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サニタリーボックスがない会社を辞めた

昨年末、転職をした。
転職の理由はいろいろあるのだが、一番大きいきっかけはやはり、女子トイレにサニタリーボックスを置いてもらえなかったところにあった。

置いてくれと意見した当時の私の対応に不十分なところもたくさんあるだろう。それでも、日本の99%の女子トイレにあるだろうサニタリーボックスを置く・置かないであれほど揉めたことに、当時はものすごく思いつめたし、今となってはなんて茶番だったのか、という気持ちだ。1年近く経ったので、そろそろ一連の経緯をまとめたくなった。

なお、サニタリーボックスにまつわる些末な問題に終始しているように見えるだろうし、実際そうなのだが、結局根本は、100人に満たない小さな会社における、人間関係の不和だった。ちなみに、男女比は2:1程度で、極端に女性が少なかったわけではない。

入社時

説明会のときにもトイレには行っていたはずなのだが、サニタリーボックスがないことに気が付いたのは入社後のことだった。その代わり、トイレ個室の戸当たりに、幅10㎝程度のマチ付き紙袋が、紐とクリップで吊るされていた。ホテルの部屋のトイレなどで見られる、サニタリーバッグ形式なのだろうと察した私は、それをどこに捨てるのか疑問に思っていた。

トイレの中には、腰ほどの高さの棚の上に鏡の付いた小さなパウダースペースがあり、その鏡前に袋のセットされたプラスチック製のかごが置かれていた。大きさは10cm程度で、上からは容易に中が見える。ティッシュや油取り紙を捨てるのが限界で、汚物を入れるのには抵抗のある小型の卓上くず入れだ。

ある日、先輩社員とトイレで居合わせた際に、「サニタリーバッグはどこに捨てるのか」を聞いてみたところ、「私はパントリーのごみ箱に捨てちゃう」と言われた。
パントリーには蓋つきの大きなごみ箱が設置されており、座席のごみ箱の中身を各自でその中にあけ、パントリーのごみ箱がいっぱいになったら捨てる(一般廃棄物として回収に出す)システムだった。たしかに蓋つきだしどんどん新しいごみも入るし、女子トイレにある卓上ごみ箱よりは抵抗感がない。

しかし、女子トイレとパントリーにはやや距離があった。会社は小さなビルの2階と3階にあり、2階には社員の執務室・パントリー(社員用)・男性トイレが、3階には応接室・社長室・コーポレート室・パントリー(応接室の目の前なので、2階の社員は使わない)と女性トイレがある構造だった。女性トイレから普段使えるパントリーに行くには、トイレを出たあと階段を降り、執務室フロアのドアを開け、営業部の座席の脇を通る必要があった。ナプキンを持ってその経路を歩くのは抵抗がある。

会社で一番おしゃれな先輩とトイレで会ったとき、「(サニタリーボックスがなくて)自分で捨てなきゃいけないのめんどいよね~、まあ言えないけどね…」と言われたことがある。言えないのか。そうか、これは言ってはいけないことなんだ…と思いながら、この面倒なトイレに行き続けていた。自分用のサニタリーボックスを置こうか、とも何度も思ったが、勇気が出なくて置けなかった。

いっそ捨てない布ナプキンにするか、最長12時間入れっぱなしにできる月経カップにするか、トイレに流せるシンクロフィットにするか、本気で悩んでいた。

サニタリーバッグがなくなる

入社してからしばらく経った頃、急にコーポレート部門から「サニタリーバッグ撤去のお知らせ」が来た。趣旨としては以下のとおりだった。

社長より、女性トイレの個室の紙袋を撤去するように言われましたので片づけ、手洗いシンクの下に移動しています。
また、この袋は経費で買っているものです。お手元の使用済みの封筒などもご使用ください。

どういうことだ。サニタリーバッグを撤去した? 手元の封筒を使え? 宛名に自分の名前が書かれた封筒にナプキンを入れて捨てろというのか。いくらパントリーのごみ箱は漁られる可能性が低いとは言え、大きくふたを開けたときには中も見えるし、何より心理的にめちゃくちゃ嫌である。ちなみに当時社長は男性で、コーポレート部門は全員女性だった。

