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みんなのあたりまえのいえ

東京都で建築設計事務所として活動しているわたしたちアソシエイツは、このたび、「家」についての研究をはじめることにしました。
現在の家を取りまく状況を多角的に分析し、住まい手それぞれが、自分の生活にふさわしい家を選択するための方法を整理してお伝えしていきます。

きっかけは、2020年に世界中で深刻化したコロナ禍でした。

新型コロナウイルス感染症の拡大は、世の中を大きく変えつつあり、社会だけではなく、個人の価値観や暮らしにも変化をもたらしています。
これまで気軽に行ってきた外出や交流が制限され、仕事、学習、趣味、運動、買い物などなど、すべての行いについて、いますべきことなのかを慎重に考える習慣がつきました。家のなかで済ませられることは家のなかで、と思うことも多くなりました。

このさまざまな変化は、総体として、いままで家の外で行われてきたことが、次々と家の中に持ち込まれていく動きであると捉えることができます。つまり、家に求められる役割は、これまでにないほど大きくなりつつあるわけです。

実態としても、家にいる時間は多くの人で長くなっています。また、各種の調査から、家に関心を持つ人がこれまで以上に増えていることが明らかになっています。
その一方で、外出する時間が少なくなり、家族などの特定の人と長時間過ごすことに対して、ストレスや息苦しさを感じる人も増えています。

家に住まうメンバーシップのあり方はさまざまです。ひとり暮らしをする人も大勢いますし、家族以外の人と一緒に住まう人も珍しくはありません。
では、こうしたさまざまな家の住まい手は、それぞれにふさわしい家に住まうことができているのでしょうか。

現在つくられている住宅のバリエーションは、残念ながらそれほど多いとは言えません。ローンが組みやすい核家族向けの建売り住宅や、不動産投資の対象となりやすいワンルームマンションなど、売れやすい家はたくさんつくられますが、それは家を必要とする人の実情を必ずしも反映したものではないのです。
実情にあわないところに無理をして住めば、家は、そこに住まう人の生活をゆがめてしまうものになりかねません。しかも、家の役割が大きくなっている現在の流れは、家と生活のミスマッチを拡大させています。

しかし、家が人間の生活の鋳型になることはあってはならないとわたしたちは考えています。

みんなが、それぞれの暮らしや希望する生活にあわせて、いちばんふさわしい家を選択できること。それを実現するための、さまざまな情報や制度、住宅ローンをはじめとする資金調達の方法などを整理して、わかりやすくお伝えしたいと考えています。

今後は下記のような構成で、週に1回、記事を公開していきます。予定が変更になることもあるかもしれませんが、どうか最後までお付き合いください。

目次
1)家に求めるもの
2)住まい手のさまざまな姿
3)家の選択肢
4)住宅取得支援制度・ローン・税制
5)持家 vs 貸家
6)事例:DINKs、クィア、多世代、建築家
7)家の終わらせ方

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