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【絵本レビュー】 『ねんねだよ、ちびかいじゅう!』

作者/絵:マリオ・ラモ
訳:原光枝
出版社:平凡社
発行日:2003年1月

『ねんねだよ、ちびかいじゅう!』のあらすじ:

「ねんねだよ、ちび怪獣。逃げるな、待てえーっ。」これは世界中の家庭で毎夜繰り広げられる、ちび怪獣とパパの物語。ラストのどんでん返しが愉快な、フランスで人気の子どもとお父さんの会話絵本。

『ねんねだよ、ちびかいじゅう!』を読んだ感想:

「これはうちの息子の話ですか?」とうちの母が息子に読むのを聞きながら思わず思ってしまいました。
母が読みながら「これはあなたじゃないの〜」と冗談まぎれに言うたびに息子は「え〜ちがうよ〜」なんてヘラヘラしていましたが、私は横で首をブンブン縦に振っていました。このちびかいじゅうは間違いなくうちの息子です。洗面台の蛇口を歯ブラシで磨くところまでそっくり!

公園からの帰り道。
私:「うちに着いたら何するんだっけ?」
息子:「う〜ん、おふろ?」
私:「そうだね。さっき買ったおもちゃで遊ぶの?」
息子:「そう!ここにせっけんをいれるとあわがでるね〜」

家に到着すると仕事を終えた旦那がよろよろとやって来ました。気分転換にちょっと歩くんだそうです。そこへ息子は、「パパ、おふろにはいるよ」と言うではないですか。旦那は横目で私の顔を怪しげに見ていますが、それでも履きかけた靴を脱いで息子の後を追って風呂場へ行きます。そして閉まった風呂場から、「だめ!それはシャボン玉用のおもちゃじゃない!」と旦那の声。どうやら息子が買ったばかりのサキソフォンのおもちゃに水とせっけんを入れてシャボン玉を作ろうとしていたようです。確かに似ている。4歳児の想像力は褒めてあげたいが、それはサックスの本望ではない気がするのですが。。。

急にドアが開いて息子がぶすっとした顔をして出て来ました。「パパと散歩行く」そうですよね、息子がすんなり風呂に入るなんて甘い期待を持った私が未熟でした。

その後近所を一回りして帰って来た息子を、サックスを溜まった風呂に投げ込むという猟犬並みの扱いをして風呂に入れました。サックスは子供用雑誌についてくる4ユーロほどのプラスチック製なのでご心配なく。音が出たことに拍手したくなるくらいの出来なんです。

その後なんとか歯磨きを無事に終え、いざベッドへ。息子は枕元に置いてあったレゴの飛行機を見て、「あかいひこうきがない!」リビングへ走って行きます。(もともとそんなものはありません!)

帰って来たら布団をめくって待っている私を見て、「あああ、めくってちゃダメなんだよ!」(やれやれ。布団を元に戻します。)

気を取り直して布団に入り直しますが、部屋の入り口から走って来て布団の下に滑り込みをしなくてはなりません。「みててよ、みててよ!」(はいはい、見ております、私の第三の目で。)

彼が持って来た絵本を開こうとすると、「これじゃないよ!ホイティホイティ!」(お前がこっちがいいと言ったんじゃろうが!)「両方長い本だからどっちか一冊しか読まないよ。ホイティがいいの?」と理性ある大人のふりをして聞きます。「あはははん、あはん!」息子は変な鼻歌を歌いながら人差し指を迷える蚊のように動かして、「これ〜」と最初に決めた本を指差します。(やれやれ)

読み終わった途端、「もういっさつううううう! ホイティ!」これは予測済みだったのでこちらも体勢が整っています。「ホイティは長いからダメ。小さい本ならいいよ。持っておいで」そういうと息子はすぐさま起き上がり、ベッドの周りを可能な限り遠回りしてほんのある場所まで行くと、手が届かないふりをして取りません。おまけに私を見て肩まですくめます。私は大げさにあくびをして、「ママ寝ちゃいそうだから、急がないと本ないよ〜」というと、いそいそと本を持って来ました。

その本も終わりさあ寝ようとなると、「みず!」また布団から飛び起きてバタバタと台所へ走って行きます。そして戻ってくると今度は寝ている私の身体を左右に飛び跳ね始めます。(将来はSASUKEに出て、その賞金で私が君に踏み潰されないようにプロテクターを買ってくださいね)

私は深く息を吐いて、寝る気満々の様子を見せつけます。息子は「ふとんさむいね〜」と言いながら中に入って来ましたが突然、「ママはママのベッドにいってよ!」と足をバタバタさせます。今度はため息をついてベッドの移動。毛布をかけて目を閉じると、「ママのてちょうだい」と囁く声がします。ちいさいかいじゅうの手が毛布の下に入って来て私の手を握りました。その数分後、さっきまでの大ドラマがウソみたいに静かになり、息子は眠りにつきました。「なんで毎日寝る前にこんな大奮闘するんだろう」とは私がこの4年間飽きもせずに自分自身にしている質問です。私もそうだったんでしょうか。もう夜も11時を過ぎているのにここでこうやって書いているのは、私なりの寝ないぞっていう抵抗なんでしょうか。私はてっきり寝るのが大好きだと思っていたんですけどね。

『ねんねだよ、ちびかいじゅう!』の作者紹介:

マリオ・ラモ(Mario Ramos)
1958年、ベルギー、ブリュッセル生まれ。母はベルギー人、父はポルトガル人。ブリュッセルのラ・カンブル国立芸術学院でグラフィック・コミュニケーションを勉強。その頃、ソウル・スタインバーガーとトミー・ウンゲラーの作品に出会い、強い影響を受ける。卒業後はイラストレーターとして独立、ポスター、新聞の挿絵、広告図案などを手がける。1992年頃から子供の本のイラストを始める。’95年初めて文と絵の両方を手がけた絵本「さかさまさかさま」を発表。他の絵本に「おっかなびっくりしまうまくん」「ねんねだよ、ちびかいじゅう!」「いちばんつよいのはオレだ」「ロメオとジュリエット」「ことりのギリ」などがある。


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