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【絵本レビュー】 『14ひきのあさごはん』

作者/絵:いわむらかずお
出版社:童心社
発行日:1983年7月

『14ひきのあさごはん』のあらすじ:


森の朝。野いちごつみにでかけよう。どんぐりパンにスープも作って、みんなで食べるおいしい朝ごはん。淡い透明水彩で緻密に描かれた美しい自然、14ひきのねずみたち家族みんなでかこむ食卓、新しい一日をむかえる喜びと、家族のあたたかさがあふれています。

『14ひきのあさごはん』を読んだ感想:

一人っ子の私は、子供の時から大家族というものに憧れていました。家にいつも誰かがいて構ってもらえる、というのはとても楽しいのではないかと想像したのです。このネズミたちのように十人兄弟というのはどうかと思うけれど、そういえばまだ日本にいた時大家族をインタビューする番組を好んで見ていましたっけ。家の中はまるで夏合宿のようで、どこを向いても誰かがいるというのがとても面白く感じられました。一人一人が自分の部屋やスペースで何かをしている私のうちとは全く違ったからです。

朝ごはんも夕ご飯も、私は大抵一人で食べました。私が朝ごはんを食べている時父はお弁当を作ってくれていたので、私は父の背中を見て食べることとなり、夕ご飯はスイミングから帰ってきてからだったので週五回は夜九時過ぎで、父は夕方録画しておいた「大草原の小さな家」をつけ夕食を置くと、さっさと台所に引っ込んでしまうのが常でした。そういえば、インガルス一家も大家族でしたね。どの大家族も食事時は賑やかで、私はいつも彼らと一緒に食事をしているつもりで食べました。

正月とお盆に訪れる祖父母の家は三世帯で、特にその時期は伯母の家族もくるので食卓は大にぎわいでした。伯父や伯母は酔っ払って声も大きくなり、全く飲めない伯父の一人とうちの父は、乾杯用に飲んだ一口ですでに真っ赤な顔をしてただニコニコしているだけです。従兄弟たちはテーブルの周りを好きなものだけをつまんで歩いています。まあいってみればカオスなのですが、私にとってはとても楽しみなひと時でした。

日本を初めて離れて、私は六ヶ月間家族の家にホームステイしました。男の子が三人いるその家族の食卓にはしょっちゅうゲストが来て、誰もこない日は、私たちだけですでに六人なのになんだか寂しい気がしました。食事は大抵パスタやご飯と野菜炒めなどの簡単なものでしたが、みんなでワイワイ言いながら食べるとサンドイッチですら味わいが増します。その家でカレーを作った時は、あまりにたくさん作ったので、まるで給食のおばちゃんになったような気がしました。でも、大鍋に作ったカレーがすっかりなくなったのを見た時は、なんともいえない満足感がありました。それまでに食べたどんなカレーより美味しく感じられたのは、言うまでもありませんよね。

ネズミ一家の大きな丸テーブルと、それをぐるりと巡るように置かれた椅子の数にびっくりしていた息子ですが、私はそれを見ながら「お客さんの絶えない家」を築き上げたいな、と思ったのでした。 



『14ひきのあさごはん』の作者紹介:


いわむらかずお
1939年東京生まれ。東京芸術大学工芸科卒。主な作品に『14ひきのあさごはん』(絵本にっぽん賞)など「14ひきのシリーズ」、エリック・カールとの合作絵本『どこへいくの?To See My Friend!』(童心社/アメリカ、ペアレンツチョイス賞)、『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』(偕成社/サンケイ児童出版文化賞)、『かんがえるカエルくん』(福音館書店/講談社出版文化賞絵本賞)、「トガリ山のぼうけん」シリーズ、「ゆうひの丘のなかま」シリーズ(理論社)などがある。98年栃木県馬頭町(現・那珂川町)に「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館、絵本・自然・こどもをテーマに活動を続けている。栃木県益子町在住。



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