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【絵本レビュー】 『オニじゃないよおにぎりだよ』

作者/絵:シゲタサヤカ
出版社:えほんの杜
発行日:2012年1月

『オニじゃないよおにぎりだよ』のあらすじ:


おにぎり好きのオニたちが、人間の落としたおにぎりを拾って食べて大ショック!「ひどすぎる!こんなまずいおにぎりを食べてるなんて!」「俺達が本当のおにぎりのあじを教えてやる!」

『オニじゃないよおにぎりだよ』を読んだ感想:

私の大好きな、ナンセンス度たっぷりの絵本です。イラストとダジャレめいた題名に惚れて手にしましたが、大成功でした。

子供の頃の私はおにぎりが嫌いでした。今のようにコンビニで何十種類もおにぎりが買えるというわけではなかったので、私の知っているおにぎりは父の作ったものでしたから、正しく言えば父の作ったおにぎりが嫌いでした。

父の作るおにぎりは、ソフトボールみたいに大きくて、ゴルフボールみたいにコンパクトでした。人生の全ての怨念を込めたようなおにぎりは、外側だけ塩味が濃く、中に行くほどお米は潰れてチューインガムのようで、飲み込むのも一苦労でした。しかも決まって二つ入っていたので、父が「今日はおにぎり作ってやるからな」という日はとても憂鬱だったのです。

そんな時、学校のお弁当の時間に同級生が俵型のおにぎりを持ってきているのを発見しました。「それなあに」と聞くと「おにぎりだよ」というではありませんか。小さな手にすっぽりと収まり、二口ほどで食べられそうなそのおにぎりは、とてもエレガントで美味しそうに見えました。もちろん他のおかずだって、黄色やピンクが映える、食欲をそそるようなものでした。それに比べ私のお弁当は、でかいおにぎりがぎゅうぎゅうと詰められ、さらに上から蓋をされてただのペーストのようです。のりも握ってすぐに巻いてあるのですっかり湿って、その半分はお弁当箱の裏に張り付いてしまっています。かろうじて残ったスペースにはブリの照り焼きが押し込まれています。アルミホイルなんてテクニックは知りませんから、ぶっかけた醤油はお弁当箱の仕切りの下からおにぎり側に流れ込んで、おにぎりの4分の1はぶり味の醤油が染み込んでいます。しかもお弁当箱を開ける前からぶりの匂いがしていたのでだいたい想像はついていたのですが、やっぱり開けるのは憂鬱でした。

世界最悪とも言えた父のおにぎりでしたが、唯一好きだったのは焼きおにぎり。サイズは変わらなかったので、醤油は染み込まずいつも中心は真っ白いペースト状だったのですが、ちょっと焦げ目のついた外側は柔らかいお煎餅のようで、食べるのがとても楽しみでした。もちろん中心部(ほぼ半分以上でしたが。。。)は重すぎて食べられず、いつも父に怒られていましたけどね。醤油味のするパリパリの表面を剥がしながら食べるのは、なんとも楽しい瞬間でした。

今日はご飯が残っているから、焼きおにぎりを作ろうかなあ。


『オニじゃないよおにぎりだよ』の作者紹介:

シゲタサヤカ
1979年生まれ。 短大卒業後、印刷会社勤務を経て、パレットクラブスクールで絵本製作を学ぶ。 第28~30回講談社絵本新人賞で佳作を3年連続授賞する。 2009年、第30回佳作受賞作『まないたにりょうりをあげないこと』(講談社)で絵本作家デビュー。 絵本作品に『りょうりをしてはいけないなべ』『コックのぼうしはしっている』『カッパもやっぱりキュウリでしょ?』(共に講談社)、『キャベツがたべたいのです』(教育画劇)、『オニじゃないよ おにぎりだよ』(えほんの杜)、『いくらなんでもいくらくん』(イースト・プレス)、『わりばしワーリーもういいよ』(鈴木出版)他多数。 オフィシャルHP「アカモチ工場」:http://akamochi.net/


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