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2020年暮れのお檀家様へのお便り

 下記のツイートに載せた2020年お盆のお檀家様へのお便りの続きです。

『世襲僧侶のイメージ』

 今年のお盆のお便りで「YouTubeをはじめました」とお伝えして、【仏教思想のゼロポイントで仏教を学ぶ動画】を見た方から感想をもらいました。

「凄い喋るね…いつもとは別人」「わざとあんな独特な喋り方なの?」「クセが強いし、喋るのが早すぎて内容が全然頭に入ってこない」など、せっかく見てもらったのに不快にさせてしまったかもしれない感想を何件か頂きまして非常に申し訳ない気持ちです。

 ごく普通に仏教を学べる動画や、聴いていて心が癒されるありがたい法話を配信する力が足りず、見てくれた方を驚かせるような形になってしまいました。※ちなみにYouTube動画の画面右下の設定ボタンから再生速度を0.25~2倍まで変更可能です。宜しければ活用して下さい。

 それで今日は、どうしてあんな動画になってしまったのか説明のお話です。これは恐らく私の〝普通の僧侶のイメージに収まりたくない〟というこだわりに原因があります。

 なぜ〝普通の僧侶のイメージに収まりたくない〟のかというと、元々普通の僧侶が私の憧れる職業ではなかったからです。私にとっての日本にいる普通の僧侶のイメージは、人が亡くなったらお葬式に意味のわからないお経を読みに来て沢山お布施をしなければいけない人です。そんな普通の僧侶は日本の歴史的な経緯があって現代は大多数が世襲で成り立っています。政治家に憧れる人が少ないように世襲僧侶に憧れる人も多くありません。

 その理由のひとつは内情がよくわからないからだと思います。私たちはわかり易いイメージに惹かれます。小さい頃は勧善懲悪のアンパンマンやウルトラマンが好きですし、若い子はユーチューバーやキラキラ映えるモデルやテレビに出演する有名人に憧れます。スポーツ選手や社会に貢献する会社の社長もそうでしょう。人を助ける医療従事者や教育者になる人が多いのも自分がその仕事に就いているイメージができるからです。

 それに比べて僧侶はどうでしょう。素敵なイメージが浮かぶでしょうか。政治家もですが少し想像すればわかるように、例えば、彼らはメディアから四六時中批判されているイメージだし、一度きりの人生を思い切り楽しんだ方がいいと人々が言う時代に、わざわざ自分から修行して僧侶になるなんて物好きか変人扱いされてしまいます。

 話は逸れますが、僧侶業界の場合、そのような事情もあり、新しい人間による新陳代謝が進まず世襲ばかりで組織が維持されています。
 世襲の私のイメージは現状維持路線の傾向が強く保守的。この辺りにも、儀式ばかり立派で形骸化した仏教とか葬式仏教、広げて坊主丸儲けとか誹謗中傷される原因があるのではないかと思っています。

 以上のようなイメージがあるため私は、全く普通の僧侶に対して憧れを抱くことができませんでした。いや、そんなに嫌なら僧侶なんかやるなよと思われるかもしれませんが、違う職業で生きていく根性がなかった話は今日はしません。それで紆余曲折ありながら普通の僧侶になり十年が経ちました。それなりに真面目に仕事も勤めてきました。

 ですが今回、ひょんなところからその本性が漏れ出てしまったわけです。要するに自分が普通の僧侶のイメージに憧れられないならば、自分が憧れられるような僧侶に自分でなるしかない。恐らく十年以上、そんな想いをずっと抱えて生きてきたのだと思います。そうして生まれたのが、あの酔狂なYouTube動画です。どうしてあんな動画になったのか。長い長い言い訳になりました(ちなみにアレが自分の100%憧れていた姿とは勿論言えません)。

 とはいえ、前回のお便りでも言いましたが〝仏教って凄いんですよ〟〝死んだら仏になる成仏って最高の安楽なんですよ〟〝皆さんも共に仏教を大事にしていきましょう〟と心の底から伝えられないまま、なんとなく形式的に教わった儀礼を務めるだけの僧侶ばかりでは、日本仏教の未来は絶望的です。

 アイドルを応援するため気持ちよく課金したり、優秀な企業に投資するように、お寺を守る住職だって、お檀家様に仕方がなく布施をしてもらうのではなく、心の底から布施をしたいと思ってもらってこそ、私の憧れる僧侶の姿です。そのために、どうすればいいのか。15年くらい四苦八苦しましたが、やっと気づけました。まずは自分が心から仏教を信じられるようになる。これが一番大事。お金も家族も遊びも大事だし、今でも少しでもラクをしたいとも思いますが、僧侶たる者まずは心から篤く三宝(仏法僧)を敬えるようになるべし。この心境に至るまでが滅茶苦茶大変でした。そして今、それに気づいても次はそれを人にうまく伝えなきゃならないわけで修行は続くよどこまでもです。 

 今年で私もついに35歳になります。これは仏教の開祖お釈迦様がお悟りになった年。これからは日本の普通の僧侶のイメージを壊していけるようにYouTubeに一層励んで参ります。看過できない点がありましたら、どうかご指導下さい。そのような訳で婚期も絶賛遅れています。なんとか今38歳くらいまでに結婚できたらと夢見ております。

 来年も宜しくお願い致します。合掌

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