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【絵本レビュー】 『ぶたのぶたじろうさんは、ワシにさらわれてしまいました。』

作者:内田麟太郎
:スズキコージ
出版社:クレヨンハウス
発行日:2008年1月

『ぶたのぶたじろうさん、ワシにさらわれてしまいました。』のあらすじ:

ぶたのぶたじろうさん、さばくのおうだんにチャレンジ! ところが、ワシにわしづかみにされて、だいピンチ!?
「なにしろ、ぼくは、まるごとぶたにくだもんね」
さあ、ぶたのぶたじろうさん、どうなる?

『ぶたのぶたじろうさん、ワシにさらわれてしまいました。』を読んだ感想:

シュールなお話が好きな人にはオススメの絵本です。

みなさんは大ピンチに遭遇したときどうしますか。固まってしまいますか。戦闘モードになって戦いますか。

ピンチの時ほど機転が大切だなと、ぶたじろうさんを見ていて感じました。身体がすくんでしまうと思考も固まってしまうので、状況に応じた対応をすることが難しいですね。自分に不利になるような結果となったりして自己嫌悪に陥ることもあります。

逆に戦いを選んだとしたら、もしかしたら勝つかもしれませんね。でも戦いですから、勝ったとしても痛い目に合うことは避けられません。そして勝ったとしても後味が悪かったり、居心地が悪くなったりするかもしれませんね。

逆にもしコテンパンにやられてしまったら?ボロボロになった上に自尊心も傷つきそうですね。いた場所から去らなくてはならないかもしれません。い続けることを選択したとしても、勝った相手からの無言(運が良ければ)のプレッシャーがかかり続けるかもしれません。

私にはどちらもあまりいい戦略のようには思えません。どうせだったらウィンウィンになるような状況を作りたいなと考えています。

最近五、六年ほどいた共有アトリエを出ました。五月に友人から新しい場所の提案があり、六月からすぐに入って欲しいと言われました。このコロナ禍で私は共有アトリエをほぼ使っておらず、同室の人が私の場所を勝手に使用しているのも薄々知っていました。もともとそういう傾向があったのですが、行くたびにそのことで話し合いをしなければならないのが憂鬱で、だんだん行かなくなってしまったのです。時々何かの用事で行くと机の上に土やら葉っぱが散らばっていて、エネルギーが急降下。何も言わない私が悪いのですが、使ってる人からすれば私がいないのだから「ちょっと」使うのはOKと思っていたのでしょう。

そんなこともあったので、私はすぐにこの新しい場所にGOを出しました。さて問題は前の共有アトリエです。通常三ヶ月の通知が必要です。もしくはアトリエの人に相談して引き継いでくれる人を探すのですが、あまりに急な変化で私はとりあえず急遽数ヶ月でも引き継いでくれる人を探しました。その人が借りてくれることになった時点でアトリエ全員にメールを書き、私は数ヶ月いなくなることを伝えたのです。

さて、どうやら私は火のないところに大火事を起こしてしまったようです。メンバーの一人(しかも私の場所を黙って使う人)から怒りのメールが届きました。彼女はこの変更は認められないと言います。はてさて困りました。私はすでに新しいアトリエにも古いアトリエを引き継いでくれる人にもOKしてしまったのです。後には引けません。

かといって六年近く一緒にやってきたアトリエのメンバーを喧嘩別れもしたくありません。何しろ新しいアトリエは古いアトリエの斜め向かい。しかも自宅の隣の通りにあるので、これからも道で会うことは避けられないからです。人から隠れて歩くなんてまっぴらです。

私はそのメールにすぐに返信をし、決断が急だったこと、相談する時間がなくて申し訳ないと思っていることを書きました。そして他のメンバーの都合のいい時に新しい人を呼んで正式に紹介するのはどうかと提案したのです。「これからもいい関係を続けたいので、喧嘩別れは希望していない」とも付け加えました。

この共有アトリエにはこの一、二年あまり満足していなかったのですが、それは言いませんでした。内部での仲間はずれもあまり好きではありません。でも道には敵より味方が多い方がいいですよね。自分の背中は自分で守る。メールに書いたことは嘘ではありません。ただ私の考え全部を言わなかったまでです。

結果は? アトリエメンバーは新しい人が気に入り、私は無事に新しい場所で新規スタートを切ることができました。そして、メンバーの一人が日本語を習いたいというので、今も週一回お客さんとしてアトリエを訪れています。以前より頻繁に訪れているのは皮肉ですけれどね。

よかったらあなたのウィンウィン体験談も教えてください。


『ぶたのぶたじろうさん、ワシにさらわれてしまいました。』の作者紹介:


あきやまただし
1941年福岡県大牟田市生まれ。個性的な文体で独自の世界を展開。『さかさまライオン』(童心社)で絵本にっぽん大賞、『うそつきのつき』(文渓堂)で小学館児童出版文化賞、『がたごと がたごと』(童心社)で日本絵本賞を受賞。絵本の他にも、読み物、詩集など作品多数。 他の主な作品に「おれたち、ともだち!」シリーズ(偕成社)、『かあさんのこころ』(佼成出版社)、『とってもいいこと』(クレヨンハウス)、『ぽんぽん』(鈴木出版)などがある。


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