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🟨 日本人の9割が知らないタイ飯② 〜ガパオ愛が止まらない〜

「日本人の9割が知らない…」なんてタイトル付けといて2回目にいきなりガパオかよなんて思った方、ご安心を。これから日本人の9割が知らないだろうガパオについてのエピソードを紹介するから。

パッガパオといえば豚ひき肉

パッガパオ(※)はタイ人のほとんどが愛するタイの国民食。その愛ゆえにレシピだったり使う食材についてのこだわりも強い。タイ人の間でも伝統的なレシピはこうだったとか、こういう食材は使うべきじゃないとかの議論が尽きない。
※日本人が言うガパオライスとはタイ語でパッガパオ(ガパオ炒め)のこと。

市場で売られてるガパオ

前回、炒め物、揚げ物はもともととタイ料理にはなかったと書いたけど、やっぱりパッガパオも古典的なタイ料理じゃない。ようするに「中国系タイ料理」の一種だ。
後で書くように第二次大戦後考案された料理。でも肉類とガパオと調味料を炒めるだけ、特別な食材は不要で簡単にできることから大いに普及した。

道端の屋台でホンモノのガパオでパッガパオを作る風景

一方でパッガパオといえば日本人に大人気のタイ料理。でもそのほとんどがニセモノでガパオが入ってないとか、ピーマンとかタマネギとかタイでは使わない材料が入ってたり、とその人気ぶりと変質ぶりにはタイ人もビックリ。

ネット上に日本人がニセモノのパッガパオをネット上にアップするとたちまち炎上する。他のタイ料理にくらべてその反応は敏感で激しい。

ガパオの葉をちぎる食堂のスタッフ

ガパオ愛が激しく炎上

2014年6月からファミマが発売した「ガパオライス」はファミマの公式Xで間違いだらけのタイ語でツイートしてしまっただけでなく、タイのパッガパオとはかけ離れた画像がタイ人やタイ料理好きの日本人の間で炎上案件になった。

問題は間違いだらけのタイ語以上にガパオが入ってないパッガパオの画像。タマネギやピーマンが入っていてもなんかの悪い冗談だと笑って流せてもガパオの葉が見当たらないのは弁解のしようがない。

タイではフレッシュガパオを当たり前のように使う。ガパオの風味がすると言い訳しても通用しない。タマネギしか載ってない牛丼を見せて牛肉エキスを使ってますと主張してるようなもの。

もちろん悪気はないだろうし、コンビニ飯としては美味いんだろうけど、タイ人のガパオ愛を侮っていたことは間違いない。

そして2024年5月にもFacebookでタイ人が投稿した日本のセブンイレブンの「ガパオライス」の画像がタイ中を震撼させた。この件は個人のFacebookにとどまらずタイで最も人気のソーシャルメディアにも取り上げられてしまった。

それによると「吐きそうになった」「日本のカレーと混ぜたんじゃないか」など散々なことを書き込まれてる。

さらに同じくFacebookで日本旅行を扱うタイ語ページでは、この日本のセブンイレブンの「ガパオライス」画像がさらに拡見。「糞のようだ」といったコメントが多くあったことが紹介されてる。

こう言った炎上は日本在住のタイ人ユーチューバも拡散してる。日高屋の「ガパオライス」を食べる様子を動画投稿してレポート。内容はかなり批判的。この動画には、「日本人が5฿の寿司を食べる時の気分だろう」「タピオカ粉が入ってるんじゃないか」などのコメントが寄せられてる。

タイ語版のミシュランガイドでは日本でパッガパオが大人気なことが書かれてる。そしてタイでは「豚挽き肉が主流なのに日本では鶏挽き肉がほとんどだ」とか、タイでは絶対あり得ない「パッガパオにパクチーがトッピングされてる」などなど指摘されてしまった。

パッガパオの起源

パッガパオの起源はそんな古いものではない。タイ語版wikipediaのパッガパオによると、タイ人の書いた本では350年前からガパオは登場するらしいが「香りのいい野菜の一種」として紹介されてる程度で炒め物メニューはない。

タイの大手メディアタイラットの記事によると、実際に炒め物としてのパッガパオが一般に食べられるようになったのは、1957年に豆鼓を使った中国料理をアレンジしたのが大人気になったのが最初。当時の材料は肉とガパオと唐辛子とニンニクだけ。調味料もナンプラーとシーユダム(たまり醤油)だけとシンプルなものだった。

トアファックヤオ(ササゲ)などの野菜が材料に入ってくるのはそれからだいぶ先の1970年代のこと。オイスターソースや味の素を使うようになったのもこの頃。パッガパオが生まれた1957年といえばまだ70年も経ってない。けっこう最近の話。日本で野菜炒めが一般家庭に普及したのが1950-60年代の高度経済成長期と言われてるけど、そんなもんらしい。

愛ゆえのガパオ内戦

こんなタイ人のガパオ愛故の諍いはタイ人同士でも没発することがある。日本で言えばカレーライスにはソースか醤油か?とか酢豚にパイナップルはありかなしか?みたいなものか。

最近論争が決着したのがトゥアファックヤオ(ササゲ)をパッガパオに入れるか入れないかと言うもの。ガパオ以外を入れるのは邪道だとか、肉を減らすためにかさ増ししてるとか散々言われてた。

でもタイの大手メディアカオソットの記事によると、1970年に書かれたレシピが2021年に発見され、この中にトアファックヤオが書かれてたことで、この論争はあっけなく決着。その後ネット上では好きな食材入れればいいんじゃね?って声が沸き上がったそう。

トアファックヤオ入りパッガパオ

パッガパオに入れちゃダメなもの

パッガパオの基本は肉類やシーフードなどの素材とガパオそして調味料だけで作るのが基本。ガパオ以外の野菜を入れると炎上の火種になるってことはわかったとして。じゃあNG素材はなんだろう。

そんなことがタイのネットメディアKaiJeawの記事になってた。パッガパオに入れていい野菜は何か?①トアファックヤオ、②ニンジン、③ベイビーコーン、④タマネギ。その結果は②と③が絶対NG。①と③は許容範囲らしい。

さらに前回も紹介した料理研究家のMcDangさんがGordon RamsayさんのYoutubeチャンネルに登場したとき欧米系の人たちが考えがちなパッタイはタイの国民食じゃなくて、ホントの国民食はパッガパオだと言い切る場面があった。そこまでは良かったんだけど、次の瞬間パッガパオを作り始めたときニンジンとベイビーコーンを入れてしまった。これにはタイ人がYouTubeのコメント欄で反発しただけじゃなくネット上にもMcDangさんへの批判記事が出てきてしまった。

今度は日本以外にも「ガパオライス」にはピーマンとタマネギが必須と思ってる日本人と同じ思考回路の人種がいることを発見。さっきのタイのネットメディアKaiJeawの別の記事ではタイ人がラオスに行って食堂でパッガパオを注文。出てきた料理にはトアファックヤオとケールの茎がどっさり入ってた。これにはタイ人もビックリ。

そういえば、2019年パンデミック直前の時期、ラオスのビエンチャンの国際空港のレストランで同行したタイ人がパッガパオを注文。出てきた料理(下記画像参照)には大きめのタマネギが………注文したタイ人は唖然。

ビエンチャン国際空港のタマネギ入りパッガパオ

以上、タイ人がこよなく愛す国民食パッガパオについて、愛するゆえに、たぶん日本人が知らないところで、日本のパッガパオについて炎上事案になっちゃったり、タイ人同士でも論争になったりするってお話でした。

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