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【絵本レビュー】 『ソメコとオニ』

作者:斎藤隆介
絵:滝平二郎
出版社:岩崎書店
発行日:1987年7月

『ソメコとオニ』のあらすじ:

五歳の女の子・ソメコはあそびざかり。オニにさらわれてもこわがるどころか、あそびのさいそく。こまりはてたオニは…。

『ソメコとオニ』を読んだ感想:

読み終わった後、子供達の数人は「ソメコのお父さんたちは迎えに来ないと思う」と言いました。どうしてそう思うのか気にはなったのですが、私はなんだか心の内を見透かされたようで、一瞬ドキッとしました。私だったら、少なくとも数日は知らん顔して子供フリーの時間を過ごしたいなと密かに考えていたからです。だって子供はオニのところで安全だし、遊んでももらえているのですから。オニにはちょっと申し訳ないですけれどね。

最近息子は幼稚園から帰りたがりません。うちに帰っても仕事ばかりしている大人しかいないし、幼稚園なら部屋中めちゃくちゃにして遊んでいても怒られないし、何より友達がいるからです。数日間補助で来ていた先生に、
「帰りたがらないのですが、お家で何か問題がありますか。」
とさえ聞かれたくらい帰りたがりません。ただ、その先生が見ていなかったのは、朝は幼稚園に入りたがらず一苦労しているということなんです。息子を押し込んで逃げるように帰って来たことも何度もあるし、旦那に至ってはそれすら面倒で連れ帰って来てしまったこともあります。昨日は先生が玄関まで私を迎えに来て、
「帰りたがらないので、中に入って説得してくれませんか。」
と頼まれてしまいました。その先生は最近入って来た先生で、メガネの奥の目は本当に困っていました。
「金の俵を一ぴょう、馬につんでくれたらな。」
私は先生の後をついて歩きながら絵本のセリフを思い出して、一人でニヤニヤしてしまいました。

うちの四歳児は話すのが大好きです。食べている時以外は常に喋っています。食べている時も静かにしているという保証はありません。寝ている時も喋っています。本当にはっきり話すので、時々起きているのかと疑ってしまうほどです。最近は英語も話すようになって、もう私達が彼に悟られないように秘密の会話をするチャンスがなくなってしまいました。残っているのは中国語、韓国語そしてアラビア語くらいかもしれませんが、彼が私達より先に習得してしまう可能性はかなり高いでしょう。

オレは ソメコの相手を させられて、夜もねられないので アタマが おかしくなりそうだ。

オニがソメコのお父ウに送ったのは脅迫状ではなく、嘆願書でした。去年の誕生日に私は一週間家を出て一人旅したのですが、ホテルを予約した時は「年に二回くらい行ったほうがいい」なんて旦那は言っていました。帰って来た時も「全然楽チンだった」と大口を叩いていたのに、なぜか今年は「行って来い」と言ってくれませんでした。ロックダウン中息子と二十四時間過ごしあまりにも疲れて、「一ヶ月くらい一人になりたい」と言ったら、「う〜ん、一日二日ならいいよ」ととても弱気。こんな調子だと、次に一人旅をする時は旦那から嘆願書が送られてくるかもしれませんね。

でも時々旦那さんたちに子供を預けるのは、生活のスパイスになると思います。子供達とみっちりで息苦しくなっているお母さんたちにリフレッシュの時間となることはもちろん、普段いいとこ取りばかりしているお父さんたちにもちょっと大変さを味わってもらえたら、その後またスッキリと毎日が始められるような気がします。

そんなことを考えながら、私は密かに次の一人旅を夢見ています。海もいいなあ。温泉地でもいいなあ。皆さんはどこへ行きたいですか。


『ソメコとオニ』の作者紹介:

斎藤隆介
1917年東京都生まれ。明治大学文芸科卒業。短編童話集「ベロ出しチョンマ」により1968年、小学館文学賞を受賞。他に短編童話集「立ってみなさい」(新日本出版社)、長編「ゆき」(講談社)、「ちょうちん屋のままっ子」(理論社)、ルポとして「職人衆昔ばなし」(正・続)、「町の職人」(いずれも文芸春秋社)等がある。1985年没。


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