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【絵本レビュー】 『あかちゃんの木』

作者/絵:ソフィー・ブラッコール
訳:やまぐちふみお
出版社:評論社
発行日:2016年12月

『あかちゃんの木』のあらすじ:

あかちゃんはどこで手に入るんだろう? 男の子の疑問にたくさんの人が答えてくれますが……。あかちゃん誕生にまつわる楽しい絵本。


『あかちゃんの木』を読んだ感想:

うちの4歳児はまだ聞いてきませんが、そのうち来るでしょうから準備しておくのはいいかもしれないですね。

先日息子の友達を連れて公園に行った時のこと、フォイアーケーファというアカハネ虫の一種を見つけました。この虫は木の幹に密集して張り付いていることが多く、私はゲゲっとなるのですが、子供たちは嬉しそうに摘んでいます。ものすごく大量にいるので繁殖力も強いようで、特にこの時期は子作りに励んでいるものも多いです。すると女の子が、「ベイビー作ってるよ!」と言うではないですか。ちなみにその子ももう一人のお友達も4歳です。もう一人の女の子は「はあ?」と意味不明な顔をし、うちの息子に至ってはまったく違うことに気を取られていました。最初の女の子は「ほらここにも!」とまた子作りに励んでいる虫を見つけつまみ上げたので、もう一匹は落ちてしまいました。すると、「あ〜あ、もう作ってないね」と残念そうです。残念だったのはきっと虫の方だったはず、と私は思いましたが、子供がどこから来たのか不思議に思う時期は近いのだなあと感じました。

私は一人っ子でいつも一人で遊んでいたのですが、もちろんそれはとても退屈で、小学校の時は早く休みが終わらないかなと思っていたくらいでした。私の夢は弟。一緒にキャッチボールやサッカーをしたり、父親に何かするように言われたら弟を送ってやらせたり。。。と、私の「弟ができたらしたいことリスト」は膨らんでいくばかりでした。

それは6年生のある日、学校で「身体の仕組み」なるものを教えてもらいました。なぜか男子はみんな校庭に行ってしまい、教室には保健の先生と私たち女子だけが残りました。「男子だって知っておくべきなんじゃないか?」という疑問はさておき、私はその私はその後家に帰って父に言ったんです、「弟が欲しい」。それに対して父は「赤ちゃんはな、コウノトリが運んでくるから待つしかないんだ」というではないですか。私はちょっと考えてから言いました。
「それは違うよ」
父は不思議そうに私の顔を見て聞きました。
「何が違うんだ?」
「今日学校で先生が言ってたもん。コウノトリが赤ちゃんを運んでくるんじゃないって」
「そんなこと、先生が言うのか?」
父の声の調子が変わったことに気づいて私は少し気まずくなりましたが、とりあえず頷きました。
「先生はなんて言ったんだ?」
なんだか責められているような感じがして、私は学校で教わったことを全て繰り返す気にはなれませんでした。
「言わなくても知ってるでしょ」
そう言うと父はちょっとキッとなって、
「何を知ってるって言うんだ」

「大人なら知っているはずなのに、なんで怒るんだろう」と私はちょっと意味がわからなくなって、でも父が怒っているようにも感じて、「もういい」と言ってその場を離れました。それ以降うちでは赤ちゃんがどこからくるという話は一度もされませんでした。

幸いうちの母親は全くもって正反対で、何でもかんでも話してくれる人だったので、なんとかバランスが取れたのですけどね。正しい情報を年齢相応に説明することって大切だなあと、この絵本を読んで改めて感じました。皆さんはどうやって対応していますか。

『あかちゃんの木』の作者紹介:

ソフィー・ブラッコール(Sophie Blackall)
1970年、オーストラリア生まれ、ニューヨーク在住。絵本作家。絵本、児童書のさし絵を数多く手がける。『プーさんと であった日 世界でいちばん ゆうめいなクマのほんとうにあったお話』、『おーい、こちら灯台』(ともに評論社)で、コールデコット賞を2度受賞。 そのほかの作品に『とびきりおいしいデザート』(文:エミリー・ジェンキンス、あすなろ書房)、『あかちゃんの木』(評論社)、『地球のことをおしえてあげる』(鈴木出版)などがある。


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