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【絵本レビュー】 『ぼくのきかんしゃ』

作者/絵:マイケル・グレイニエツ
訳:いとうひろし
出版社:講談社
発行日:1998年2月

『ぼくのきかんしゃ』のあらすじ:

ぼくのきかんしゃにのれば、いつだってすてきな旅がはじまる。ほら、やってきた……!!さあ、しゅっぱつだ!
家族みんなが風邪で寝こんでしまって、「ぼく」はとても退屈。1人で玩具の機関車で遊んでいると、いつの間にか機関士さんになっていて、夢の旅に出発します。

『ぼくのきかんしゃ』を読んだ感想:

電車では遊ばなかったけれど、子供の時一人で留守番をすることが多かった私は、しょっちゅうひとり旅に出ていました。そんな時、押し入れは洞窟になり、ベッドは船となり、庭はジャングルと化しました。

私はお気に入りのぬいぐるみを全員船に乗せると大海に乗り出します。絨毯のない板敷きの部分は海です。私たちは時々船から釣りをして魚を釣ったり、船から飛び込んで泳いだりしました。船は大きな客船だったり、小舟だったりとその時の旅によって違いました。

小舟で漂流して、行き着いた先が洞窟ということもありました。生き残った我々は洞窟に身を隠し、火を焚いて暖をとりました。昼間外に出て食べ物(レゴ)を探し、みんなで分け合いました。夜になると唯一残った毛布をみんなでシェアして眠ります。

大船でやって来たときは、押し入れは無人島の鍾乳洞になりました。ランプを持ってみんなで探索します。夜になったら船に帰って寝るものと、テントを張って寝るものに分かれました。私は大抵テントで寝る派。暗い鍾乳洞の中に、岩から滴り落ちる水の音が静かに響きます。

庭にいるとき、私はジャングルで原住民と一緒に暮らす旅人だったり、人と関わりたくなくて一人で森に住む人だったり、木こりの父を持つ子供たちの一人だったりしました。森は食べ物が豊富で春には小さな赤い実(桜んぼ)や白いフルーツ(木蓮の花)、ピンクの実(沈丁花の花)が採れ、そのまま食べたり、スープにしたりしました。夏は豊富な草の野菜でスープを作り、秋にはオレンジの木の実(柿)が食べられました。冬はなかなか大変ですが、それでもちょっとした緑の葉野菜や木の枝の皮などをよく煮て食べました。簡素な食事だけれど、みんなで分け合って食べるのはとても幸せな気持ちになりました。

私の父や母はこれらの冒険には気がついていなかったと思います。話したこともなかったのですが、話していたらこの絵本の家族のように元気を分けてあげられたでしょうか。車でレストランごっこをしている息子を見ながら、そんなことをふと思ったりするのでした。


『ぼくのきかんしゃ』の作者紹介:

マイケル・グレイニエツ(Michael Grejniec)
1926年、東京生まれ。坪田譲治に師事。 1951年『貝になった子供』を出版、第1回児童文学者協会新人賞を受賞。以後、『ちいさいモモちゃん』(野間児童文芸賞)、『龍の子太郎』(国際アンデルセン賞優良賞)など、多数の著作がある。松谷みよ子民話研究室主宰。


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