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世界をみよ、そこに全てがある

エッセイが好きだ。

この言葉で表してしまうと「ちょっと怖い…」と言われてしまうかもしれないが、私は人の生活の片鱗を見るのが好きだ。「What's in my bag?」俗に言うカバンの中身であったりVlog、エッセイ、人の生活を覗きみれるようなコンテンツを愛している。

「生活」と一括りにされるコンテンツを分けると様々な区分けがなされる。服、住宅、車、雑貨、料理…それらを見るとその人がどんな人生を生きてきてどんな人生を培ってきているのかわかりやすい。そして何よりその人の思考回路、傾向を如実に感じ取ることができる。素晴らしいと思う。

生活についてを書に書き記す。私としてはここまで自分に合った分野はないと思う。話すよりは文字を読むのが好き、人の生活を知りたい。そんな私の人生にとって欠かせないエッセイという分野。自分の暮らしを、趣味を、思考回路を切って貼ってこねて、またバラバラにして人生を切り崩して一つの作品になる。人の人生が自分の生活に入ってくるような、読んでいるとそんな不思議な気持ちになるのだ。

そんな私が最近読んで「おっ!これは非常にいいね!」と大満足したエッセイがあるので紹介したいと思う。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
著:若林正恭

みなさんご存知、オードリー若林さんのエッセイである。確か出版されたのは少し前だったと記憶している。なんとなくタイトルに惹かれていたのだが、あの時の私は本を読む気力は少なからずなかったように思う。(なんならエッセイだったことも知らなかった気がする。リサーチ不足だ。)

この本を読もうと思ったきっかけは時間ができたことと、芸人さんのエッセイって面白い!と「小説家が書く以外の作品なんて…!」という私の偏見を打破できたことがきっかけである。
またもしかするとこの本についてもお話しするかもしれないが、阿佐ヶ谷姉妹というコンビの芸人がお互いに書いたエッセイ阿佐ヶ谷姉妹ののほほん二人暮らしという本が私の偏見を打ち砕いてくれた。本当に面白いからぜひ興味がある方は読んでみて欲しい。

さて、話を表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬に戻そうと思う。

あらすじ

オードリー若林、東京から楽園キューバへ逃亡を図る!

読者の共感を呼んだ前作「社会人大学人見知り学部 卒業見込」を出発点に、新たな思考へと旅立ったオードリー若林の新境地!

累計20万部に迫る前作『社会人大学人見知り学部 卒業見込』。
そこで吐き出された社会への違和感、悩みは普遍的なものだと思っていたけれど、
「あれ? これって人が作ったシステム上の悩みに過ぎなかったのか?」
と気づいてしまった著者。
「俺が競争したい訳じゃなかった! 競争しなきゃ生きていけないシステムだった!」
新しい発見に意識がいったところで、
「別のシステムで生きる人々を見てみたい」
と、猛然とキューバへ旅立った。

キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない、間違いなく若林節を楽しんでもらえる、そして最後はホロリと泣ける、待望の書き下ろしエッセイです。
本当にプライベートで若林さんが撮ったキューバ旅行の写真も多数掲載予定。

はっきり言おう、この本を読むと人生が変わる。と私は思っている。私がこのnoteを書き始めたきっかけの一つだと少なからず感じている。

話は2016年2月「今年は夏休みが5日取れそうだ」とマネージャーに言われた若林さんの独白から始まる。そこで若林さんは「よし!かねてより念願だったキューバに行こう!」と思い立つのである。

私はまずそこを見て「え、すご…」と思った。海外、ましてや最近までアメリカとバチバチやってたキューバに…!行くだと!?もうこの時点で拍手である。ただ、若林さん自身も言っているのだがいつも引っ込み思案な自分な自分が珍しくどんどん予定を立てていく、「何者かに行けと言われているように」と。すごくわかる。

私は元来すごく面倒くさがりな上に冒険しない。同じ映画を何回も見るし同じ音楽を聴くし同じ本を読む。ライブには行かないし、スマホを手にして以降は手元の世界に没入してさらに引きこもった。自分の目で世界を見るのが恐ろしかった。

ただ2023年は違った。
完全に友人の影響であるが好きな音楽を生で聴きたい!好きなアーティストの曲と一体になりたいと初めて一人でフェスに行った。その後、会社の先輩や仕事関係で知り合った人ともフェスに行った。すごい、一昔前までの私では到底考えられないような経験をしている。

なにかに導かれたように2023年は新しい世界へ駆け抜けた。そして2024年もそのまま突っ走ろうとしている。これもひとえに何かに導かれてるのかもしれない。


話を戻そう。
これは単なるキューバ旅行記ではない。若林さんが漠然と抱えていた問題、それは日本、ひいては先進国が共通で持ち合わせているようなシステムから生み出されるものだ、若林さんはそのシステム以外で構築された国を見て見たいということで「キューバ」を訪れるのだ。

実際読んでもらいたいので、詳しい話は避けるがこの話だけは大好きなので紹介させていただきたい
。若林さんは東大の大学院生から家庭教師に来てもらっている。家庭教師というよりはニュースをわかりやすく説明してもらったり、疑問に答えてもらったりしているらしい。その彼との会話の一説。

「先生、知ることは動揺を鎮めるね!」
「若林さん、学ぶことの意味はほとんどそれです」

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

私はこの会話を見て目から鱗が落ちた。
「学ぶことの意味」私はいい大学に行くとか、将来いい企業についてお金を稼ぐためとか、俗っぽい理由しか思い浮かばない。しかし、学ぶことの本質というのは「多くを知ることで動揺を鎮めること」、自分の漠然とした不安な気持ちに名前をつけることなのかもしれない。名前のない物体は恐ろしい。

若林さんがこの人生を生きてきて漠然と抱えていた名前のない不安。この不安の正体、仕組みを知ることで若林さんは知らないことによる動揺を鎮めることができた。

私はそもそも不安というのが知らないことによる動揺だということすら知らなかった。
「こんな展開になって心が傷付いたらどうしよう」と遠ざけていた本や映画は知らないことによる動揺の産物である。それに気づいたことによってわたしは今日、多くの物語や作品を楽しむことができている。

心が傷付いたらこんなふうに自分の気持ちを文字に起こして沈める術を知ったからだ。

知ることは世界を見ること。
この世界の動揺はほとんどの人が見て見ぬふりを決め込んでいるだけで、ほとんどのことは解決されているのかもしれない。

若林さんはキューバ旅行記だけではなく、モンゴルで馬に乗った話やアイスランドでオーロラを見た話(ちなみにオーロラを見た話はそこまでメインではない)を載せている。
若林さんは「世界を知ること」でなんだか生き生きとしている気がした。

私は残念ながらお金がないので若林さんのように直接海外に行くことは今のところないかもしれないが、現代はありがたいことに世界を見てきた人の話を読むことができる。未来以外のことは本を読めば知ることができる。

私は本を読む、そしてできる限り足を運んで世界を見る。この小さな四角の世界を通して、私は知ることができる。

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表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬の解説はDJ松永さんが書いているのだが、私はこれを読んで泣いた。泣きすぎだろ嘘乙と思われるかもしれないが、泣くくらい心を動かされる何かがあると、そう思っていただければありがたい。

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