さよならのラブソング

さよならのラブソング - episode 5

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目覚ましがうるさい。無意識に手を伸ばすとスマホに触れた。目を覚ますと、平日の朝だった。ここは僕の家のベッド。

そうか、夢だったのか。でも、昨日は家に帰った記憶がない。確か、電車から川に飛び降りたはずだ。女の子と。いや、それも実は夢だったのではないのか。だとすればどこからが夢じゃないのか。釈然としないまま身支度を済ませ、会社へ向かった。

電車に揺られながら、スマホを取り出した。すると、奇妙なメッセージが届いていた。

忘れないで。
誇り高き時代があったことを。
温かく優しい世界を。

僕の付き合いの中ではこんなメッセージを送る人なんて当然いない。だけど、見たようなメッセージである。昨日、送られてきたメッセージ、いや、昨日の夢の中で見たメッセージのはずだった。
「まさかね。」
そう思ってさらにスクロールした。

もうすぐ着くよ!
遅くてゴメンね。

そのまさかだった。昨日のことは夢ではなかったのか…?!メッセージがきて、直後に女の子が来て、僕は電車から橋の下の川に飛び込んだのか?いや、そうだったなら今僕はこうしていない。考えられるとしたら、僕が幽霊になってこの電車に乗っているということだ。それなら、死んだってこんなに疲れる生活を強いられることになる。人生とはどこまで理不尽なのだろうか。死んだら天国に行って可愛い女の子に囲まれて癒されているものだと思っていたのに!

電車は会社の最寄駅にたどり着いた。とりあえず、会社に行く。誰か会ったら話をするはずだし、まずは会社に足取りを進めた。

いつものように1Fの自販機でコーヒーを買い、居室に入り、席についた。誰と目を合わせるでもなく挨拶をする。
「…ざいます。」
すると、いつも通り小声で「っス…」と返事が帰ってくる。

僕はホッと胸をなでおろした。見えていないわけじゃなかったんだ、と。

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