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【絵本レビュー】 『ほんとうのことをいってもいいの?』

作者:パトリシア・C・マキサック
絵:
ジゼル・ポター
訳:ふくもとゆきこ
出版社:BL出版
発行日:2002年4月

『ほんとうのことをいってもいいの?』のあらすじ:

リビーはお母さんにうそをついて友だちと遊びに行こうとしました。はじめてお母さんについたうそ。おなかが苦しくて、涙があふれて…。その日から、リビーはほんとうのことだけを言おうと誓います。ところが、正直になろうとすればするほど、友だちを傷つけてしまうことになり、リビーは混乱します。単なる正直ではなく、まず相手の気持ちを思いやること。大切なメッセージが伝わる一冊です。


『ほんとうのことをいってもいいの?』を読んだ感想:

「嘘をついちゃいけません」
誰もが子供の時に言われたことなのではないでしょうか。でも正直にものを言うというのもなかなか難しいものなのです。

私の父の口癖の一つは「嘘も方便」でした。約束したことをしなかった。口答えをした。色々な理由で、子供の時の私は友達との遊ぶ約束をキャンセルしなくてはならないことがなん度もありました。もちろんキャンセルの電話をするのは私です。

「パパがダメって言ってるとかいうんじゃないぞ。お腹が痛いとか、風邪っぽいとかいうんだ」

子供ながらに父の嘘が嫌いで、でも私が電話をしている間父が横で見ているので本当のことも言えず、嘘をついている罪悪感で気持ちも口もとても重く感じたのを覚えています。大抵の子は「そうなんだ」と言って電話を切りましたが、一度「ドタキャンなんてひどいよね」というようなことを言われとても傷つきました。私は行きたかったのに、と。

大人になった今でも白い嘘というのは嘘以上に好きでないのですが、思っていることをそのまま伝えるということがとても苦手なことに気がつきました。

先日旦那と久々に長々と話をしていた夜のこと。何がきっかけだったか忘れましたが、ふと「毎日時間に追われているのに、きちんとお昼を作らなきゃいけない気がしてとてもストレスを感じている」と漏らしたんです。旦那は両手をあげて「ストップ、ストップ」。そう言って会話を止めると、「ちょっと今のコメント消化させて」と言いました。

旦那:「お昼を作らないとどうなると思うの?」
私:「家にいるくせに何もしない寄生虫と思われると思う」
旦那:「へ? 寄生虫?」
私:「そう。大学出て就職活動に失敗して家にいた時父親にそう言われたから」

話してみて気づいたのは、私は自分の若い時の経験からパターンを作り上げて現場に当てはめ、旦那が同じことを言ってくるだろうと勝手な予測を立てていたのです。いつからそんなストレスを感じていたのか覚えていないけれど、かなり長い間であることは事実です。勝手に悩んで、勝手に孤立していたのです。

「忙しい日はお昼作れないけど、作れないことに罪悪感を感じるんだけど?」

こんなふうにさっくりと自分の気持ちを正直に伝えることができていたら、この数ヶ月私は無駄にストレスを感じずに済んだことでしょう。旦那に言わなかったこともそうですが、ストレスを感じている自分の声を畳んでない服のように布団の下に隠してしまったのも問題です。

そして旦那との会話で気づいたのは、そういう日々のちょっとした気持ちをシェアできていないと、大切な人も孤独感を感じてしまうということ。私の側で勝手にストーリーを作り上げ、そのストーリーの恐怖を覚えてある意味旦那と距離を置いていたのかもしれません。

「僕がそう言うかもしれないという君の想像に僕は全く含まれてないっていうのがとても悲しい」というのが旦那のフィードバックでした。納得。

正直に今いる状況を伝えるってとても難しいなと思いました。まずは毎日飛ぶように時間が過ぎていく中でも、十分でいいから立ち止まって私自身とのチェックインをして、今日の私の気持ちメーターを確認したいと思います。

みなさんは大切な人に、どうやって気持ちを正直に伝えますか。

『ほんとうのことをいってもいいの?』の作者紹介:

パトリシア・C・マキサック
1944年、テネシー州生まれ。作品にThe Dark Thirty―Southern Tales of the Supernatural(ニューベリー賞オナーブック)、Mirandy and Brother Wind(コールデコット賞オナーブック)など100冊をこえる児童書を執筆。2017年逝去。


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