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【絵本レビュー】 『おうさまのこどもたち』

作者/絵:三浦太郎
出版社:偕成社
発行日:2019年10月

おうさまのこどもたち』のあらすじ:

王家に生まれた10人の子どもたち。成長してどんな王・女王になりたいか問われ、それぞれ、すし屋、サッカー選手、農家、保育士、アーティストなど、自分の好きな仕事で人々を幸せにしたいと考えます。さて、王さまのあとをついだのは……?


おうさまのこどもたち』を読んだ感想:

アイスクリーム屋さん、警察、消防士、ロケットを作る人、ハルク。。。

うちの五歳児のなりたいものは歳を重ねるごとに、また日によって変わっていきます。一体何になるのだろうかと私は楽しみにしているのですが、一方で色々となりたいものがある息子に、私はただただ感心してもいるのです。なにしろ五歳だった私は、自分が大人になるとは思っていなかったからです。

それでも親というのは勝手に子供達の将来を夢見たり懸念したりするものなのでしょう。父には夢がありました。私がジャズピアニストになることでした。だから父は三歳の私をピアノ教室に連れていきました。当時かかりつけだった小児科の先生の娘さんが先生でした。とても優しい先生だったのに私は「怖い」と言い、父は教室を替えました。そこでも「怖い」と言い、その後の先生は本当に怖くて、結局ピアノを辞めてしまいました。

父はがっかりしたけれど、小学校から急激に伸びた水泳に望みを託し、週五日車で送り迎えをしてくれました。父は水泳の強い中学を探し私は受験をしたのですが、入ってみると先輩後輩という関係に窮屈感を感じた私は、すぐに練習をサボるようになりました。ある日部活に行っていないことがバレ、部活もスイミングも辞めさせられてしまいました。その時の父の夢は私がオリンピックに出ることだったので、その失意は大変なものでした。

ジャズピアニストもダメ、オリンピック選手もダメとなり、私は大学受験を控えていました。そこで父が思いついたのは、防衛大学へ行って自衛隊員となることでした。私がどんなに戦争へ行く気はないと言っても、父は大学卒はエリート隊員だから事務仕事だけだと言い、話は平行線を辿る一方。ついには、
「お前はなにをやらせても中途半端だ」と過去の習い事を例に挙げて爆発。

結局私は高校からの推薦を受けて教育系の大学に入りました。とりあえず大学に入ったので父も満足したのもつかの間、さて今度は小学校の教員になるものだと勝手にレールを敷いたのです。ところが私はスクールカウンセラーになるかライターになりたいと考えていたので、またもや衝突。
「何一つまともにできない」
そう父は言いましたが、勝手に私の行く末を決められても困ります。何しろその夢は父の頭の中にあって、私と共有されたことは一度だってなかったのです。それなのに一方的に「落第者」のレッテルを貼られてしまった私は、一体どうすればいいのでしょうか。

大丈夫なんです。親の期待に応えられなかった私ですが、人生には落第していません、と思っています。私に夢を託していた父には申し訳ありませんが、私は知っている人もいない、時には言葉さえ通じない国で、自分の得意だったことを生かして生活しています。持ち家もないし、車も持っていませんが、イヤイヤばかりいう憎たらしいけど可愛い子供と、全くもってKYでなんでも知ってるマンだけど本当はいいやつな旦那と暮らしています。もしかしたら「あ、私と同じ」と思った人もいるかもしれません。

芸は身を助く。
これは本当だと思います。皆さんの好きなこと、得意なことはなんですか。それを使って他の人を幸せにする方法が見つかったら、きっとその好きなことを仕事にすることができるようになるかもしれません。


 


おうさまのこどもたち』の作者紹介:

三浦太郎
1968年愛知県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業後、イラストレーターとして活動。 ボローニャ国際絵本原画展で入選を重ね、スイス、イタリア、スペインなど海外でも絵本を出版。 絵本作品に、『くっついた』『ゴリラのおとうちゃん』(こぐま社)、『ちいさなおうさま』『おおきなおひめさま』(偕成社)、『バスがきました』(童心社)、『おしり』『よしよし』『りんごがコロコロコロリンコ』(講談社)など多数。

 
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