遠雷
大だいこを小さく細かくたたくようなやわらかい音で雷が鳴り出した。
稲光は見えないから、きっとまだだいぶ遠いのだろう。
むかし、こういうときに家の中で娘の姿が急に見えなくなったことがあった。
鳴るごとに雷が近づいてきているのがわかるようなとき。
4歳のころ。
雷をこわがって、いつもならそばに来るはずの娘。気づくといない。
名前を呼んでみたが、返事もない。
ひとりで外に出る訳はないから、家の中のどこかにいるはずと思っても、降り出した雨が激しく打ちつける音と、土が湿っていくときの匂い、どんどん暗くなっていく部屋で、いるはずの子がいない恐怖がわたしをおそった。
広くもない家の中を横切り、閉じていた扉を開けていく。
いない。いない。どこ?返事して!
果たして。
娘はドアをきちんと閉めて、洗面所にいた。
真剣な表情で一所懸命にシャツをズボンに入れようとがんばっていた。
みなさん、無理しないで楽に。
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