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【絵本レビュー】 『おかあさんだいすきだよ』

作者/絵:みやにしたつや
出版社:金の星社
発行日:2014年2月

『おかあさんだいすきだよ』のあらすじ:

ぼくね おかあさん だいすき。
おかあさんは「はやくおきなさい!またねぼうでしょ」っていうけれど・・・
やさしく「おはよう」っていいながら ぎゅうってだっこしてくれたら
ぼくね もっとおかあさんのこと だいすきだよ。


『おかあさんだいすきだよ』を読んだ感想:

最近うちの旦那のイライラ度が高い。

「お母さん大好きっていう話でしょ」
と言いたいところなのはわかっています。しばしお待ちください。

イライラ度が増した旦那は、中二病の女子並みに取り扱いが難しいのです。ちょっとでも間違ったことを言うと噛みつかれます。だから付かず離れずの距離を保ち、あまり関与しすぎずに、でもそれなりに心遣いをみせるという、面倒臭がりな私には大変な労力を費やす日々となっているのです。

私の方にも疲れが見えてきた頃、イライラ絶頂期を越した旦那が話し始めます。仕事で彼の下についている人たちが締め切りを守らないとか、向上意欲がないとかということが大抵の原因です。彼は良かれと思って、資格を取れるコースを勧めて上に予算を増やしてもらったり、個人のやる気アップを目指して責任を増やしたりなどしているのですが、その成果が見えずにがっかりしているというのが現状のようです。

「チームの人たちのことを大切に思ってるんだね」
私は気づいたことを言ってみました。

「へ?」
旦那は意外だったようです。

「だってどうでもよければそんなに怒ったりしないんじゃない?」
旦那は何か考えているような顔をしました。

私はスペインで外国人に日本語を教えていました。一番手っ取り早い収入源であったし、学生の頃国語が得意な科目であったからでした。いろんな生徒さんに会いました。宿題は一度だってやって来ないのに、三ヶ月もしたら三十分くらいの会話は普通にできるようになる人がいるかと思えば、七年も語学学校に通っているのに、週末に何をしたのか説明するのもたどたどしい人もいました。

廊下で他の先生に会うと、話題は大抵「覚えが悪くてイライラする」ということでした。私は相づちは打ったものの、実は全く気になっていなかったのです。宿題をして来なくても怒ったことはないし、過去十分間に同じ単語をもう八回も繰り返したのに覚えられなくてもイライラしませんでした。

それなのに、旦那に日本語を教えようとするとこめかみに筋が入りっぱなしです。「さっきも言ったじゃん」という声も冷たく、旦那から先生を解任されました。息子に教えるときはまだましですが、それでも時々「本気でこれの名前覚えてないの?」と責めるように言ってしまいます。

あれ? 私ってすごく落ち着いた先生じゃなかったっけ?
家族に教えるとなると、全く違うのです。それは「上達してもらいたい」と期待しているからです。旦那や息子に私のエネルギーを注ぎ込んでいるからなのです。だからやる気がなかったり、覚えられなかったりするとつい怒ってしまうのです。

息子に関しては、日本語だけではありません。時間にちゃんと間に合うようになって欲しいし、マナーに限らずきちんと食べて元気に育って欲しいと願っているのですが、その期待が先走ってしまって、ゆっくり成長している息子にイライラしてしまうのです。

今日だって公園から帰ろうとすると、もっと遊びたい息子は涙を流して抵抗します。私は午後中彼に合わせて動いていたのでいい加減疲れていて、あまり彼とやり合いたい気分ではありませんでした。それで、「もういいよ、残りたいなら残ればいいでしょ」と靴も水筒も公園に置いて、さっさと帰ろうとしました。息子はギャン泣きしながらも靴を取りに戻り、私はその間に公園を出て歩き始めたので、息子が道に出たとき私の姿は見えずさらに大泣き。やれやれ、と思いながら引き返すと「ママのことみえなかったからかなしかった〜」とのこと。

「遊ぶのは楽しいけどね、君はお腹の調子が悪くて幼稚園も休んだでしょ。
だから早めにうちに帰ってゆっくりしたほうがいいんだよ」
これも息子が大切だから。きっと好きの反対は嫌いじゃなくて、どうでもいいなんです。その人がどうなっても気にならない、いてもいなくても気にならない。それが好きの反対なんだと思います。だって、どうでもいい人には怒らないですよね。

「ママだいすき」って言うのは、ママが怒ってるから心配なんだよね。ママは君が大好きです。どんなことをしても大好きです。だから、これからもいっぱい怒ると思います。君のことが心配だから。ママはずっと君の近くにいてあげることができないから、ママがいなくても大丈夫なようになってもらいたいのです。だからきっとまた明日も怒ります。でもそれは、君が大好きだからなのです。


『おかあさんだいすきだよ』の作者紹介:


みやにしたつや
1956年静岡県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。「きょうはなんてうんがいいんだろう」(鈴木出版刊)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。「パパはウルトラセブン」(学研刊)などでけんぶち絵本の里大賞を受賞。「おとうさんはウルトラマン」(学研刊)などの作品がある。


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