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【絵本レビュー】 『あたまをつかった小さなおばあさん』

作者:ホープ・ニューウェル
絵:山脇百合子
訳:松岡享子
出版社:福音館書店
発行日:1970年8月

『あたまをつかった小さなおばあさん』のあらすじ:

小さな黄色い家に住む小さなおばあさんは、とてもじょうずに頭を使って、なんでも解決してしまいます。お金のかかる羽ぶとんを買う代わりに、がちょうを12羽買ったおばあさん。でも、羽をむしったらがちょうが寒くてかわいそう。ぬれタオルで頭をしばり、人差し指を鼻の横にあてて目をつぶり、一生懸命に頭を使いおばあさんが考えついたこととは……。それって本当にかしこいこと?と思ってしまう楽しいお話がいっぱいです。


『あたまをつかった小さなおばあさん』を読んだ感想:

「あたまを使いなさい」は子供の時よく言われたことの一つです。私はとても飽きっぽくて、せっかちでした。算数や英語のドリルなどをしてもうっかりミスが多く、父にいつも「ケアレスミスだ!」と叱られたものです。「もっと注意してやりなさい」と言われても、やっている時に意識的に間違おうとしてしているわけではないので、私としては不甲斐ない結果と言うしかなかったのです。

さらには、問題集に関していえば、父はただ解答用紙を見て間違っていると言うだけですから、「答えが違うと言うから違う」と言うのみで、なぜ違うのかは説明してくれません。すると子供の私の頭では「理不尽」としか捉えられなかったのです。
「理由もないのに違うなんてありえない。意地悪で言ってるだけで、きっと間違っていない」と思い、なかなか正しい回答が見つけられなくなってしまったのです。

この傾向は今でもあり、「間違っているよ」と言われると私の頭は自然に「間違っていない」モードに切り替わってしまいます。でも自分で何かが問題だと気づいた場合には、考えるようになるのです。つまり「頭を使う」ようになるということ。最近学んだのですが、私たちには「考える時間やスペース」が考えるためには必要ということです。でも私たちは毎日時間に追われているので、そんな時間を他の人にも自分にも与えている暇がないのではないでしょうか。今日も息子がお弁当を一人で詰めるのを横目で見ながらイライラ。息子はああでもないこうでもないと並べ替えて、蓋が閉まらないとまたやり直し。私から見たら明らかに「間違っている」詰め方なのでイライラ度も絶賛上昇中で、叫び声がもう喉まで上がってきている状態なのですが、経験上ここで「違うよ」というと息子はあたまを使わなくなるわけです。家を出る10分前にこの状態ですから、私の体内ではイライラがマグマのように流れ出す瞬間です。何度も深呼吸をして、昨夜見た伊豆の温泉の動画を思い出しながら耐えます。

カチッ。小さな音がしてお弁当箱が閉まりました。息子は小さなジュースをいつの間にか出してきてお弁当の上に乗せ、踏み台から降りようとしています。「全部入ったの?」と聞くと、「当然じゃん」という顔を向けてきました。もう中がどうなっていてもいい。私はこうして無事家を出ることができました。

小さなおばあさんもそうですが、あたまを使うには、まず問題点に気づくことが大切なのではないかな、と気づいた朝でした。

『あたまをつかった小さなおばあさん』の作者紹介:

ホープ・ニューウェル(Hope Newell)
1896年、ペンシルヴァニア州ブラッドフォードに生まれた。シンシナティで看護学を学び、卒業後、第1次大戦中は従軍看護師になった。戦後はソーシャルワーカーになり、1965年に火事で亡くなるまでその仕事に従事した。彼女はカリフォルニア州の果樹園で5年間過ごしたことがあり、そのときまだ幼かった息子にいろいろな話をしてあげたという。のちにそのときの話を書こうという気になったのが著述を始める動機となった。著書に『あたまをつかった小さなおばあさん』(福音館書店)がある。


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