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【絵本レビュー】 『くまさぶろう』

作者:もりひさし
絵:ユノセイイチ
出版社:こぐま社
発行日:1978年12月

『くまさぶろう』のあらすじ:


くまさぶろうは大泥棒。でも、ただの泥棒ではありません。子どもたちの泣きたい気持ちや悲しい心を盗むことが専門なのです。

『くまさぶろう』を読んだ感想:

子供たちの痛みや情けない気持ちを盗んでいく泥棒の話という、ちょっと思いがけない展開で終わる絵本です。気持ちを盗めるなんてすごい発想なのですが、盗んだあとくまさぶろう自身にこぶができたり、情けない気持ちになってしまたらあまり盗む意味がないように思いましたが、子供たちはとても喜んでいたので、子供達を助けるという意味ではよかったのではないでしょうか。

子供って身体的にも精神的にもよく痛い目に遭いますね。うちの4歳児は、落ち着きのない性格にもかかわらず臆病でもあるので、今のところ割と怪我が少なく過ごしているのですが、それでもちょっとどこかにぶつけたとか、自転車で転んだと言って泣くことはよくあります。「いたいの〜」と泣いているのに「あ〜、痛かったね〜」と言ってぎゅっとしてあげたりさすってあげたりするとさっさと戻っていくので、我が家では「サッカー選手と魔法のスプレー」と呼んでいます。

最近では精神面も発達してきているのか、特に遊んでいたお友達とお別れするときに「〇〇、かなしいの〜」と訴えてくるようになりました。そんな時も「もっと遊びたかったのに帰っちゃったから悲しいのか〜」と言うと、大抵は落ち着いてきます。

親としては子供が少しでも辛い目に遭わないよう過ごして欲しいのですが、痛みを逐一取り除いていくことは不可能だと思います。私は彼にずっと付き添ってあげられないので、痛みを乗り越えていく力を育ててあげられたらいいなと思っています。

でも痛い目に遭ったら「ぎゅーステーション」はいつでもオープンさせておくつもりです。くまさぶろうのように私が痛みを吸い取ることはできないけれど、その痛みを理解してあげることはできます。なんで痛いのか、どうして痛いのか彼の話を聞いてあげることが、私ができるせめてものサポートなのではないかと思います。


 

『くまさぶろう』の作者紹介:

もりひさし(森比左志)
1917年、神奈川県出身。教師生活のなかで児童文学にかかわり、絵本作家となる。 「こぐまちゃんえほんシリーズ」(こぐま社刊)などの絵本作品、「はらぺこあおむし」「パパ、お月さまとって!」(以上偕成社刊)などの翻訳作品がある。2018年逝去。

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