愛犬 ビリー

僕がかなり小さい頃から飼っていた犬の名前ビリー
父親が知り合いからゆずりうけたきた犬だ。

小さい頃からずっと一緒で本当にずっと何をするにも一緒で
子供のころの写真にもよく映り込んでいる。

父親がもらってきた時のビリーも小さい子供の犬で
僕も小さくずっと同じように育ってきた
まるで兄弟のような存在だった。

ビリーは雑種で今は何だかミックス犬だとか
お洒落な感じのいい方に代わって店頭でも
ずいぶん高く売られている。

当時は野良犬なんかもいたりして
雑種はタダ同然で犬の自称、愛好家さんたちなんかは
見向きもされていなかったっけな。

ビリーは土佐犬が混じっていたらしい
土佐犬は体もゴツイ犬でとても可愛らしいとは言えない
見た目の犬種だけれど
ビリーは物凄く可愛かったんだ。

只の親ばか?兄弟バカ?かもしれないけれど

ビリーはとても頭が良かった
雑種は頭が良い犬が多いとも聞いたことがあるけれど
ビリーもそうだったのだろうか。

家では母親が美容室を開いていて
毎日のようにお客さんが出入りをしていたけれど
決してお客さんに吠えたりしたことは無かった

それだけじゃなかった
ビリーが賢かったのはお客さんじゃなく
意味もなく家の周りをウロウロしているような人が
居たときは吠えて家族に教えてくれたりしていたのだ。

ビリーの小屋があったのは家の裏の倉庫の方
決して直接入り口を見れていなかったにも関わらず
それが分かっていたのだ。

ビリーは僕をいつも守ってくれていたんだ
ビリーを連れて散歩をしている時に
向かいから人が歩いてきたんだけれど
連れの人が犬が嫌いなのか怖がっていた

その時の男の人がわざわざ何だか文句を言ってきた
まだ小学校だった僕にだ
ビリーはその人がこちらに攻撃的だと分かった途端に
僕の前に立ちはだかるように移動してきた

それで向こうの人が分かってくれたらよかったのに
その人は僕に持っていた何かで殴ろうとまでしてきた

そのことに怒ったビリーは相手を威嚇するように
吠えだした

騒ぎに近所の大人の人が出てきて
騒動をおさめてくれたなんてこともあった

その時ビリーは決して相手に噛みつこうとはせず
僕の前に立ちはだかっていただけだった。

でも、こんなに頭が良くて強いビリーは
物凄い寂しがり屋でもあった。

散歩の途中にいたずらで僕が隠れてみた
ビリーは僕がいないことに気づいたら
クーンクーンと泣き出し
呼ぶと物凄い勢いでこちらに走ってくる

僕とビリーは小さい頃から一緒に育ってきた
兄弟だったんだ

十何年生きたのだろう?
僕も高校生にまでなったとき
ビリーは物凄いお爺ちゃん犬になってた

散歩に行ってもそんなに早くは歩けないし
走ったりはもう出来ない

それでも散歩に行くときに使っていた首輪と紐を持っていったら
凄くうれしそうに寄ってくる

何となく分かっていたんだ
別れが近いだろうことは

毎日毎日だんだんと弱っていくビリーを見るのは
魂だか体の一部だか良く分からないけれど
とにかく何かが引き裂かれるような気持になっていった。

ある朝ずいぶん早く目が覚めた
何故なんだろう?
僕には分かったんだ。

ビリーが死んでいることに

怖くてすぐには様子を見に行くことは出来なかった
見たときは死後硬直がおこっていて
体が硬くなっていた

僕の小さい頃をずっと傍で見守ってくれたビリー
小さい頃を一緒に育ってきたビリー
今でも時々だけれど無性に君を思い出すことがあるんだ
そしてこう思う

最後に看取ることが出来なくてゴメンね
本当にありがとう


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