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まだ静寂と孤独を愛していたくて


平日の昼下がりの公園、誰もいない路地裏に深夜のコンビニ、早朝の静けさ、その全てが美しく孤独である。

死にたくて眠れなかった日だ。気がつけば朝5時で濁った青空がゆっくりと橙色に染められていく様をただぼんやりと眺めていた。
辺りは静かで、自分の鼓動しか聞こえなかった。ずっとここに居たいと思った。


世界が騒がしくなる頃、私は眠った。
この世のすべてが煩わしく思えた。鳥の鳴き声さえも鬱陶しく思えた。
美しいものだけを見ていたかったんだ。私にとって美しいものは常に孤独が付きまとう。
でもそれを愛していた。


水族館に行った。日曜だったから、その人の多さはめまいがするほどで、来てすぐに帰ろうと思っていた。
けれど大きな水槽に泳ぐ魚を見た瞬間、時が止まったみたいだった。音が一瞬消えた。
私の知っている青じゃなかった、夏の空のように鮮やかな青。光に照らされた魚の鱗がキラキラと光っていて目を細めた。

紛れもなく美しかった。でも孤独じゃなかった。喧騒の中の美しさもあるみたいだ。
世界はまだ知らないことばかりだ。全く違う感情を持って同じ景色を見ていることもあるというくらいだから、景色は人の数だけあって同じものを見ることはできないのかもしれない。



今日も死にたくて眠れない日だった。声を押し殺して泣いたから、顔は涙でぐちゃぐちゃ
になっていた。
涙で霞んだ目でまた窓の外を眺めていた。
濁った青空の中に小さな星があって、白い息がその景色を覆った。
途端に寂しいという感情で頭の中がいっぱいになった。真夏の青空のようなあの景色が忘れられなくて、それを見て綺麗だと笑った人との時間が愛おしく思えた。

でも私はまだ静寂も孤独も愛していたい。
それが大切ではなくなることが寂しい。
私の世界の美しさはずっと変わらないで静寂でどうか孤独であってほしい。






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