サニタリーバッグについては、たしかにトイレ内の手洗い台の下に移動されていた。生理中の流れとしては、
トイレに入る→手洗い台の下から袋を取り出す→個室に入り用を足す→手を洗って階段を降り、オフィスのドアを開けて営業部の脇を通りパントリーにごみを捨てる
である。いや面倒くさい! そのうち私は封筒をあらかじめポーチに入れておくなどの工夫をしていた。

しかしやがて、手洗い台の袋は透明のビニール袋に変わった。透けた袋にナプキンを捨てるのは、紙袋よりも何倍もキツイ。さらに、そこまでたくさん適したサイズの使用済み封筒が手に入る仕事でもなかった。私はポーチにA4の裏紙を入れて、それにくるんだごみをさらにビニールに入れる、などの苦肉の策を講じていた。
そしてほどなくして、ビニール袋も補充されなくなった。

個室内にサニタリーバッグがないことには大きな問題がある。それは言わずもがな、お客様が困るということだ。我々従業員は(袋がある頃は)手洗い台の下に袋があるのを知っていたが、お客様は知る由もない。インターン生や面接を受けに来る人も同様である。
(まあ、サニタリーバッグがあったとしても、「これをどこに捨てろと…?」という疑問は解消されない。お客様がパントリーに入ることもまずないだろう。でもないよりは100倍マシである。)

コロナ禍の在宅勤務

昨年からの新型コロナウイルスの猛威は、もちろん弊社にも影響した。初めは変わらず出勤していたが、緊急事態宣言が発令されて、週2出社、週1出社と在宅勤務が増えていった。

なんと、在宅勤務だと、いつでもトイレにごみを捨てられるのだ! そのごみを回収に出すのも自分だが、使用済みのナプキンを持ってオフィスをうろうろしなくていいのはものすごく快適だ。毎月1週間、会社でトイレに行くのが憂鬱だったが、これが在宅勤務により(ほぼ)解消されて私はハッピーだった。

そして、緊急事態宣言が明けるとフル出社に戻ったのだが、そこで改めて、職場のトイレ環境に強くストレスを感じていることに気づいた。
同時期、テレビで男性トイレのサニタリーボックスに関する話題を耳にした。トランスジェンダーの方など、男性でも生理が来る方がいる。多様性が進んだ世界においては、男性トイレにもサニタリーボックスがあるべきだ、と。

背景は違えど、男性トイレにサニタリーボックスを置くかどうか議論される時代に、なぜうちの会社の女性トイレにはサニタリーボックスがないのか。もちろん弊社男性トイレにもサニタリーボックスはないだろうから、ある意味平等なのかもしれないが、問題はそこではないのは明らかである。

以前から友人や母に、会社のトイレにサニタリーボックスがないことはネタとして話していた。ただ、改めて仲のいい友人に経緯と現状を話してみたところ、「個室にないけどトイレ内の共用部にはあるって話かと思っていた。それは置いてほしいと言ってみていいんじゃないか」と言われた。

備品を管理しているのはコーポレート部門と思われるが、もともと、私はコーポレート部門の方々となんとなく反りが合わなかった。また、サニタリーバッグを撤去しろと言ってくる社長とそれに抵抗できないコーポレートなので、直接社長を説き伏せるしかないのでは、という作戦になった。小さい会社なので、社長と話をする機会はいくらでもある。

アクション0:コーポレートのメンバーに相談

実は、上記の友人への具体的な相談の前に、比較的年次が若く話しやすいコーポレートメンバーに相談したことがある。「なんでサニタリーボックスないんですか?」と聞くと、「あぁ、たしかにないねぇ」たしかに!? 火を見るよりも明らかじゃないか。置いてもらえないのか食い下がると「社長がすっきりさせたがってるからねぇ」とのこと。じゃあすっきりさせたいからって、便器をイスにするのか。

