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【絵本レビュー】 『ぼくのくれよん』

作者/絵:長新太
出版社:講談社
発行日:1993年4月

『ぼくのくれよん』のあらすじ:


こんなくれよんで、絵を描いてみたいな。
ぞうのくれよんは、とても大きなくれよん。青で描いたら、カエルが池とまちがえてとびこんじゃった。でも、まだまだ描きたいんだ。今度は何色を使おうかな……!?

『ぼくのくれよん』を読んだ感想:

前にも書きましたが、子供の頃の私は絵を描くのが苦手でした。描きたい絵は頭の中にイメージされているのに、手から繰り出されるものは全く違うのです。まるで二人羽織をしているようなもどかしさでした。

そんな私に最初のお絵かきブームが来たのは小学校6年の時でした。今覚えば受験勉強からの逃避、またはストレス解消だったような気もしますが、急に絵を描きたくなって、父にくれよんを買ってもらったのです。うちにはそれまでくれよんがなかったので、私は綺麗に並んだちょっと油臭いくれよんがとても愛おしく感じました。そのまま取っておきたい気持ちと、映画で見た絵描きみたいに一日中無我夢中で絵を描き続けたい気持ちとが沸き起こりました。

とうとう決意を決めてスケッチブックを取り出すと、私は描き始めました。なんの映画だったのかは覚えていませんが、私はその絵描きになりきっていたので、描く絵は「ダンスするカップル」とか「カフェ」とか、全くもって現実離れした絵ばかり描いていたのですが、私の中にはヨーローパ人の貧乏画家の魂が乗り移っていたので全然違和感はありませんでした。

もちろん私のアート批評家(父)はあまり心を打たれた様子はなかったのですが、私は気にせず描き続けました。スケッチブックが終わりに近づいた時、私の絵への情熱も冷めていたのですが、あの時のくれよんの感触と匂いは忘れられません。

数週間前なんだか急にこの時のことを思い出して、息子に小さなくれよんセットを買いました。綺麗に並んだ6本のくれよんを見て息子がまずしたのは、くれよんをそっと上から撫でることでした。我慢できず私も一緒に撫でてみます。ああ、これこれ、この感触。息子がいない時に借りて描いてみようと計画している母でした。

『ぼくのくれよん』の作者紹介:

長新太
1927年東京生まれ。蒲田工業高校卒業。「おしゃべりなたまごやき」(福音館書店刊)で文芸春秋漫画賞、国際アンデルセン賞国内賞、「はるですよふくろうおばさん」(講談社刊)で講談社出版文化賞受賞。「たぬきのじどうしゃ」(偕成社刊)「みみずのオッサン」(童心社刊)などの作品がある。


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