さよならのラブソング

さよならのラブソング - episode 13

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>> episode 12

「私はここの星の生まれではないんだよ。家は別にある。今は、いわゆる『駐在』だね。で、この時代のここでは、一夫一婦制、一夫多妻制といったしきたりはないのだけど、皆好んで一夫一婦でいる。他のパートナーを持つ必要性を感じない人が多い。」
「私も、がんばるよ。少しずつ離れる暮らしをしてる。」
サラが割って入ると、ダリアンが補足した。
「サラはね、ツガイと離れて暮らそうとして、オーストラリアの目と鼻の先のこの島に来たんだ。」

サラは、相手と離れたなんて、喧嘩でもしたのだろうか?すると、サラが強い口調で言った。
「違うよ!いつでも帰ったら喜んでくれるし、私もいつだって帰りたい。」
僕が
「今も?」
と返すと、サラは
「今もよ!だって飽きないし、いっぱい楽しいことを思いつくもん!」
と、ほっぺたを膨らまして拗ねた表情をした。
ふっと視線をダリアンに向けると、ダリアンはニコニコしていた。

「みんなこの『計画的分離』キャンペーンには自分のタイミングで従うんだよ。これまでは皆、ツガイと一緒に自分の働きをこなして、ツガイと一緒に生きていたから。もっと古い、ツガイのない時代は、皆両性具有だった。今は性別の分離まで進んできている。そしたら、次のステップはツガイのいない環境での生活なんだ。彼女なりにトライしてるんだよ。でも、しょっちゅうツガイのもとに帰ってしまうんだけどね。」
するとサラが横から言う。
「最近は離れている期間を少しずつのばせてるよ、私。」
「そうだね、えらい。」

サラも稽古の後は優しいと言っていたが、ダリアンはサラに対して優しい。サラのことをよく分かっていて、旧知の仲といった親しさを感じる。彼の任務は相当昔からあったのかもしれない。

「そんなに長くないよ。まだ私始めたばっかりだし、ダリアンの稽古はすっごくすっごく鬼訓練なんだから!大変だよ!わかんないこといっぱいだし!」
「そうなんだ。」
女性にとってはおそらく大変に感じるのだろう。
「確かにサラにとっては厳しいかもしれないね。だけど、実力つけてもらえるとすっごく助かる。それに、上達はなかなか早いよ。」
そう言ってダリアンは冷めたカップのお茶を飲み干した。

「さ、今日は稽古も済んだし、これくらいで。太一くん、よろしく。この子は扱いが大変かもしれないけど、いい子だから。」
ダリアンと握手をすると強い光がふわっと身体中に広がって真っ暗になった。

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※episode 14以降は有料です。

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