「日韓映写技師ミーティング in 福岡」の始まりと、移動映写機(2)
そして開催へ
韓国と日本の映写技師に集まってもらって、移動映写機を取り扱うトレーニングをする、映写ワークショップを行うことが当初の目的でした。そこから始めて、いろいろな方の助言と協力をいただきながら、イベントの概要が構成されてゆきます。フィルムに初めて触る人を対象にした内容を加えた2日間のワークショップ、韓国と日本の2か国の映写技師たちによる座談会、 2 本立て映画上映会の、3 つのメニューが出来上がりました。 2020 年 2 月に始まり、2023 年 10 月に「日韓映写技師ミーティング in 福岡」を開催するまでの時間の中では、新型ウィルスの感染拡大にともなって映画館が休館し、カフェと定食屋が営業時間を短縮し、映画が配信により公開されるなど、予想もしなかった世界の変化が起こりました。それは、目に見えるものとして存在しているようで実はそうでないような、実態が無くて、同時に恐ろしいくらいに身近な出来事でした。
次回を目指そう!
私たち映写技師は、フィルムという実際に存在する物体を扱います。厚みは 1/10 ミリていどですが、2 時間の長さに積み重なれば片手では持ち上がらない。劣化により、独特の臭いが発生することもあります。また、映写機とはフィルムを搬送する機械で、その搬送の過程でフィルムに光をあてて映像を投影し、同時に記録されたサウンドを再生する、複数の機能をひとつに統合した装置です。映写機をフィルムが通過する時には、金属にプラスティックがぶつかって爆ぜる音が発生します。定期的に新鮮な潤滑油を必要としますが、けっこう長い間放っておいても壊れるものではありません。性能や扱い易さの優劣から、映写技師の評価が分かれることもあります。世の中には、映写機を擬人化して見る方もいるようです。
今あらためて、映画とはこのようなリアルなものにより成り立っているのだ、という感覚を思い返しています。「日韓映写技師ミーティング in 福岡」は、映写技師としての五感を伝える場だったのかもしれません。それぞれの映写技師の感覚を言葉に変えて表現したとき、それはきっと、映画を再発見することに繋がるんじゃないかと思います。リアルなものを、色々な方角から観察すれば、本質に近づくことができます。もし映写技師の言葉を聞くチャンスがあったら、物静かな観察者の言葉として関心を持ってもらえると嬉しいです。