはあるものの、そこを抜けたファーサイドやセカンドボールの対応から失点するケースが多い。三ツ田を囮に熊本の選手を引きつけ、ファーで川西らが合わせる形が生まれそうだ。前章では、藤谷の状態やよりクロスボールに対する対応を考慮して小山・甲斐・藤谷を予想した。セットプレーからの攻撃を考えると、小山(藤谷)・甲斐・三ツ田の3バック、または上図のような4バックも有効的である。

さいごに

この試合が今季の締めくくりとなる。昇格という目標は潰えたが、相手は昇格&優勝がかかっているため、フルパワーで臨んで来る。ここでこちらもフルパワーで立ち向かい、勝利という結果を残すことができれば、それは来季に向けて大きな自信となる。今年1年間の集大成、いやそれを超えるような内容と結果で2021年の挑戦を終えて欲しい。


参考文献

Football Lab, [サッカー×データ]データによってサッカーは輝く, 2021-12-01, 閲覧日 2021-12-03,
KAGI,AGIとは



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