見出し画像

【絵本レビュー】 『あめふりうさぎ』

作者/絵:せなけいこ
出版社:新日本出版社
発行日:1981年11月

『あめふりうさぎ』のあらすじ:

大雨の日に生まれたうさぎ。この子が泣くとなぜだか雨が「ザーッ」とふりだします。ある日えんそくに行けなかったうさぎは、おともだちを思って、ひっしに泣くのをこらえていると、おともだちから素敵なおみやげが……。


『あめふりうさぎ』を読んだ感想:

私はとても泣き虫でした。大雨の日に生まれたという話は聞いていないので、母が言うように単に「泣き虫」だったのだと思います。小児科へ予防接種に行けば泣き、一秒迷子になれば泣き、幼稚園の先生に「あと一口食べなさい」と言われては泣き、転んでももちろん泣きました。おまけに大の怖がりだったので、高いところに登ってしまったりなどちょっとでも怖いと思うことがあれば泣きました。

私が覚えているいちばん古い記憶も怖くて泣いているところです。一緒にいたのが父だかは裸も覚えていないので、私はかなり小さかったのだと思います。部屋に一緒にいた父か母が「ここで待っててね」と出て行きました。私の背後には壁、前には大きな窓があり、窓からは優しい光が入って来ていました。窓の前には棚か机があり、窓はたった私の頭くらいの高さから始まっていたので、窓の外を見ることはできませんでした。

私は一人床に座って窓の明るさを見ていました。しばらくすると窓の明るさが変化を始め、気がつくと部屋は薄暗くなっていました。誰も帰って来ません。私はだんだん暗くなっていく部屋で、不安を感じ始めました。立ち上がって部屋の電気をつけようと壁に手を伸ばしますが、スイッチは私が背伸びしても届かないくらいの高さでした。またさっきの場所に座り込みましたが、もう部屋の中もよく見えないほど真っ暗でした。隣の部屋へのドアが開いていましたが、まるでトンネルのような暗さで、私はますます怖くなりました。唯一窓の外が濃い青色をしていて、窓がそこにあることがわかる程度でした。

私は窓を見つめていましたが、心細さは最高潮に達し泣き始めました。怖くて淋しくて仕方なかったのです。その時横のドアが開き両親のどちらかが戻って来ました。暗闇で泣きじゃくる私に駆け寄って「もう大丈夫」と言ってぎゅっと抱きしめてくれました。あれは父だったのではないかと私は思っていますが、聞いたことはありません。

こんな状況では泣くのは当たり前でしょうが、私はそれからも割と些細なことで泣きました。あまりにも簡単に泣くのである日母が言いました。
「そんなに泣いてばかりいたらさ、ママが死んだ時涙が枯れ果ててて、泣いてくれないんじゃない?」
それを聞いた私は、さらに泣きました。だって、母が死んでしまうなんて寂しくて仕方なかったからです。
「水をいっぱいのんどくよ。」
そう答えました。

いつからか涙を堪えるようになり、そんなにしょっちゅう泣かなくなりました。でも今は泣くのは恥ずかしいと思っているような節があります。「悲しかったら泣いたらいいのに」、そう自分に言い聞かせるのですがなんだかカッコ悪い気がするのです。自然なことなのに。

泣き虫から鉄の女へ。どこか中間あたりでいいですよね。


『あめふりうさぎ』の作者紹介:

せなけいこ
1932年東京生まれ。武井武雄氏に師事。1970年、「いやだいやだの絵本」でサンケイ児童文学賞受賞。児童出版美術家連盟会員。「あーん あんの絵本<全4冊>」(福音館書店)、「おおきくなりたい<全4冊>」(偕成社)、「ばけものつかい」(童心社)、「おばけのてんぷら」(ポプラ社)などの作品がある。ほかに紙芝居、装丁、さしえなど幅広い分野で活躍中。


せなけいこさんの他の作品


サポートしていただけるととても嬉しいです。いただいたサポートは、絵本を始めとする、海外に住む子供たちの日本語習得のための活動に利用させていただきます。