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TCGケース開発記録#3 | 販売準備+トレカの壁掛け

ネジ、磁石の無いトレカケースの開発記録です。試作第1号が完成した後のお話。開発記録兼備忘録のため乱文ご容赦ください。


量産に向けた準備を進めていた

試作第1号に満足しすぎた結果、勢いのままに量産を目指した2022年頃。
金型という謎の機器に大枚を叩いた当時の私は大分能天気でした。そして、能天気がてらいろんなことを画策していました。

  • ブランド名を「ASTER(アステル)」に、ケース名前を「C3(シースリー)」に決めました。C3は"Crystal Clear Case"の略で、混じりっ気の無い無色透明なケースという意味を込めています。

  • ASTERは「星」という意味で自分の大事にしたいものを大切にできるような製品を作りたい、という意味を込めてます。この時 "四月は君の嘘"にハマっていたことも原因な気がします。K.265 きらきら星 | 星は君の頭上に輝くよ(誰がわかる)。

  • 販売は元々やっている事業とは全く違うので流行りのクラファンで行くことにしました。MakuakeやCampFireより海外にリーチできる方が良いかなと思いKickstarterに狙いを定めて準備を進めていました。

順調に事は運ぶ

有頂天で準備を進めていた私に製造現場から金型で作った最終版はいつ上がってくるのかな?などと物思いにふけっていると一本の電話が。
待っていましたと言わんばかりに喜び勇んで現場に向かった私ですが、そこで渡されたのは、見たことの無い謎のサンプルでした。

当時の製作途中サンプル

どうやらこれは金型を使った成形途中品とのこと。上下のランナーは注入口でここから熱したアクリル原料を流し込みキャストして作るらしい、というところまで理解。そして、右にそびえ立つ前方後円墳的なものが余剰アクリルを流す河口になっていて、最終的にいい感じになる、とのこと。
ええ了解です、わかりましたとしつつ後は量産を待つばかり。私はさらに期待値を高めていったのでした。

壁掛けサプライを作った話

こうして万事OKと思い込んだ私は次なる一手に着手します。1つも販売していないにも関わらず新しいプロダクトに着手するという謎ムーブをかまし始めます。それは「壁掛け」です。

  • 一部のトレカって最早アートだよね。

  • アートって仰々しく壁掛けしてあって格好がいいよね。

  • 絵画と同じ価値があるトレカって壁掛けが似合うようね

という謎理論の下、あろうことか額装できるサプライの開発に着手します。C3が完成するまでに時間があったことも原因だったかもしれません。クラファンでケースしか商品が無いのは寂しい、と思ったこともあったかもしれません。

ともあれ、様々な理由がありながら壁掛けできる装置の開発に着手したわけです。じゃあ次にトレカの額装ってなんだ?と言う話です。当時、トレカを額装するサプライを販売していたのは私の知る限りではカード鑑定で有名なPSAくらいでした。

参照:https://www.mint-mall.net/products/detail.php?product_id=183739

PSA鑑定カードを窓枠にはめ込んで固定する簡単な構造です。PSA公式を表すロゴも入っていて様になっています。

一方で、私は自分のカードケースを壁掛けしたい気分が最高潮に盛り上がっています。カードケースを壁掛け装置にはめ込んで、一体となって初めてアートが完成する、とまで思い始めています。

これを実現するためには大変な道のりがあったのですが、それを語り出すとあと3本ほど記事を書かねばならないので割愛するとして。
結果として生まれたのがこちらです↓。C3と調和するようにF3と名付けました。今は亡きプロダクトです。

額装の色はフルオーダーで選ぶことができカードの絵柄にあった額装を楽しむことができます

折角なので仕様をまとめておきます。備忘録たる所以です。

  • クリアーケース(C3)を真ん中にはめ込むことができる"ロの字"型の額装

  • 額装は本革製。大型の家具を作るときにどうしてもできてしまう歯切れの牛本革を加工したエコ仕様

  • カードに合わせて革製フレームは着色。パティーヌと呼ばれる革の染色技術を利用し、職人の手で綺麗なグラデーションを再現

  • "青眼の白龍"に使用しているのは「螺鈿加工」の特別版。伝統的な螺鈿と漆の技術を用いて桜吹雪や雪化粧を再現しカードに合わせてドレスアップできる仕様に。

と、ここまで凝った作りを試作していました。まだ何一つ売れていない中でここまで愚かな夢を見られるのも一つの才能です。ただ、何度も申し上げるようにこの時点では「これ良いよね!」という思い込みの下進んでいるので、有頂天です、無敵です。つまり、失敗するのも無理からぬことなのです。

おわりに

壁掛けのこだわりを淡々と書いていたら文字数がえらいことになってきたので#3はこの辺で終わりです。

私は本心では、時代を先取りしすぎただけで「壁掛け型」はまだ良いと思っています。溶けるようなグラデーションの表現とそれにあわせたカードのアート性は今でも「誰かに響くのでは?」と心のどこかで思っている節があります。懲りないことも才能の内かもしれません。

ただ、そんなセンチな気持ちは胸の内にとどめておきつつ、折角なので壁掛けのサンプルをいくつか掲載して第3回を終えようと思います。1人でも誰かの琴線に触れることを祈ります。

Kickstarterで応援募集していた当時作成画像(今はCloseしています)。MTGのアート性はやっぱりすごいです。手のひらのアートだと信じてやまないですね。
フレームとケースの組み合わせ。赤から黒のグラデーションは職人の手塗りで美しいです。決して高いカードでなくても自分の気に入ったカードを精一杯美しくアレンジするのは楽しいです。
調子に乗ってPSA鑑定品に対応できるサイズの額装も作っていました。汎用性のある額装で金や銀のフレームが小気味良い。
黄色からオレンジに移り変わるグラデーションと金のフレームが最高にエモいと思っていた時期もありました。

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