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【絵本レビュー】 『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』

作者/絵:柏原佳世子
出版社:えほんの杜
発行日:2018年7月

『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』のあらすじ:

王様がお出掛けしたある日、3人の家来たちは王様の部屋でやりたい放題、散らかし放題。キレイで豪華で広い王様の部屋で遊ぶのって楽しい~!
ところが王様がお城に戻ってくるのが見えちゃったから、さぁ大変!

『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』を読んだ感想:

「鬼の居ぬ間に」のありありなシチュエーションと、100秒前の焦り具合が面白く、数を数えながらおもわず笑ってしまいました。

前にも書きましたが、私は一人っ子だったので小学生の時から家で一人で過ごすことがよくありました。母は仕事で夜までいないし、父も基本は家で仕事でしたが、用事で1、2時間家を空けることは日々ありました。

父が出かける時、大抵私は算数や英語のドリルを渡されました。父が外出すると、私は大急ぎでそのドリルを終わらせます。それが終わると始まります、私のひとりパーティー。大したことではありません。テレビをつけることなんです。父が出かける時間にパターンはなく、いつ出かけるかの予想もつかなかったので同じ番組を見ることは不可能でしたが、テレビを見せてもらえなかった私としては、テレビを見るという行為自体がパーティーだったのです。

私は客室へ行きテレビをつけます。ぶうんと音がして笑い声と共に画像がつきます。昼のトークショーのようです。出ている人は全然わからないし、話していることも意味不明ですが、これが同級生が見ている世界なのかと思うと、明日は話についていかれるかもしれないと、私はまるで試験でもあるかのようにその番組の一語一句を暗記するかのように見ていました。父の出かける時間によっては昼ドラなどもやっていました。初めてドラマを見たときはすごく嬉しくて、次に同級生に会ったときそのドラマのことを話しましたが、さすがに昼ドラを見ている小学生はいないようで、「何を話してるんだ」という顔をしていましたね(笑)。その上、私はドラマを最初から見ているわけではないのでタイトルも知らない有様でした。

テレビを真剣に見ていると、「ギギギギ」と正面の門が開く音がします。私の100びょうまえが始まります。100秒どころではありません、おそらく40秒くらいしかありません。まずテレビを消します。下敷きを持ってきてテレビの後ろを仰ぎます。少しでも熱がさめるようにというはかない努力です。父が玄関の鍵を開けている音がします。20、21、22。。。私は急いで自分の部屋に行き本を掴んでベッドに寝っ転がります。父が靴を脱いでいる音が聞こえます。30、31、32。。。本を開いて、適当なページを読んでいるフリをします。37、38、39。。。40!

「おかえり」私は本から顔を上げて父に挨拶します。父はちらりと私を見ると部屋を通り抜けて客室へ向かいます。「まずい。。。」私がベッドの上で凍りついてじっとしていると、「なんでテレビなんか見てるんだ!!」と怒鳴り声。今回もバレてしまいました。テレビを完全に冷やすには、まあ少なくとも20分くらい前には消さなくてはいけませんね。

『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』の作者紹介:

柏原佳世子
岐阜県出身。愛知県立芸術大学卒業。製品デザイナーとしてメーカー勤務後、三重県四日市にある「メリーゴーランド絵本塾」の塾生として絵本の創作を学ぶ。『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』がデビュー作。


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これがデビュー作なんですね。次の作品が楽しみです。

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