自分で必要なときだけ設置するのはダメか?と聞くと、「そしたらみんな使っちゃうんじゃない?」と言われた。「それはつまり、みんなほしいということじゃないんですか?」と返すと、「うーん、そんなに毎回捨てに行くのが面倒なら、上に話してみてもいいかも」。社長がすっきりさせたがってるなら直接社長に言っていいか聞いたら、まずは総務部門に、と言われた。「タイミングがあったら私からも言っておくね」と言われたが、そのような様子は以降全くなかった。

なお、私は毎回トイレのたびにあのルートを通ってごみを捨てるくらいなら、毎日1回「掃除」としてごみ箱を片づけるほうがマシという考えだった。自宅のトイレの運用に近い。

アクション1:社長に進言

友人らに背中を押された数日後、社長と話をする機会があった。そこで思い切って「職場環境についてご相談があるのですが…」と切り出してみた。

神妙な面持ちで話し出してしまったため、社長もかなり身構えていたが、「女性トイレの個室にごみ箱がほしいのです」と言ったところ、「え、何それ、置きなよ。そんな何万円もするものでもないでしょ」とあっさり言われた。サニタリーバッグ撤去の件があったので、穢れ忌避過激派なのかと思っていたが、そのことを聞くと「あれはトイレの修理関係で女子トイレに入ったときに、戸当たりにひもと事務用クリップで袋がぶら下がってるのがあまりにもみっともないから『(置き方とか)なんとかして』と言っただけだよ。サニタリーバッグを撤去しろなんて言えるわけないじゃないか」と、ちゃんと話の分かる人だった。社長はその指示のあと、どのようにコーポレートで対処されたのかを知らないようだった。

そして「男の僕から指示をするのもなんか変な話だし、君から総務に言うのがいいだろう」と言われた。今思えば、ここで強く抵抗していれば事態は何か変わっていたのかもしれない。

コーポレートの総務担当はいわゆるお局様で、ちょっと気難しい方だった。私は彼女からあまり気に入られていなかったし、それはほかの社員も気づいていた。しかし社長は「何かあったら、僕が置いていいって言った、と話してかまわない。でもいきなりそこから切り出すのは、自分を差し置いてどうして直接社長に話したのか、と気分悪く思われるかもしれないからうまくやってね。これも、企画や交渉を通す勉強だと思って」と励まされた。

アクション2:総務に打診

社長に話した数日後、お局様とトイレで一緒になる機会があった。そこでしれっと「サニタリーボックスって置かないんですか?」と聞いてみた。真顔で「誰が片づけるの?」と言われた。お掃除業者の方は?ときくと、「お掃除の方には汚物処理はお断りされているので」と言われた。

なるほど、衛生面の都合でそういう対応をしている清掃業者もあるのかもしれない。それなら自分で使うときは自分で片づけますので、と言ったら「それは毎回捨てに行くのとほぼ変わらなくない?w」と鼻で笑われた。いや、それはあなたの価値観であって、トイレのたびに「私は生理中です」と公言するようなルートを通るのと、トイレ掃除として1日1回ごみを片づけるのでは私は雲泥の差なんですよ。

来客時の懸念も伝えたが、「女性のお客様なんてほとんど来ないじゃないwww」と言われた。新卒採用も担当しているあなたにそんなことを言われるとは。

当時、主な募集ポジションは技術系で、女性を採用することは結構難しかった(個人的には、仕事ができれば性別はどちらでもいいと思っている)。相当なレッドオーシャンで私を採用したと社長にも言われていたし、お局様によって私を含む女性技術社員は採用関係の広告塔にもされていた。わりと頑張って女性を採用したいように見えていたので、このホスピタリティを軽んじることが信じられなかった。

「フロアの女性社員の意見も聞いてみたら?そのようなことを言ってきたのはあなたが初めて。どういう運用がいいのかを考えるのも含めて、自分で音頭を取ってやってね。私はあなたのサーバントではないので
本当に言われた言葉である。

ちなみに、コーポレートは女性トイレと同じ階にある。トイレからパントリーのごみ箱まで距離も近いので、コーポの方はそこまで気苦労がないのかもしれない。ただ、主に別フロアに属する私にとっては、応接室などもあるコーポフロアにわざわざごみを捨てるためだけに踏み入れたくない、というのが素朴な感情だった。

