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【絵本レビュー】 『なにをたべたかわかる』

作者/絵:長新太
出版社:絵本館
発行日:2003年11月

『なにをたべたかわかる』のあらすじ:


ねこが大きな魚を釣ったんだけど、重くて大変なの。ねずみがびっくりして見ているよ。ねずみは魚にかんたんに食べられてしまった。うさぎも、いぬも、たぬきも、みんなやってきては食べられて…。

『なにをたべたかわかる』を読んだ感想:

先に一人で読んでおいてよかった、と心から思った絵本でした。長新太さんと言えばシュールで奇抜な内容であるだろうということは前もってわかっていたのですが、まさかここまでとは。前読みなしでいきなり読んでいたら、子供たち同様口をあんぐり開けて固まっていたことでしょう。

知らないということは強いなと思うことは多いのですが、他の動物も知らなかったけれど魚に食べられてしまいますよね。他の動物と猫の違いってなんだろうと、この午後ずっと考えていました。無垢と無心、かもしれません。無心ってなんにも考えないのではなくて、一つのことに集中して雑念を消すことなんだそうです。雑念のない精神は研ぎ澄まされていますよね。

私はマドリードに移住した翌日財布をすられました。現金はもちろん、日本の銀行カードもクレジットカードもなくなり、新しいカードを頼んで送ってもらうのに数週間かかりました。信号待ちをしていた時になんとなくショルダーバッグが引っ張られたような気がしましたが、まさかすられているとは考えなかったのです。忘れた財布が郵便で送られてくるような安全な国に生まれた私は、全くもって無垢でした。魚に食べられた動物たちと同じですね。それ以来私の身体の全てのセンサーは研ぎ澄まされました。ぼんやりと自分の考えに浸って歩くことは減り、音楽も聞かず、道に集中するようになりました。まだこの猫には程遠いですけどね。

『なにをたべたかわかる』の作者紹介:

長新太
1927年東京生まれ。蒲田工業高校卒業。「おしゃべりなたまごやき」(福音館書店刊)で文芸春秋漫画賞、国際アンデルセン賞国内賞、「はるですよふくろうおばさん」(講談社刊)で講談社出版文化賞受賞。「たぬきのじどうしゃ」(偕成社刊)「みみずのオッサン」(童心社刊)などの作品がある。

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