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【絵本レビュー】 『ぼくはうちゅうじん』

作者:中川ひろたか
絵:はたこうしろう
出版社:アリス館
発行日:2014年10月

『ぼくはうちゅうじん』のあらすじ:

キャンプに来ていたぼくは、夜明け前に、お父さん、お母さんといっしょに星を見ながら、色々な話をする。
ちきゅうも、ほしなの? うちゅうに、ほしは いくつあるの?
地球から宇宙へ、夢を広げる子どもたちへ。

『ぼくはうちゅうじん』を読んだ感想:

星空を見るのが大好きです。小学校の遠足で初めてプラネタリウムに連れて行ってもらった時の、胸が広がって宇宙と一体化するような感覚は一生忘れません。都会育ちの私が見ていた星空は限られた本の一部だと知ったのは、大学の部活の合宿で神津島へ行った時でした。黒いコートについた埃みたいに空一面に広がる星の数々を目の前にして、あれが全部星だとは信じられませんでした。ずっと見ていると、その一つ一つが私の方へ近づいてくるような錯覚にかられました。夜空を丸ごとぺりぺりと剥がして毛布みたいに身体に巻けるような、そんな感じがしました。

星を見るのは大好きだけど、覚えているのは相変わらず北斗七星とオリオン座くらいなものです。ある時当時付き合っていた彼の友人の田舎の家に行った時、その人が星に詳しくて星座の説明をしてくれたのですが、全く好みでもないのに危うくその人に惹かれそうになってしまいました。星の力は偉大です。

UFOとか宇宙人の番組をよく見る方ではないのは、母に連れて行ってもらって映画館で見た『ET』が原因ではないかと勝手に思っています。当時の私は小学校に上がるか上がらないかくらい。母は映画館で見たくて私を連れて行ったのですが、あれが私の映画館初体験だったかもしれません。ジュースとポップコーンを買って赤い椅子に座る。それだけでワクワクしたものでした。部屋みたいに大きなスクリーンとどこから来るのかわからない大きな音にびっくりしました。私は母と出かけられたことが嬉しくて、『ET』がどんな映画なのかは全く知りません。今考えると、あれはそもそも小さな子供向けだったのかという疑問もありますが、標準より背が高かった私を母はうまく利用したのでしょう。

さて、部屋が暗くなりいよいよ映画が始まりました。飛び交う強い光と暗い森から聞こえて来る高い叫び声(ETの声だったのでしょうか)に私はすっかり怯えてしまいました。怖くてパニックになりかけた私は母の腕を掴み、
「イヤだ、これ見たくない!」
と半泣きで叫びました。映画はまだ始まったばかりで、母は全くもって外へ出る気はありませんでした。でも私は外へ出たくてピーピー泣き声をあげました。すると母がいきなり何か白いものをちぎって私の耳に詰めたのです。全ての音が急に遠ざかりました。スクリーンは動いているのに効果音も話し声も全部モゴモゴと水の中で聞いているようです。私は泣くのをやめて、ストンと自分の席に戻りました。怖そうになったら下を向いてひたすらポップコーンを食べ、また目を上げて大丈夫そうだったら見てみるを最後まで続けました。

母が私に詰めたのは、噛んでいたチューインガムでした。母が見たくて来ていたから私と一緒に出たくもなく、かといって泣かせ続けるのも周囲の迷惑という状況で思いついたとっさの(名)案だったのでした。その時の経験がかなり強く印象に残り、宇宙人ものの番組は大人になるまで好んでは見ませんでした。でも私が思う宇宙人像はETではなく、私たちみたいなのではないかなって思います。絵本も言っていますが、私たちだって宇宙人なのですから。他の宇宙人たちが私たちのことを見つけたら、あんまりにも似ていてびっくりするかもしれませんね。

『ぼくはうちゅうじん』の作者紹介:

中川ひろたか
1954年埼玉県大宮市生まれ。日本ではじめての男性保育士として、5年間千早子どもの家保育園に保父として勤務。1987年、みんなのバンド「トラや帽子店」を結成。リーダーとして活躍。「みんなともだち」「世界中のこどもたちが」などは、たくさんの子どもたちに歌われている。1995年「さつまのおいも」(童心社刊)で絵本デビュー。「たなばたプールびらき」他ピーマン村の絵本シリーズ(童心社刊)、「わりとけっこう」(絵本館刊)などの作品がある。絵本「ないた」で日本絵本賞受賞。絵本作家、詩人の他にも、ラジオDJなど、多方面で活躍中。


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