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【絵本レビュー】 『おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ』

作者:ジャンヌ・ロッシュ・マゾン
絵:堀内誠一
訳:山口智子
出版社:福音館書店
発行日:1973年10月

『おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ』のあらすじ:

おそうじぎらいがもとで家を追い出されたリスはオオカミに食べられそうになったときにも「おそうじだけはおぼえたくありません! 」といいます。


『おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ』を読んだ感想:

主夫として家のことは全てしていた父ですが、彼が家の掃除をしているのをみたことはありません。掃除機すらかけませんでした。なので週に一、二回あった休みの日に、母が家中を掃除していました。

父は自分では掃除しないくせに、私には掃除をするよう言ってきました。特によくさせられたのが、廊下の雑巾がけです。雑巾の正しい絞り方なるレクチャーも受け、言われた通りに絞らないと怒られました。そうして玄関先からお風呂場に続く廊下と縁側を雑巾掛けさせられました。まあ冬に冷たい水拭きをさせられなかっただけ良かったですけどね。

その後週一回自分の部屋の掃除をすることは習慣になりましたが、何が嫌いって、棚にあるものをどかして埃を拭き取ること。私は当時小さなガラス細工を集めるのが好きで、棚の上にずらりと並べてあったのですが、それをまず一つずつおろして拭いて、また元の位置に戻さなければなりません。なんて面倒臭いんだろう!とっても面倒臭がりな私は数週間ん後にガラス細工を全部紙に包んでしまってしまいました。そのついでに飾ってあったスマーフのフィギュアもしまいました。部屋は殺風景になったけれど、掃除は楽チンになりました。

今の旦那と一緒に住むようになって、掃除が倍増したことに気づきました。脱いだ服は、まるでヘンゼルとグレーテルが巻いたパンくずのように家中に点在しています。彼の椅子の背もたれにはタオルやら服やらが引っかかっているのですが、オンラインミーティングがあると、それらは全て私の椅子に放り投げられます。なんでやねん!と思いながら私は(悪意を込めて)、彼の椅子の後ろに積み上げられているオンラインショップの箱の上に放り投げ返します。またとても毛深いので、家を歩くだけで服で擦れて毛が落ちるらしく、そこらじゅう毛だらけなんです。特にお風呂場は朝床を拭いても夜には毛と埃が絡まってふわふわの団子になっているのです。愕然としました。父に拭き掃除を教わっておいて良かったと思った瞬間です。

そして息子が生まれると、さらに掃除は倍増。一人で住んでいた時の四倍にはなったと思います。畳んだ洗濯物にダイブされ、レゴを拾い上げている間に車の入ったカゴが盛大にひっくり返されます。上に住むお母さんが言っていた言葉を思い出しました。
「子供達が寝るまで掃除しようなんて思わないほうがいいよ」

本当にその通りなのですが、旦那の脱ぎ散らかしたものと食べくずに加え息子のエンドレスなおもちゃの列と食べこぼしで足の踏み場もないほどなのです。

旦那の身体を剃り上げたらどうだろうとか、息子のおもちゃを全部無くしたらどうだろうなどと、私は現実逃避をしてみますがあまり助けになりません。ゲルランゲみたいにもうちょっと知恵が効いたら、私が何もしなくてもことは運ぶのでしょうか。そんなことを想像しながら私は洗濯物を畳み始めるのでした。


『おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ』の作者紹介:


ジャンヌ・ロッシュ・マゾン(Jeanne Roche-Mazon)
1885年フランスのカーン出身。少女時代をパリで過ごす。幼い頃から伝承文学に親しんだ。文献学者と結婚後、夫の仕事を手伝ううちに民話や子どものための物語に興味をもち、ペローなどの研究の後、創作活動をはじめる。1953年没。


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