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【絵本レビュー】 『あるげつようびのあさ』

作者/絵:ユリ・シュルヴィッツ
訳:谷川俊太郎
出版社:徳間書店
発行日:1994年5月

『あるげつようびのあさ』のあらすじ:

あるげつようびのあさ おうさまと、じょおうさまと、おうじさまが、ぼくをたずねてきた。でもぼくはるすだった…


『あるげつようびのあさ』を読んだ感想:

想像力って制限がありませんよね。想像の世界ではなんだって可能です。お城のみんなが訪ねて来てくれることだって。

一人っ子だった上に地元の学校に行かなかった私は、よく想像の世界に入り浸っていました。当時よく読んでいた本の影響がとても大きかったです。大好きだった物語の一つは『大草原の小さな家』シリーズで、特に『プラム・クリークの土手で』がお気に入りでした。インガルス一家が土手を掘って家を作るのですが、私は半畳の押入れを穴の家に見立てて一人でよく遊びました。水を汲みにそばの川(縁側)へ行ったり、街(台所)まで食べ物を調達に行ったりもしました。

もう一つのお気に入りは佐藤さとるさんの『コロボックル』シリーズです。私は本当にコロボックルがいるような気がして、小人たちが動いているのを見失わないように、家の廊下や部屋の隅をさっと見て回っていました。近くの公園に行っても、植木の裏側へばかり行っていました。そこには小さな小川が流れていて、なんだかコロボックルたちが住みやすい場所のように思えたのです。植木をくぐる時は小さな声で「きたよ〜」と言いました。小さな人たちが怖がらないようにです。そのあとはコロボックルたちを踏んでしまわないように、そっと歩きました。あんまり動き回って彼らの物を壊してしまうといけないので、しばらくじっと座っていました。そうしていると、植木の葉っぱの陰からコロボックルたちがのぞいているような気がしました。葉っぱを見ているスキに、別なコロボックルたちが私の脇を流れる小川に水を汲みにきているのも知っていました。だからわざとそっちを見ないようにするのです。水を汲みにきたコロボックルは、私の方をチラチラ見ながら恐る恐る川に歩み寄っているはずですから。

しばらくコロボックルの世界で過ごした私は、そっと植木の下をくぐりまた公園に戻ります。さっきまであんなに遠くに聞こえていた子供たちの声が急に大きくなって、私は本当に他の世界にいたんだなと確信したものでした。他の子供たちに見つかるといけないので、出るときも十分注意しました。幸い誰も気づいた様子はありません。よかった。

ええもちろん、私は今でもコロボックルがその辺を駆け回っていると信じています。まだ息子には教えていません。彼はまだコウモリになって公園まで素早く飛んで行ったり、目の力で敵に催眠術をかけたりする方が楽しいみたいですからね。

『あるげつようびのあさ』の作者紹介:


ユリ・シュルヴィッツ(Uri Shulevitz )
1935年ポーランド ワルシャワ生まれ。1959年アメリカに渡り、2年間ブルックリンの絵画学校で学ぶ。「空とぶ船と世界一のばか」(岩波書店刊)でコルデコット賞受賞。他に「あめのひ」(福音館書店刊)などの作品がある。東洋の文芸・美術にも造詣が深く、「よあけ」のモチーフは、唐の詩人宗元の詩「漁翁」によっている。


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