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(短編小説)青い惑星

ボクはとても長い間、宇宙をさまよっていました。
銀河系冒険ツアーというのに参加したのですが自由時間の時、ボクは はぐれてしまったのです。
今乗ってるこの宇宙船はボクが死ぬまで走り続けるだけの燃料が積んであるので宇宙空間に沈没することはありません。でも食料が残り少なくなってきました。どこか適当な惑星があればそこで食料を探したり休憩したりできるのですが、どこまで行っても黒い空間ばかり。遠くには光る星がいっぱい見えましたが、ボクの乗ってる宇宙船では とても行けそうな距離ではありません。

もう信じられないくらい退屈してしまいました。
ボクの食料は鉄です。どこか近くに鉄のある星はないのでしょうか。
そんなことを考えながら、ボクは残り少なくなった宇宙食の即席鉄をかじっていました。
すると、なんと光る星が近づいてきているではないですか。こんな近くに光る星があるなんてラッキーです。たぶん惑星を従えているでしょう。行ってみることにしよう。食料がある惑星があればいいんだけど。

惑星はありました。9個くらいあります。
大小様々は惑星があります。外側から順番に5個くらいの惑星を調査して行きましたが岩石だけとか、濃い大気があるだけで食料になる鉄なんてありません。だめです。
でも、あきらめるのは早い。もう少し探そう。

ボクは光る星から3番目にある青い色の惑星に行ってみることにしました。表面がほとんど水の星でした。ボクは陸を選んで観察しました。
するとどうでしょう。鉄です。ボクの大好きな鉄がいました。しかも、とても元気な鉄です。赤、青、黄、白。生きのいい鉄が行列を作って走っているではないですか。
ふるさとからこんな遠く離れた場所で生きた鉄に巡り会えるとは感激です。お腹が鳴りました。ちょっとよだれも出たかもしれません。
ぼくは急降下しました。
宇宙船から降りて、なりふりかまわず生のまま鉄を食べました。鉄は細長く続く滑らかな線の上を同じ方向に動いています。行列をつくって走っているので食べやすかったです。
即席鉄ばかり食べていたので生鉄のうまさは格別です。舌をだすと10匹、20匹がくっついてきて口の中でピチピチする。うわー、うまい。それに化石燃料の味もする。とってもジューシー。ぺろんぺろんと舌で巻き取って食べました。
食べてる間に気がついたのですが、この鉄には寄生虫がいるらしく、その寄生虫がこの味を引き立てているようです。寄生虫は必ず1匹はいる。2、3匹の時もある。たまにいるちょっと大きめの鉄には30匹くらい棲み着いてたりする。
ああ、うまい。ぺろんぺろん。
もう、千匹くらい食べたかな。
そうこうしているうちに鉄のやろう、ほとんど どっかに逃げていなくなってしまいました。
まあいいや、お腹もいっぱいになったことだし。
ぼくは仰向けに寝転がりました。
青い色の空でした。

あれ、空にも鉄が飛んでる。すごいなあ。天国みたいな惑星だ。極楽極楽。ボクはここでずっと過ごすことになるんだろう。ツアーで はぐれてしまったけど、こんな惑星なら棲んでもいいぞ。

いたた。
何するんだ空飛ぶ鉄のやろう。ボクに攻撃する気か。いっぱい集まって来やがった。よく見たら、それは鉄だけではなくアルミニウムやジュラルミンを多く含むの生き物でした。
ボクの近くまできてダダダダタッて目にも見えないような小さな粒をボクに打ちつけてくる。ちょっと痛い。
ぺろん。
あはは、食べてやった。うん、これもなかなかいける。珍味だ。ボクはアルミニウムはあまり好きじゃなかったけど。ここのは なかなか旨い。ジュラルミンも香ばしい。もう、最高。ちょっと熱い部分もあったけど、それはそれで味わい深い。
ボクの住んでた星にはこんな旨いものはなかったぞ。この青い惑星は美味の星か。
ボクは満足して眠ってしまいました。

目をさましたのは「シュワッチ!」という大きな声がしたからです。
目の前にはボクと同じくらいの大きさの体をした奴がいました。赤と銀色の服を着ている。ちょっとだけ見えたんだけどそいつの背中にはチャックがついていました。
突然そいつはボクを殴りました。ボクは舌でぺろんと反撃しましたが、今度はキックされました。
何も悪いことをしていないのに なぜなんだろう。
そいつは無表情な顔をしたままボクを蹴ったり、殴ったりします。しまいにゃ投げ飛ばされてしまいました。
ボクは、とことんいじめられました。ついに意識がもうろうとしてきました。
ボクはこの星で死んでしまうのだろうか。
いじめっ子の胸にはランプがついていて光りながらピコピコと音がし始めました。音がしだすと急にあせりだして、黄色い光線をボクに発射したのです。
うわー、死んじゃうよ。なんでボクはこんな目に会わなきゃいけないんだ。
ああ、もうダメ。
赤と銀色の服を着た いじめっ子は、青い空に飛んでいくのが見えました。

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