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僕と僕の中を垣間見る4

そう、君が高校2年生の時だ。その事故を起こしたのは。
君はまだその時の景色と喧噪が何かを理解していなかったね。
とてつもない大事故の事を。

      『危ない!!』

そう思ったとき時間が止まった。
嫌、動いている。僅かに動いている。
俺自身が車にぶつかっていく、その時が。
はっきりと、でも、ゆっくりと動いている。
何故だ!長い、とてつもなく長い時間だ。

気づいたとき俺は天を仰いでいた。

俺は何をしているんだ?少し混乱していた。
周りが騒がしい。誰かが何かを言っている。
俺の周りに大勢の人が集まってきているのだ。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。
その音がだんだん近づくにつれ
自分の足に鈍痛を感じた。足が動かない。
俺は倒れたまま全く動けなくなっていた。


誰かが病院に運ばれてきた。
顔面蒼白で汗もかいている。
痛みも相当あるんだろう。
そう、それは君だ。
君は車との接触で病院に運ばれてきたんだ。

どこかの部屋に運び込まれた。
看護師やら医者が合図と共に俺の体を
別のベッドに移動させ何か機械のようなものを取り出した。
足がパンパンに腫れあがっている為
ズボンを脱がせることができない。
医者がこのままだと見れないからとハサミで切り始めた。
これが俺の足なのか?どうなっている?
左足の膝ではない少し上の所から曲がるはずのない
内側に向かって曲がっている。
医者はまずは骨をまっすぐ伸ばすためだと言い
麻酔もしないで細い鉄の棒のようなものを
俺の足にガリガリと機械の様な物を使って差し込み始めた。


君がどんな姿をしていたのか、思い出したくはなかった。
痛み止めは飲んだ。でも、全く効いている様子はない。
足を固定されて骨をまっすぐに向ける為に
細い金具を足に差し込み重りを付けて一晩中そのままだ。

今日は手術の日だ。俺の意識は朦朧としている。
手術室に運ばれているだろう事だけは分かった。
次に気が付いた時には個室の病室で寝ていた。
欠けた骨が見つからず5時間を超える大手術だったらしい。
俺の足は付け根から指先まで石膏で固められて
自分ではどうなっているのか確認のしようもなかった。
これで暫くは病院生活になるのかと思ったら
ウンザリだと思った。
この時はそう思っていた。


君の入院生活は4ヶ月半にも渡り
学校も留年することになったんだけど
その病院での生活で君は少しづつ笑うようになっていった。
それを君は気づいていたのだろうか?

入院生活はなんとも暇だ。
飯もまずいし、足が固まってるから動くことも出来ない。
見舞いの数もだんだん減って家族位しか来なくなった。
かまやしない、所詮こんなもんなんだろ。
いつも機嫌が悪かった。
あいつ来ないかな・・・

そういえば一つだけ機嫌が良くなる出来事があったんだよね。





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