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【絵本レビュー】 『ふしぎなたいこ』

作者:石井桃子
絵:清水崑
出版社:岩波書店
発行日:1975年1月

『ふしぎなたいこ』のあらすじ:

げんごろうさんはふしぎなたいこを持っています。
たいこの片方をたたいて「鼻高くなれ、鼻高くなれ」と言うと、ピノキオのように鼻がどんどん高くなります。
反対側をたたいて「低くなれ、低くなれ」と言うと高くなった鼻が低くなります。
人を喜ばせるために使うには良いのですが、げんごろうさんが自分だけのために使ったために事件が起こります。


『ふしぎなたいこ』を読んだ感想:

鼻を高くしたり低くしたりする太鼓に一体どんな魅力があるというのでしょう。

私にとっては実に魅力的です。最近韓国ドラマに(十年ほど出遅れて)ハマり、韓国女優さんたちの綺麗な横顔にうっとりしているのです。
「キャンディキャンディの歌はまさにお前のためにあるようなもんだね」
そう母に言われ続けた子供時代を経て、私は鼻に対する劣等感の塊になってしまいました。

高校時代は読書と映画と水泳に明け暮れて、全くもって男性っ気が無く、休みの日は一日中家にいて映画雑誌を読んでいるという状態でした。そんな私を見て母は、
「日曜なのにデートの誘いすらないの?」
大抵私は、「またくだらないことを言っている」と思って相手にしなかったのですが、そんなある日言われたのです。
「鼻があと半センチくらい高かったら、もっとモテただろうに。整形代出してあげようか。」

「はあ?」
さすがに傷つきました。他のことに興味があって彼氏を探していないだけなのに、鼻が低いことが理由で見つけられないと決めつけているのが実の母であることがショックだったのです。鼻が低いと誰も相手にしてくれないのでしょうか。その日から自己流で鼻をマッサージしたり、鼻先をつまんで少しでも上に伸ばそうとしました。鏡に横顔を写し、少しでも鼻が高く見えるようなアングルを研究したりもしました。

だから、こんな太鼓があったら嘘であっても私は手に入れたいと思うかもしれません。でも自分のために使ってはいけないなら、こんな太鼓を持っている人をきっと探すことでしょう。ただ問題は、どのくらい高ければいいのか、なのです。

にんげんの はなが どのくらい のびるものか、ためしてみたく なりました。

とげんごろうさんも考えましたね。整形も一度するともうちょっともうちょっとと歯止めが効かなくなると聞いています。私は母の言う「半センチ」で満足できるのでしょうか。それとも歯止めが効かなくなって、私自身では無くなってしまうくらいいじってしまうのでしょうか。考え始めるとなんだか自分が信用できなくなって、鏡にベストアングルの自分を映しながらいうのです。
「そんなにひどくないんじゃない?」

幸い旦那は大きな鼻が好きではありません。市販のメガネがいつもずり落ちてしまうのも、愛嬌の一つとして見てくれているようです。まあ歳も歳ですし、私はこんな鼻なんだと受け入れて、他の部分を磨き上げたほうがいいかなと、今日もせっせと自分の内部磨きに励むのです。


『ふしぎなたいこ』の作者紹介:

石井桃子
1907年埼玉県生まれ。1951年に『ノンちゃん雲に乗る』で文部大臣賞受賞。1953年児童文学に貢献したことにより菊池寛賞受賞。童話に『三月ひなのつき』『山のトムさん』、絵本に『くいしんぼうのはなこさん』『ありこのおつかい』(以上福音館書店)、翻訳に『クマのプーさん』『たのしい川べ』(以上岩波書店)など多数。2008年逝去。


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