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【閑話休題】子どもがいないことで「わきまえている」あなたへ

オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森会長が辞任。後任は紆余曲折を経て、橋本聖子さんが就任されました。

一連の騒動の中でキーワードとなった言葉が「わきまえる」でした。当の森氏の発言を見てみましょう。

「私どもの組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます。みんな競技団体からのご出身で国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですからお話もきちんとした的を得た、そういうのが集約されて非常にわれわれ役立っていますが、欠員があるとすぐ女性を選ぼうということになるわけです。」(スポニチアネックス/2月4日https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2021/02/04/kiji/20210204s00048000348000c.html)

つまり、わきまえている女性の発言は適切だが、そうでないと話が長くて困っているが、文科省の4割の数値目標があるので、女性を入れざるを得ない…そんなニュアンスでした。

森氏が使った「わきまえる」という言葉に反発した人も多く、その後「#わきまえない」というハッシュタグがトレンド入りしたり、「わきまえない女なので」と半ば流行語のように使われたりしました。

ここで思い出したのは、このnoteでもつづっている「子どものいない人」を対象としたアンケートのことでした。

心無い言葉をかけられたり、理不尽なことにあっても、そのことを誰かに申し出たり相談したりしていない人が多いのです。

いわない理由としては「言うほどのことでもない」「言っても仕方がない」という理由が上位にあげられています。この回答から、子供のいない人は職場で「わきまえている」ように見えます。

つまり、「自分さえ嫌な思いを我慢すれば職場に波風を立てなくて済む」「たとえ伝えたとしても、そういう思いをするほうに問題があるなどといわれて取り上げられないだろう。だとしたら、嫌な思いをするぐらいなら言わないほうがよい」と考えている人が多いのではないでしょうか。

実際に、子どもがいない人が、子どものいる人の仕事上のパフォーマンスについて注意したら「子どもがいることに嫉妬しているから」と言われているケースを目にしたことがあります。「セカンドハラスメント」ですよね。

さらに、昨今のダイバーシティ&インクルージョンの推進の中で、「子どもがいる人ヘは配慮すべきだ」という風潮もあります。それが「自分が我慢して子どものいる人に譲らなくては」と自己犠牲を強いてしまうこともあるのではないでしょうか。

利他の精神は尊重すべきです。しかし、それは自己犠牲だと、そのストレスは心身を蝕みます。

「わきまえる」こと自体は悪いことでは、もちろんありません。ただそれが高じて、アンケートで見られたような無意識の偏見による圧力が高じて、問題が潜在化してしまうのだとすることは、健全な組織という意味では大きな問題です。

こうした状態に陥らないためにはどうしたらよいか?
「言わなきゃ伝わらないから言え」というのは簡単です。しかし、セカンドハラスメントが懸念される状況では、それは容易ではない。

まずは「わきまえない」人を孤立させないこと、支えることが大事なのではと考えています。自分の身近には支える人がいなくても、別場に行けば共感してくれる人がいる。
以前であればそうした場を見つけるのは難しかったですが、いまはネットを通じて世界を広げられる時代です。

「子どものいない人生を考える会」がそうなれば・・・と思っています。アンケートを通じて数値という客観指標を使って問題提起したのもそうした思いからです。

必要以上にわきまえてきたと思った方へ。
わきまえずに声を上げたことで傷ついてきた方へ。

「一人ではないですよ」
ぜひ語り合いましょう。




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