さよならのラブソング

さよならのラブソング - episode 3

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気を失っていたのか。ふと目を覚ますと、そこは港町だった。なんていうか、RPGゲームで出てきそうな港町だ。プロペラのついた、水陸両用のような一人乗りの船が水辺や草原に雑に置かれている。キノコのような形をした家や歪な形の家がポツポツとあり、なかなか栄えているようだ。魚市場があるわけでもない、水辺の町といった雰囲気である。

僕はなぜここにいるのだろう?そうだ、橋の上に止まった電車から飛び降りたんだ。じゃあ、実は目の前の海は、実は海じゃなくて三途の川というものなのか?
「こっちだよー!」
どこからか声がした。ふとそちらを見ると、赤茶けた服と帽子を身につけた女性がこちらに手を振っていた。僕はつかつかとそちらに近づき、訊いた。
「ねえ、これって僕は死んでしまったんですか?」
すると彼女はケラケラと笑って
「死んでない死んでない!まだ早いよー。」
と言った。

「じゃあ、ここはどこなんですか?」
「私の住んでる島!もとの家はね、海を渡った先にあるんだけど、今はここで一人暮らししてるの。」
「いやあなたのことは訊いていなくて、僕はどこにいるというの?教えてもらえません?」
「ジーランド島っていう島。なんかさ、疲れたって言ってたじゃん?だから連れて行こうと思って。南国の島はお嫌い?」
彼女は全く調子を崩すことなくあっけらかんとしている。とりあえず、僕は今なぜか南の島に来ていて、若い女性と一緒だとシチュエーションに置かれていることは理解した。

「あ、ところで。」
ふと思い出して彼女に訊いた。
「まだ名前訊いてなかったですね。なんていうんですか?」
「私?サラっていうの。」
「サラさん。僕は岡原太一っていいます。」
「知ってるー!」
そういえば、ここにくる前、彼女は僕の名前を呼んだ。

「ちょっと、人違いですよ?」
「間違ってないです!岡原太一さんでしょう?」

「あ、ここにくる前、なぜか僕の名前呼んでましたね。なんか人名リストとかあるんですか?」
何かの業者なのかと思っておずおずと質問した。
「じん…え?何それ?そんなのないよ。どこにいるか見つけたから連れて来たの。」
これはますますよくわからない。業者でないのなら何なのか。僕の困惑をよそに彼女は続けた。
「それでさ、なんて呼んだらいい?私はサラでいいよ。」
「僕は…、太一でいいよ。」
「オッケー。たいちゃん!」

ずっとこのノリなのはついていけないものがあるが、とりあえず、ここには知っている人もいないので、彼女と行動するしかない。町を案内してもらうことになった。

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