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【絵本レビュー】 『かにむかし』

再話:木下順二
絵:清水崑
出版社:岩波書店
発行日:1959年12月

『かにむかし』のあらすじ:

むかしむかし、かにが浜辺に出たところ、砂の上に柿の種がひとつぶ落ちていた。かには喜んでその種を家の庭にまき、毎日毎日せっせと水をかけ、こやしをやっては「はよう芽を出せ柿の種、出さんとはさみでほじり出すぞ」と唱えた。すると、ほじり出されてはたまらないと思った柿はやがて小さな芽を出した。かにが熱心に世話をして、柿の木は大きくなり、たくさんの実をつけたそう。それを見ていたのは山の上のさる。さるはさっそくやってきて、かにに話しかけた……。


『かにむかし』を読んだ感想:

お話自体はみんなも知っている『さるかに合戦』ですが、この『かにむかし』は、どこと特定できない方言と毛筆で書かれたイラストがとても特徴的です。

目には目をという考え方に百パーセント賛成というわけではないのですが、困った時に周りに助けてもらえるという環境は良いなと思います。海外で家族から遠く離れて住んでいると、コミュニティの重要性が身にしみます。助けてもらうのは弱いからだとは思いません。私たちは一人っきりじゃ生きていけない生き物で、助けてもらったら次は助けてあげれば良いだけなのです。「持ちつ持たれつ」。助けてもらって借りを作るのが悪いのでなく、助けてはもらうのに、他の人が困っている時に助けてあげないのがよくないのではないかと思います。

話は変わりますが、私が小学校から高校卒業くらいまで住んでいた家には柿の木がありました。庭のど真ん中にあって、秋になるとちょっと細長い形の柿の実がたくさんなりました。父は渋柿だからと言って手をつけませんでしたが、鳥たちには大人気でした。私たちが手をつける間も無く鳥たちに食べられてしまうか、熟れてポトポトと地面に落ちてしまうのでした。

熟れた柿は歩道にも落ち、うっかり踏んでしまうとつるりと滑ってしまいます。踏まれた柿で道はさらに滑りやすくなりちょっと危ないし、またグジュグジュの潰れた柿で道も汚れてしまいます。それを掃除するのは、もちろん私。父に「おい、綺麗にして来い」とちりとりを渡されて、私は塀の外で身を丸めて張り付いた柿を刮ぎ取ります。剥がれた柿はゴミ袋に入れます。

これが理由かどうかわかりませんが、私は柔らかい柿が好きではないです。父も母型の祖母ももうゼリーみたいになっているほど柔らかい柿が大好きで、皮をちょっと取ってすすりながら食べるのですが、どうもいけません。父がまとめて買ってくる柿も一日二日で柔らかくなってしまい、私がどうしても食べようとしないので、父はそれを凍らせてしまいました。学校から帰って来たらズルズル柿は見事に柿シャーベットになっていて、それはお気に入りでしたが、私はやっぱりシャクシャクの硬い柿が好きです。

そろそろ柿の季節です。こちらヨーロッパでもこの数年柿が売られるようになりました。パーシモンというところもありますが、多くのお店で「カキ」として売られています。ただこちらの人は皮ごと食べてしまうので、ちょっとびっくりしますけどね。

みなさんは、柔柿派ですか硬柿派ですか?


『かにむかし』の作者紹介:


木下順二
1914年、東京都文京区生まれ。東大英文卒。第2次大戦後《彦市ばなし》《三年寝太郎》などの民話劇,《風浪》などの史劇で認められた。また山本安英とともに劇団〈ぶどうの会〉を指導,民話劇《夕鶴》(1949年)は代表作として知られ,オペラ化された。『平家物語』を舞台にした「子午線の祀り」は新劇、歌舞伎、能、狂言などあらゆる分野の俳優が集まり創り上げた戦後演劇史上最大級の作品。2006年没。


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風の子
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