さよならのラブソング

さよならのラブソング - episode 11

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僕らの社会、か。僕らの社会はこの人たちの社会と関係あるのだろうか?話すほどに何らかのモヤモヤが胸に起こるが、今訊いても分かる自信がない。
「つまりね、たいちゃんの社会は未来だよ。私たちの。ずっとずっと後の、でもすぐ後の未来。約束の未来。」
「約束?僕はサラと約束なんかしてないよ?何を約束するの?」

サラは黙って僕の手からしずく型の風船を取って、さっき落としたもう1個のそれを拾い、また集中し始めた。それらは2つ紐状に伸びて螺旋のように絡み合いだした。そして螺旋は上下から挟まれたように縮こまり、1つの白い光の球体になった。光は少しずつ柔らかくなり、虹色に反射する紫色の風船が姿を現した。

「元には戻らないの、違う新しいバージョンの『ココ』が生まれるんだよ。そのために、今のことがある。」
僕がポカーンとしていると、ダリアンが微笑んでいた。
「説明はアレだけど、少し上手になったんじゃない?サラ。コントロールできる感覚が分かるまで、まだまだかもしれないけど。」
「え?本当?そう思うの?やったぁ!」
暗い話をしなくてはならないような曇った表情をしていたサラの顔色が明るくなり、いつもの声色になった。

師匠と弟子とはいうものの、サラは師匠であるダリアンに対して終始タメ口をきいている。この二人は本当に師匠と弟子なんだろうか?本当はどんな関係なんだろう?そして、この二人は僕が口を開いていないのに思っていることに返答する。まるでテレパシーでも使っているように。

「たいちゃんに合わせて『コトバ』を使っているよ。私も、ダリアンも。コトバって不便なとこがあるけど、これも分離の結果必要になったんだよね。そうそう、『タメ口』ってなぁに?」
またも、言っていないのにサラからの返答。思ってもない質問だったけど、僕なりに答えた。
「タメ口って、同じ立場の人と話す言葉だよ。同じ立場や下の立場の人と話すときと目上の人と話すときで言葉の言い回しを変えるんだ。」
「どうして?」
「どうしてって、上の立場の人は敬わなくちゃいけないだろ?」
「上の立場の人だけを敬うの?」
女性特有の質問なんだろう、と思いながら
「上の立場の人は敬うものだし、当たり前だよ。ですよね?ダリアンさん。」
とダリアンの方を向いた。すると、ダリアンは一瞬驚いた顔をした後微笑んだ。
「君は『彼ら』と似たことを言うね。ということは君の時代にはうまく進んでいるんだな。」

ダリアン、あなたは僕と同じ男性ではないのか。ここに来ると、このくらいのショックは朝飯前なのだろうけど。

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