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【絵本レビュー】 『すいかのたね』

作者/絵:さとうわきこ
出版社:福音館書店
発行日:1987年9月

『すいかのたね』のあらすじ:


ばばばあちゃんが、すいかのたねを庭にまきました。それを見たねこが掘り出してしまいますが、ただの種だったので「つまらない」と庭にうめもどしてしまいます。いぬ、うさぎ、きつね、ばばばあちゃんがみんなが同じことをしたので、とうとうすいかのたねは「いいかげんにしろ」と怒り出します。そんなたねを「大きくおなり」と、ばばばあちゃんが叱りつけたものだから、さあ大変。

『すいかのたね』を読んだ感想:

私は子供の時たくさん果物を食べました。もしかしたら、食べさせられたと言ったほうがいいかもしれません。食後にデザートとして出てくるというより、もう一品と言えるくらいの量を出されるのですが、食べる食べないは選択できず「全部食べなくてはならない」のでした。メロンは丸々一個、いちごはトレー全部、柿も二つか三つ、伊予柑は二つなどすでに食事をしていっぱいのお腹では味わうという気にもなれず、ただ詰め込むという毎日でした。そう、うちではフルーツは毎日、朝食と夕食の後に出されました。特に夕食後が大量だった気がします。朝は学校に行くのであまり時間がなかったからでしょうね。

買い物は毎日父がしていましたから、果物も彼が買ってきていたのでしょうが、一体どんだけの量を買っていたのか今になってみると謎です。家族全員がたくさんの果物を食べていたかというとそうでもなく、父はせいぜいリンゴを一日一個、母に至っては気が向いた時に食べるという風でした。実は私、果物の値段を知らなかったのです。10年ほど前父が倒れ母が24時間体制の看護をするようになり、私は帰省するたびに母の代わりに買い出しをするようになりました。一緒に来ている息子は大の果物好きなので毎日好きなだけ食べさせてあげようと思ったら、びっくりするくらい高いではないですか。リンゴ1個が100円を超えています。ドイツでは1kgで300円ほどなので、おやつに一人リンゴひとつは普通なのですが、予定外の値段にリンゴも一度に半分としたのですが、息子からもっと持ってこい命令が下されました。1個700円もするメロンを一人でパクパク半分も食べた日には、1個200円に慣れてしまったママは涙が出そうなのでした。そう考えると、毎日すごい量の果物を私のために買って来ていた父に感謝です。

父は食べたいというものならお菓子以外はなんでも買ってくれました。ある日「スイカの輪切りが食べたい」と言ったのです。輪切りにするには丸ごと、少なくとも半切りのスイカを買わなくてはなりませんよね。ええ、買って来ましたとも。翌日の夕飯の後、父がさらに入れて運んで来たのは、見事な輪切りのスイカでした。しかもかなりの大きさです。丸ごとのスイカを買って来て、腹の一番太いところを輪切りにしてくれたのでした。私はもう嬉しくてたまりませんでした。あんまり嬉しくて、すでに夕ご飯でお腹がいっぱいなのも忘れてしまったくらいです。私は大きなスプーンを握ると、えいっとばかりに真ん中に突き刺し、シャクシャク食べ始めたのでした。

なんで輪切りにこだわったか、ですか? 父が見せてくれた映画かアニメの中の登場人物(動物だったかも)がそうやって食べて、最後に輪になった皮の向こうから覗いたりそれで遊んだりしていたのを真似したくなったからです。とってもくだらない単純な理由だったんです。しかも食べたのは夕飯後だったので皮では遊べなくて、せいぜいできたのは川の向こうから父を見ることくらいでしたが、それでも私は大満足でした。

今横でぐーすかぴーすか寝ている息子はスイカが大好きで、夏になると毎日八百屋の前で「丸いの買って〜」と言います。もしかしたら彼も輪切りのスイカが食べたいのかな。こちらのスイカは長くて大きくて、うちの冷蔵庫には入らないので買ったことはないのですが、今年は輪切りスイカのために買ってみようかなと考えて、今からワクワクしているのでした。

『すいかのたね』の作者紹介:

さとうわきこ
1937年、東京生まれ。1968 年「母の友」(福音館書店)に童話が掲載されて以来、45 年以上の長きにわたって創作を続けている現役の絵本作家である。児童出版美術家連盟会員。1978年、絵本『とりかえっこ』で第一回絵本日本賞を受賞。主な作品には絵本に『おつかい』、『ねぇ、おきて!』『ちょっといれて』、『せんたくかあちゃん』童話集に『くまのくまた』などがある。

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