【絵本レビュー】 『わたしのワンピース』
作者/絵:にしまきかやこ
出版社:こぐま社
発行日:1969年12月
『わたしのワンピース』のあらすじ:
うさぎさんがワンピースを作りました。それを着てお花畑を散歩すると、ワンピースが花模様に・・・。次々変わるワンピースの模様。ファンタジー絵本です。
『わたしのワンピース』を読んだ感想:
私はスカートが大嫌いでした。スカートだけでなく、ピンク色のものやフリルのついたもの、ありとあらゆるいわゆる「女の子らしい」ものが嫌いでした。りかちゃんもバービーも一度もねだったことはありませんでした。一時は腰まで届きそうな長い髪をしていたものの、いつも男の子のような服を着ていて、男の子に間違われるたびにちょっと困ったように「女の子なんですよ」と答える母親に対して、私はちょっと嬉しかったものです。
小学校から制服だったのでスカートを履いていたのですが、スカスカと風が入ってくる感触が嫌いで、高校を卒業するまで居心地悪くしており、高校の時はスカートの下に体育のジャージをよく穿いていました。小学校の時も大抵休み時間は男子とサッカーや野球をしていたので、スカートは実に動きづらかったです。なので、私生活でもスカートを穿くことはありませんでした。まあ、そのおかげでうちの息子に私の子供の時の服を着せられるんですけどね。
大学に入って付き合った人は女らしい可愛いものが好きで、ワンピースやスカート、とっても華奢な感じのアクセサリーをよく買ってくれました。私はなんとか部族が作ったシルバーのアクセサリーやネイティブアメリカンのラピスラズリや羽をモチーフとしたようなものが断然好みだったのですが、そういうものはいつも却下され、綺麗な石のついた金のピアスや指輪がだんだん集まっていきました。母は「貢くんだね〜」なんて笑っていましたが、私はそんな言葉だけでなく、趣味でもないものに囲まれていくことに対する拒否感がどんどん募っていっていたんだと思います。その彼が卒業し実家の会社の手伝いをすると聞いた時、寂しいなと思いましたが、ある意味ホッとしたのを覚えています。「やっと私に戻れる」そんな気がどこかでしていました。彼はそのあとも時々東京へ来てくれて、私も数回向こうへ行来ましたが、月が経つにつれ私の思いは薄れて行きました。その間私はもらった全てのアクセサリーを箱に詰め、また毎日ズボンを穿く生活に戻りました。
ある日彼から「東京の会合に出るから、どっかで会おう」と連絡がありました。私の応えは「ああ、ごめん。もうその日予定入れっちゃってるんだ」でした。予定はもちろんなし。「俺、わざわざ東京まで行くんだよ?」と言う彼の悲しそうな声も、その時の私には響きませんでした。そして、これを最後に彼との連絡も途絶えました。
それから10年ほどした時くらいから彼のことをまた思い出すようになって、ただただ申し訳ない、と思うのみです。ちゃんと説明もせずあんな形で終わらせて悪かったなと思い、彼のことをオンラインで探してみましたが見つからず。仕事がうまく行っていて、幸せに暮らしていることを願います。そして私といえば、「アンチ可愛いもの反抗期」がやっと終わり、この数年スカートやワンピースが好きになりました。多分妊娠時にその楽さに気がついたからかもしれません。でもスカートを穿くと息子がすごく嬉しそうなんです。「回って回って!」と叫んで、スカートがパラシュートみたいに開くのを見るのが大好き。いつも行くカフェでも「見て見て!ママの服かわいいでしょ!」とオーナーに自慢げに言っていました。ワンピースもまんざらではないかな。
『わたしのワンピース』の作者紹介:
にしまきかやこ(西巻茅子)
1939年、東京に生まれる。東京芸術大学工芸科卒業。学生時代からリトグラフ、エッチングを手がけ、日本版画家協会展新人賞、同奨励賞受賞。絵本の読者である幼い子どもたちの絵を見る目、絵を描く力の確かさに敬意を払い、尊敬を込めて絵本を描き続けている。代表作『わたしのワンピース』は、親子二代にわたるファンも多く、男女を問わず子どもたちに愛されている。『ちいさなきいろいかさ』(もりひさし文/金の星社)で第18回産経児童出版文化賞受賞。『えのすきなねこさん』(童心社)で、第18回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他作品多数。
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