アクション3:女性社員への調査

なんだかな、と思いながら、私は2階の女性社員たち(つまりコーポ系以外)に聞き取り調査を始めた。私の相談内容は下記のとおりである。

・サニタリーボックスがないことについて、通常業務をするにあたって不便なうえに、お客様にとってはなおさら不便かつびっくりするレベルなので、設置すべきではないか
・清掃業者での引き取りは不可。サニタリーボックスを使いたい人は、使った日の帰り(もしくは翌朝)に中身を片づけることにすればよいのでは?(使いたくない人は使わなければよい)。責任者は私でいいし、来客がある日は私が片づけるのでも構わない。

女性陣からの回答は主にこのようなものだった。

・賛成!運用もそれで問題なさそう
・どちらでもいいけど、必要な人がいるなら置いたらいいと思う
・自分のごみを他の社員に処理されるのは抵抗がある。ただ、来客のことはたしかに気がかりなので何か対処はしたほうがよさそう…
・過去、勝手に置いたことがあるが、コーポレートに撤去された

案外、大賛成の声はとても少なくて、私がおかしいのかと不安になった。たしかに私はこの頃、数か月にわたってずっとサニタリーボックスのノイローゼになっていたし、ちょっと過激だったかもしれない。ただ、ほかの人も大反対というわけでもなかった。置く分には全然いいんじゃない?という空気感だった。

とくに、最後の意見については、お局様の言う「こんなことを言い出したのはあなたが初めて」の驚きの声に対し、「前にもアピールがあったんじゃないか!」と声を荒げたくなった。

この時の社屋は築10年程度の小さなビルで、ボックスをおいた人は社歴13年くらいの人だったので、少なくとも今の社屋になってからずっとサニタリーボックスはなかったのだろうと推測している。

アクション4:総務に打診(2回目)

何人かの意見を聞いて、「みんな置きたかったら置いたら~?」って感じでしたよ、と伝えたところ、「それは何人中何人が賛成でしたか?」と詰められた。え、これってそんなに厳密に集めないといけない意見だったのか?「全員に聞いたわけではないので、何人中、とは答えられないです」と正直に言うと、「共有部のことなのだから、全員の意見を回収してください」と突き放された。

そこからまだ回答をもらっていなかった人の意見も集めて(おおむね同じだった)、改めて社内メールでお局様に状況を伝えたところ、急にそのメールの宛先に女性社員全員を入れられて返信が来た。

月末のお忙しいところ、恐れ入ります。この度(私)さんから、女子トイレにサニタリーボックスを置いてほしいとの申し出がありました。多数決を取ります。
1.サニタリーボックスを置く
2.サニタリーボックスは置かない(今まで通り自分で処理する)

急に音頭を取り出した。サーバントではないんじゃなかったのか? そもそもこの問題は多数決で決めることなのか? 月末のクソ忙しいときに私が問題を起こしたみたいに書いてくれるな。

2日後、結果は、
1(賛成):2割
1(消極的賛成):5割(絶対の主張はないがほしい人がいるなら置こうよ)
2(反対):3割(コーポレート部門全員+α)
となった。
反対意見の中には「散らかるので置かないほうがよい」というものがあり、散らからないためのごみ箱ではないのか?と苛立ちが抑えられなかったが、同じフロアの人はおおむね味方っぽいと感じた。

この結果を受けて、総務は以下のメールを送ってきた。

皆様ありがとうございました。投票の結果、サニタリーボックスは置かないことになりました。
月初のお忙しい中、ご協力いただき誠にありがとうございました。

消極的賛成は反対にカウントされた。私は「お騒がせして申し訳ありませんでした」と返信し、サニタリーボックスのないトイレで息を殺して泣いた。

転職しよう。会社の方針でサニタリーボックスをおかないのは会社の自由なのかもしれないし、私には「それなら辞めます」と言う自由がある。

退職の意向を伝える

サニタリーボックスが置かれないことが決定したあと、一気に転職活動に踏み切った。上司や社長には、内定が出る前に退職の意向を伝えた。一般には退職理由を細かく言わず、「キャリアアップのため」などとするのが美しいとされているようだが、私は事の顛末を詳細に話し、上述のメールのコピーも見せた。お局様と私の間に不和がありそうと感じていた上司には「起こるべくして起こった」と言われ、社長からは退職をとても残念がられたが、「このような小さなことで悩まなくていい環境はほかにいくらでもあると思った」と伝えると、それ以上は引き留めてこなかった。

