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伝統と伝承は違う。 新しいことにチャレンジし続けよ!(第3話)

ただ彼は、「伝統と伝承を同じに思っている人が多いのではないか」と主張している。このことは自書の絵本"せめろ!でんとう!"にも重要な視点として描かれていた。

Q. 伝統って昔からあることを守り続けることだと思っていたけど違うの?
A. 伝統は新しいことに挑戦し続けることよ。

西村:「"伝統"というのはその時代に合わせて継承しつつも新しいものを取り入れ、時代に合わせて変わっていったり、積み重ねていったりするものだと考えています。つまり伝統とは新しいことに挑戦し続けること。それとは別に"伝承"というのは、そのまま変えず、継承・言い伝えていくもの。これらは別の言葉の意味として捉えなければいけない。」

昔の人は時代が変化するたびに新しいものを作り続けてきた。
環境が変わるたびに知恵を出し、環境に対応して変化し続けてきた。
ゆえに伝統には先人たちの技術や知恵がたくさん詰まっている。
伝統とは挑戦と進化の上で伝えられてきたものなんだと。…ということは、私たちがこれまで捉えていた伝統の意味とは伝承に近いものがあったということ?

たとえは違うかもしれないが、芸事の世界(歌舞伎・能楽・文楽・落語・講談…)にも伝統や伝承が存在する。その中でもよく耳にする歌舞伎や落語には、新作歌舞伎・古典落語など、頭に"新作〜"や”古典〜"をつけることで上手に伝承している伝統芸能もある。ただ亡くなった落語家の古今亭今輔師匠は言った。「古典落語も、できた時は新作だった。」と。その言葉が伝統についての本質を突いているようで面白い。
そういえば漫才は伝統芸と言うのだろうか?M-1グランプリ2020で優勝したマジカルラブリーの"漫才か漫才じゃないか論争"も過去にあった。彼らはM-1決勝で"喋らない漫才"を披露し優勝する。漫才という伝統芸を"ボケとツッコミのリズム芸" と捉えるなら、この審査結果には異を唱えるだろうし、"変化や破壊の積み重ねでできた進化するお笑い芸"と捉えるのなら、新しい漫才とみることもできる。さらにその伝統思考を複雑にして学校・会社・国に置き換えて考えてみても興味深い。従来の流れにこだわり過ぎてその進化を止めてないだろうか。方向性を見失ってないだろうか。違う分野の話だが、共通する何かが少し見えてきたような…。頭の中で甘木絞りから歌舞伎・漫才・学校・国までをぐちゃぐちゃに混ぜてトランスすると自分なりの伝統への答えが薄くみえてくる気もしてきた。

つづく


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