『我何処へ行かん。・・・いざや歩み行かな。』
夜勤休みの寂しい秋の夜に、家から徒歩30分のところにある墓地近くの林道を歩く。鬱蒼と茂る叢をかき分けて、わずかに辿ることのできる細い道を進んでいく。行き先は晴れなら高台で星が望むことができる三昧場の地蔵堂だ。
行き先が決まっているのにあっちへ行ったり、こっちへ行ったりしたい放題の道草をするかなり無茶くちゃな足任せだった。昔、萩原朔太郎がエッセイ『秋と漫歩』のなかで『「散歩」という字を使っているが、私の場合のは少しこの言葉に適合しない。いわんや近頃流行のハイキングなんかという颯