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【絵本レビュー】 『かいちゅうでんとう』

作者/絵:みやこしあきこ
出版社:福音館書店
発行日:2018年11月

『かいちゅうでんとう』のあらすじ:

夜。暗い部屋の中で懐中電灯のスイッチを、カチ。お兄ちゃん、いっしょに部屋を探検しよう。
普段は暗闇が怖い子だって、懐中電灯を手にすればたちまち探検家気分です。見慣れた部屋も懐中電灯の光でまるく切り取られると、いつもと違って見えて面白い!

『かいちゅうでんとう』を読んだ感想:

子供って懐中電灯が好きですね。うちの非常用の懐中電灯は息子の恰好のおもちゃとなり電池が切れていることが多いので、非常時には全く役に立たないかもしれません。

前にも書きましたが、私の両親はキャンプに全く興味がなかったので、私がキャンプを初体験したのは三十歳の時でした。二人のハウスメイトは自分のテントも寝袋も持っていていつでもキャンプに行く準備ができていましたが、私は何もありません。テントは二人用で、寝袋は貸してもらえることになりましたが、他のものはいくつか買い揃えなくてはなりませんでした。ハウメイト二人が声を揃えて重要と言ったのは、ヘッドランプでした。「トイレに行く時とても便利」というのが理由でしたが、大事な点を言ってはくれていなかったのです。

そのキャンプ場に着いたのは大晦日の夕方。暗くなる前に慌ててテントを立てて、軽い夕食を食べ、四人で火を囲んでおしゃべりを楽しんでいました。キャンプをしていた小山の上には電灯などなく、唯一トイレのある掘っ建て小屋を照らす電灯があるのみでした。そのトイレにはまだ明るいうちにも行っていましたが、トイレというよりはただの穴を壁で囲んであるだけでした。そこでキャンプしていたのは私たちとアボリジニの家族たちだけだったので、待つ必要もないのは良かったのですが、あまりにも静かで、別な意味の怖さがありました。

トイレに向かうためにヘッドランプを頭につけました。首を動かすたびに周りの木が照らされて、私は一体どこまで光が届くのだろうと、歩きながら首を上げたり下げたりして遊んでいました。トイレに入ってドアを閉めると真っ暗です。ヘッドランプが照らすところしか見えません。急に人の顔とかがあかりに浮かんできたらどうしよう。。。などと考えながら穴に踏み込まないようにと下を確認。。。したのがまずかった。ヘッドランプの光がトイレの穴の中を綺麗に照らし出しました。

土のように積み上がったう○ちの上をキラキラと光る白いものが蠢いています。「うっ。。。」気づくのに数秒かかりましたが、それが虫だと気づくと身体中の毛が逆立ちました。芋虫状のものばかりではなく、甲羅のついた飛べそうな輩たちがいるのもちゃんと確認できました。もし、私が用を足している間に飛んできたらどうしよう。そう思うと出るものも出ません。首の後ろもゾワゾワします。お化けの恐怖と虫の恐怖、どちらも比べ物にならないほど大嫌いで、世界でこんな最悪な場所はないと思いました。トイレって、リラックスする場所じゃなかったっけ?私は冷や汗すらかいていますけど?

急いで用を済まして、私は逃げるようにテントに帰りました。トイレは二度と使うまいと心に決め、そのあとは森で用を済ましました。教訓:汲み取り式トイレの穴は照らすべからず。懐中電灯って楽しいけれど、見たくないものも見えてしまうので要注意ですね。

『かいちゅうでんとう』の作者紹介:

みやこしあきこ
1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。大学在学中から絵本を描きはじめる。2007年より1年間ベルリンに滞在。2012年『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成社)で、第17回日本絵本賞大賞を受賞。『よるのかえりみち』(偕成社)で、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞。作品に『ピアノはっぴょうかい』『これ だれの?』『ぼくのたび』(ブロンズ新社)、『のはらのおへや 』(ポプラ社)、『かいちゅうでんとう 』(福音館書店)他多数。1児の母。東京都在住。


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