見出し画像

🟨 日本人の9割が知らないタイ飯③ 〜素麺みたいカノムチン〜

素麺のようで素麺じゃない

カノムチンは屋台でもフードコートでも必ずある白い麺。ナムヤー(つけ汁)が何種類もあって付け合わせの野菜や漬物が取り放題だったり。ぱっと見日本の素麺にそっくりだけど小麦じゃなくて米から作る。

そしてカノムチンには米粉を生で作る製法と発酵させて作る製法の2種類がある。正直言って発酵カノムチンって食べたことないけど。

日本のタイ料理屋ではあまり見かけないし、ほとんどの日本人は知らないけどタイ人なら誰でも知ってるのがカノムチン。パッガパオと同じくタイの国民食って言ってもいいくらいの人気と知名度。

ただ日本人にとって衝撃的なのはカノムチンにタイカレーを掛けて食べること。日本の素麺にカレーを掛けるなんてなかなか想像できないけど、そばやうどんやラーメンだってカレーを掛けて食べるんだからそれほど奇想天外な話じゃないはず。

ちなみに日本のタイ料理屋でメニューに載ってるカノムチンはほぼほぼ素麺で代用してる。


カノムチンナムヤー

カノムチンをバンコクで食べようとすると屋台でもフードコートでもだいたいカノムチンナムヤーって看板に書いてあるお店を探すことになる。

カノムチンナムヤーは本来タイ中部と南部一帯で食べられるカノムチンを使った料理名。でも実際にはゲーン(タイカレー)も選べたり。カオゲン屋のような業態だと思った方がいいかもしれない。

カノムチンナムヤー屋の店頭

多くのお店ではカノムチンにつけるナムヤー(つけ汁)が何種類かと取り放題のトッピング野菜や漬物が店頭に並べてある。毎日食べれば絶対野菜不足にはならないレベル。

そしてこの並んでるいろいろなナムヤーだけどよく見ると、お店ごとに違う何種類かのナムヤーとゲーンが並ぶ。合いがけもできるお店も多い。

手前がトッピング野菜&漬物、
奥の鍋ががナムヤー

下の画像では左から、①ナムヤーカティ(ココナツミルク)、②ナムヤーパー(イサーン風激辛)、そして③ナムヤーカティコラート(コラート風ココナツミルク)、④ゲーンキヤオワーン(グリーンカレー)ってなってる。3つはナムヤーだけど最後はゲーン(タイカレー)だった。

ナムヤー3種類とゲーン1種類

別のお店では①ナムギヤオ(北部風)、②ナムパー、③ゲーンキヤオワーン、④ナムヤーカティプラー(魚のココナツミルク)、⑤ナムヤープー(カニ)、⑥ナムプリックラーン(⁇)って感じでカオゲン屋みたいに選択肢が多い。

ナムヤーの品揃えで気づくのはナムヤーカティやゲーンキヤオワーンなど中部地方由来のココナツミルクベースが必ず用意してあること。そして北部、東北部など地方の「ご当地メニュー」があること。

下記のお店ではナムヤーの説明表記はなかったが、店名のところに「5つの地方のカノムチン」って書いてある。5つとは北部、東北部、中部、南部、東部のこと。こんな感じで地方出身者へアピールしてるのかもしれない。

看板に“5つの地方のカノムチン”

カノムチンって言っても中国じゃない

ほとんどのタイ人は誤解してるけど、タイ語でカノムチンはขนมจีน。直訳すると中国(จีน)のお菓子(ขนม)。でもカノムチンの語源は中国とは全く関係ない。カノムチンって言葉はモン族の言葉の「コン•ノム•ジン」じゃないかと言われてる。「コン•ノム」とはグループに集まることを意味し、「ジン」は調理の意味(諸説あり)。()

実際にカノムチンはタイ北部ではカノムセン(ขนมเส้น)と呼ばれてるし、イサーン(タイ東北部)ではカオプン(ข้าวปุ้น)と呼ばれてる。どっちの意味も中国要素はない。

もちろんカノムチンは炒め物でも揚げ物でもないから「中国系タイ料理」じゃなく「ルーツ系タイ料理=ジャングルフード」になる。

そういえばモン族が多く住むパパデーンの市場に行ったとき、カノムチンを売るお店の奥でカノムチンを茹でてた。使い込んだ釜にタネを専用の機械で押し出して次々とカノムチンができていく。

モン族がカノムチンをどのような時に食べてたかというと、儀式、お祭りなどの催事のために人が集まった場面の饗応。つまり家庭料理とかお店で商売として販売したわけではなかった。
なぜならカノムチンは作るのに手間がかかるし、人手を必要としたから。しかし、その後カノムチンを専門に販売する人が自分で作って売るようになったらしい。()

pantip.com より

1000年以上前から食べられてきた

カノムチンの語源が中国由来じゃなくてモン語だとすれば。モン族は1000年以上前から東南アジアに住んでたのでカノムチンもそれくらい前から食べられてきたのかもしれない。

ちなみにモン族は今ではミャンマー国内に多く住んでるが、古くは現在のタイ中部、北部、東北部にも居住してた。そのためか、ミャンマーのモヒンガーやベトナムのブンみたいにカノムチンに類似した麺料理(後述)が近隣諸国にもある。


カノムチンのいろいろ(タイと周辺国)

🔸カノムチンナムヤーカティ

バンコクを含めたタイ中部地方が発祥のカノムチン。南部発祥のココナツミルクがベース。


🔸カノムチンゲーンキヤオワーン

これもココナツミルクベースの人気メニュー。ナムヤーじゃなくてゲーン。ってことはご飯にかけるタイカレー。日本で言うグリーンカレーと同じ。

🔸カノムチンナムギヤオ

チェンマイとかタイ北部地方名物のカノムチン。トマトがベースのスープ。メッセージ右上の茶色いのがギヤオと呼ばれる花のつぼみ。

🔸タムスア

イサーン(東北)地方のカノムチン。イサーン名物ソムタムの具材にカノムチンが入ったメニュー。右下の物体は発酵させたサワガニ。

🔸カノムチンゲーンガイクア

トンブリ時代にタイに移住したポルトガル人の末裔に伝わる独特なカノムチン。超レアメニュー。基本はココナツチキンカレーとのことだけどなにがポルトガルなのかは不明。味はかなりマイルド系。

🔸モヒンガー

ミャンマー全土で食べられてる定番朝食メニュー。とろみがついたナマズ出汁のスープが特徴。具材にバナナの茎を使う。

たまにモヒンガーのスープの仕込みを見かける。このお店ではバナナの茎を切ってナマズと煮込んでる。ナマズは丸ごと煮てる。

🔸ブンチャー

カノムチンに似たブンを使ったベトナム北部発祥のスープ麺。甘酸っぱいスープにつけて食べる。炭火で焼いた豚肉がトッピング。


今回気になったけど調べがつかなかった心残りは…

①タイ周辺のミャンマー、ベトナムそしてカンボジアにもカノムチン似の麺類があって、年代的にも様々な歴史があるのに、どんなつながりがあるか不明。OTRも以前取り上げてたけど明確になってない。


②語源は中国と関係ないとしてもカノムチン似の押し出し製法の麺が中国雲南にもある(食べたことないけど)。絶対どっかで繋がってるはずと思ったけどそれを記述したものが見つからない。


チャンネル登録おねがいします

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?