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【絵本レビュー】 『ふしぎなキャンディーやさん』

作者/絵:みやにしたつや
出版社:金の星社
発行日:2007年9月


『ふしぎなキャンディーやさん』のあらすじ:

タヌキのおじさんが売っているふしぎなキャンディーをなめると、すごいことが起こります。
キャンディーを買ったブタくんは、いたずらを思いつきますが…。


『ふしぎなキャンディーやさん』を読んだ感想:

お久しぶりです。元気にしていますか。レビューを書く時間が取りづらいこの頃ですが、私は日々絵本を読んで元気にしています。最近絵本を使ってのグループコーチングを英語で始めました。ネイティブの人が来ていて「変な発音だなあ」なんてイライラされたらどうしようなどとパニックになった夜もありましたが、なんとか初日をクリアし、無駄な思い込みって本当に多いなあと実感している週末です。

さて、キャンディー屋さんといえば、私の家ではチョコレートやキャンディは禁止されていました。父が週に一回ほどナッツ入りのチョコをふた粒ほどくれたのですが、それを食べる前にチーズを食べることになっていて、それが辛かったことを覚えています。小さな頃の私は乳製品が大嫌いで、牛乳を飲めば戻してしまうし、プロセスチーズも匂いがダメで飲み込めず、涙目になって苦しんだものでした。父としてはカルシウムを摂らせる手段だったのでしょうけどね。大人になってヨーグルトを朝ご飯に食べるようになり、食べて十分もしないうちにトイレに駆け込んでしまうことに気づいてから、今はあまり乳製品を取らないようにしています。

そんなチーズ地獄を抜け出ると、ふた粒のチョコがもらえたわけですが、中学校に入るくらいまで誕生日のケーキを除いてそれが唯一のキャンディ類でした。ところが、中学三年くらいの時家の近所の商店街に駄菓子屋を見つけたのです。電車通学の私は毎月少しお小遣いをもらっていたので、自分で好きなだけキャンディが買えるということに大興奮しました。店には、大きなビー玉みたいな綺麗な色の飴玉が透明の大きなプラスティックジャーに入って並んでいます。どれを買おうかジャーをひとつずつ丁寧に見ていきます。今だったら全色数個ずつ!、なんて簡単に買えてしまうけど、当時の私には百円玉一個一個が貴重なものだったのです。

週に何度か駄菓子屋に寄って飴玉を五、六個買うのが習慣になりました。小さな袋に入れて、学校では靴箱に隠しておきました。荷物検査のためです。そして帰り道に数個舐めるのが至福の時間でした。半透明の飴の周りに砂糖がまぶしてあってまるで宝石のようなもの、すごくすっぱいもの、口に入れた途端シュワシュワ泡が出てくるもの。十数年砂糖とはほぼ無縁の生活を送っていた私にとって、それは罪悪感を伴う幸福でした。そういう意味で、あの飴は私にとって魔法の飴だったと言えます。

マジックは他の方法でも効いていました。ある時ズボンがキツくなっていることに気づきました。もともと丸い顔もなんだかぱちぱちしています。私はお風呂の前に体重計に乗ってみました。なんとまあ初の六十キロ越えではありませんか。週に六日は泳いでいたのになんということでしょう。思い当たるのは毎日のように隠れて食べていた飴です。私は残っていた飴を捨てました。いつも飴が入っていた袋はペシャンコとなり、それと同時に私の至福の時も取り上げられたような気がしましたが、このままでは洋服も入らなくなってしまいます。その日を最後に私は飴を買わなくなってしまいました。

最近では駄菓子屋さんもあまり見ることはないのでしょうね。もしあのプラスティックジャーいっぱいの飴を見たら、また買ってみたいなと思います。あの時みたいに幸せな気分になれるでしょうか。


『ふしぎなキャンディーやさん』の作者紹介:

みやにしたつや
1956年静岡県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。「きょうはなんてうんがいいんだろう」(鈴木出版刊)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。「パパはウルトラセブン」(学研刊)などでけんぶち絵本の里大賞を受賞。「おとうさんはウルトラマン」(学研刊)などの作品がある。


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