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【絵本レビュー】 『100かいだてのいえ』

作者/絵:いわいとしお
出版社:偕成社
発行日:2008年6月

『100かいだてのいえ』のあらすじ:


100階だての家の最上階にすむだれかから、遊びにきてね、と手紙をもらったトチくん。地図を見ながら歩いていくと、高い建物があらわれました。上のほうはかすんでよく見えません。いろいろな動物がすむ100階だての家の探検がはじまります!

『100かいだてのいえ』を読んだ感想:


息子が数を学べるようにと、母が買ってくれた絵本です。数字は最近になってやっと興味が出て読めるようになりましたが、色々な生き物が出てくるのと、その暮らしがなんとなくわかるのはとても楽しいようで、小さいころから一人でよく眺めていました。

その中のコウモリのお家を読んでいて、思い出したことがあります。

私は学生時代のほとんどをプールで過ごしました。中学の時は夏休みになると、午前中は宿題や決められた勉強をし、夕方になるとほぼ毎日父親に連れられて近くの外プールへ行きました。そこで一時間ほど泳ぎます。父も中に入って、プールサイドを歩きながら私が泳ぐのを見ていました。五十メートルプールだったので、父にとってもいい運動になったのではないでしょうか(笑)。父はストップウォッチも購入し、百メートルごとのタイムを計っていました。一周分の持ち時間が決まっていて、早く帰ってくれば休む時間が増える、というものでした。夏だし、夕方という時間帯もあり、プールは結構混んでいましたが、私はそのひとの間を縫うように泳ぎました。

陽も落ちて少し薄暗くなりかけてきた時、泳いでいる私の頭を何かが軽く叩きました。私は父が棒か何かで私を叩いたのかと思い止まりましたが、父は壁の方に歩いています。気のせいか、と思いまた泳ぎ続けました。止まってしまったので休み時間が少なく、次のラップにすぐ行かなくてはなりません。泳いでいると今度はクロールのあげた肘あたりに軽い当たりがありました。多分反対側を泳いでいる人の手が当たったんだろうと、今度は無視して泳ぎ続けました。

壁まで戻ってきて息を整えてながらプールを眺めていると、何やらいくつかの黒い影が水面近くを飛んでいます。虫?もっと大きいし、飛ぶのも早いです。近くにいた父に言いました。「なんか飛んでるよ」返ってきた答えはなんと、「ああ、コウモリだ」。

コウモリって、あの、ドラキュラに出てくる血を吸うやつ!私はさっきから身体に当たってきていた感触を思い出し、ゾッとしました。「血を吸うために降りてきてるんだ。水着で肌が露出しているし、吸いやすいもんね。」そう考えたら怖くなって、父にプールから上がりたいと言いましたが、まだ数ラップ残っていて却下されました。早く泳げばコウモリはゆっくり泳いでいる人に止まるかもしれない、と思った私は狂ったように泳ぎ始めました。息を吸うのも少なめで、急いで顔を水に戻します。うっかり目があったら嫌だと思ったのです。泳いでいるからすでに心拍数は上がっていましたが、コウモリの怖さでさらに心臓はばくばくしていました。子供だったとはいえ、心臓を酷使した夕方でした。

服を着替えプールを改めて見ると、確かに小さな鳥のようなものが水面まで降りてきてまた飛び立ちます。一瞬ツバメのようにも見えますが、身体に白い部分はなく、真っ黒です。「水を飲みにきてるんだ。血は吸わないよ」と父が説明してくれました。先ずは一安心。それを聞かずには、翌日プールに戻ることはできなかったでしょう。水を飲もうと降りてくるたびに振り回される腕にぶつかっていた小さなコウモリたちも彼らなりに苦労していたのかなと思うと、ちょっと笑ってしまいました。

『100かいだてのいえ』の作者紹介:


いわいとしお (岩井俊雄)
1962年生まれ。メディアアーティスト。子どものころに母親から「もうおもちゃは買いません」と言われ、代わりに工作の道具や材料を与えられたことからものづくりに目覚める。1985年、筑波大学芸術専門学群在学中に、第17回現代日本美術展大賞を最年少で受賞。その後、国内外の多くの美術展に、観客が参加できるインタラクティブな作品を発表し、注目を集める。テレビ番組『ウゴウゴルーガ』、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示『トトロぴょんぴょん』『上昇海流』や、ニンテンドーDSのアートソフト『エレクトロプランクトン』、ヤマハと共同開発した音と光を奏でる楽器『TENORI-ON』なども手がける。2007年、NHK教育の幼児番組『いないいないばぁっ!』でオープニングアニメーションを担当。著書に『いわいさんちへようこそ!』『いわいさんのどっちが?絵本』『いわいさんちのリベットくん』(以上、紀伊國屋書店)、『100かいだてのいえ』『ちか100かいだてのいえ』(以上、偕成社)、『光のえんぴつ、時間の粘土――図工とメディアをつなぐ特別授業』(美術出版社)、『アイデアはどこからやってくる?』(河出書房新社)などがある。


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