社長は「君の肩を持つわけではないが、君の行動に何か間違いがあったとは思わない。でも(お局様を)懲戒免職にできるほどのことでもないんだ。コーポレートも悪い判断をしたとは言い切れない。サニタリーバッグがビニール袋になったときだって、何もないときに良かれと思って誰かが置いたのかもしれないよね」と言った。たしかにそうだ。私はサニタリーボックスを設置する鬼と化していたし、その視点は抜けていた。過去にサニタリーボックスを置いていたことによるトラブルがあったのかもしれないし、それを防ぐために置かない選択をしたのかもしれない。設置反対の意見に悪意が含まれているとは限らない。

しかし投票の呼びかけから収束までのやり方はさすがに度が過ぎていると、ほかの女性社員も感じていた。一連のメールのやり取りのあと、比較的味方になってくれていた社員に「あれは酷かったね……気にしなくていいからね」と慰められた。ようはお局様に「ちょっとみんな~、あの子がなんか変なこと言ってるんですけど~wwww」と言われた構造である。正直、もっと気に入られている社員が進言していたら、ここまでのことにはなっていなかったのではないか、とさえ思う。マネジメント責任を感じているのか、「こっちが悪いと思ってるんでしょ?」と社長に言われたとき、私は黙ってしまった。

退職直前

引継ぎも順調に進んでいた頃、帰りに社長に呼び止められた。女子トイレの中を視察したいからついてきてほしい、僕一人では入れないし、ほかの人にも頼めないから、と。それで女子トイレを案内した。サニタリーバッグを撤去されたとき、社長の真意がうまく伝わっていなかったと思われる証拠もいくつか話し、社長は頭を抱えていた。

そしてまた別の日、社長から呼び出された。「来客のことを考えても、早急にサニタリーボックスを設置しようと思っている。そもそも掃除業者の人も、依頼すれば片づけをやってくれると思う。ただ、僕がサニタリーボックスがない事実を自然に知ることはできない。そこで、君から聞いたということにしていいか?

何を言われているのかよくわからなかった。私から聞いたのは事実じゃないか。「はぁ、まあいいですけど」と答えると「よかった。ほかの女性社員は引き受けてくれなそうだからさ」と言われた。なんでわざわざ確認を取ってきたのか、ヘイトを擦り付けられているような嫌な気分だった。せめて「このような問題で君が辞めてしまうことはとても残念だし、非常に重く受け止めている。だから君から聞いたことを率直に伝えてもいいだろうか」くらい言ってくれてもよくないか。

話を聞くとどうやら、そのことでコーポからまた逆恨みを買い、最悪の場合ストーキングなどに繋がっても困るから確認を取った、とのことらしい。そこまでみんな暇じゃないと思うが。別のやり方に関する意見も求められたので「それなら、社長が点検で見回って気づいたことにしたらよくないですか?」と言うと、「まあそれもできなくもないけど、不自然だから」とのこと。いろいろと演出の都合があるらしい。

かくして私は、退職することを引き換えに、会社にサニタリーボックスをもたらしたのだ。

そして今

私はサニタリーボックスのある会社に転職した。もっとも、ほぼフルリモートに近く、最近はあまり使っていないが、会社のトイレは気に入っている。仕事もそれなりに順調だ。

前職のごく一部の人は、これがきっかけで辞めることを知っており、矢面に立たせてごめんと謝られた。いつか飲みに行こうと言われたままコロナが落ち着かず、疎遠になってしまって誰とも連絡を取っていない。だから今サニタリーボックスがあるのか、どのような人員体制なのかはわからない。

新入社員が入ったはずなので、少しでも快適に過ごしてくれていたら嬉しい。

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