大阪マルビル 商人の験担ぎで丸く

1976年に完成したマルビルは地上30階建てで、大阪の高層ビルの先駆け的な存在だ。梅田近辺の地主一族に生まれた故・吉本晴彦氏が開発したもので、ホテルやテナントビルを経営する大阪マルビル(大阪市)は現在、晴彦氏の長男の晴之氏が社長を務めている。大阪マルビルによると、晴彦氏が円いビルを建てたのは「円満に通じ、銭に通じる」という思いからだという。硬貨を積み上げたような形状は、大阪商人らしい験担ぎによるものだ。

その後、円いビルが増えなかったのは、「様々なコストが高くつく」(日建設計の山梨氏)ためだ。土地の区画は四角が多く、円柱形のビルは通常の直方体のビルよりも使わない面積が増えてしまう。部屋や家具、住宅設備なども四角が基本なので、完成後もデッドスペースが増えてしまう。
外壁などの資材を曲線に対応したものにする必要があり、建設コストが膨らむ。山梨氏は「まるいビルの建設費は通常の1.5倍ほどだったのではないか」とみる。

もともと強風の影響を受けにくく、床面積に対する壁の面積が小さくてすむため空調エネルギーを節約できる。3Dプリンターの建築への利用が進めば、曲がった資材もつくりやすくなる。あちこちにマルビルが建つ未来がやってくるかもしれない。

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?